結婚式(けっこんしき)。それは女子にとって一生(いっしょう)に一度の晴れ舞台(ぶたい)である。
「えっ、何で?」春子(はるこ)は驚(おどろ)いたように言った。「だって、あたしに任(まか)せるって言ったよね?」
「そりゃ言ったけど、これは、どうかな? そこまでやる必要(ひつよう)――」
春子には、すでに式のイメージが出来上(できあ)がっている。今さら、彼に口出(くちだ)しされても。
「あたしはやりたいの。あなた、あたしのやりたいようにしていいって言ったじゃない」
「でも、こんなことまでやるのかよ。少しは、予算(よさん)のことを考えてくれよ」
「考えたわよ。式場(しきじょう)の人と何度(なんど)も打ち合わせして、これなら出来るって――」
「ちょっと待てよ。俺(おれ)は、こんなことやりたくないよ。上司(じょうし)だって呼(よ)んでるんだぞ」
「はぁ?!」春子は完全(かんぜん)に頭にきていた。「何よそれ。面倒(めんどう)くさいことは全部(ぜんぶ)あたしに押(お)しつけて。それで、やりたくない。そんなこと言うんだ」
「だから、もう少しシンプルに…、普通(ふつう)でいいじゃないか」
「あたし、止(や)める。もう、やってられないわよ」
春子は書きかけの招待状(しょうたいじょう)の束(たば)をまき散(ち)らした。「結婚はキャンセルよ!」
彼はまさかこんなことになるなんて思ってもいなかった。しかし、今さら後に引けず、
「そ、そうか。分かったよ。じゃあ、別れてやるよ。それでいいんだろ」
「結婚式をケチるなんて、あなたってその程度(ていど)の男なのよ。もう知らない!」
<つぶやき>思い出に残(のこ)る結婚式にするために、二人は真剣(しんけん)なんです。早く仲直(なかなお)りしてね。
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