みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0265「もうひとつの世界3」

2018-07-20 19:08:35 | ブログ短編

 犬(いぬ)や猫(ねこ)は、たまに見かけることはあった。でも、この辺りにクマのような大型の野生(やせい)動物がいるなんて、驚(おどろ)きだった。どこからやって来たのだろう。
 典子(のりこ)は、襲(おそ)われないために守(まも)りを固(かた)める必要(ひつよう)に迫(せま)られた。女一人の力でやれることは知れているが、それでも頑張(がんば)って家や畑の周りに柵(さく)をめぐらした。簡単(かんたん)に壊(こわ)されてしまうかもしれないが、それでも気休(きやす)めぐらいにはなるだろう。
 彼女の苦労(くろう)とは裏腹(うらはら)に、あれ以来(いらい)、生き物の気配(けはい)はなくなってしまった。どこか別の場所に移動(いどう)したのか、それとも近くにひそんでいるのか。気を緩(ゆる)めることはできない。
 典子は食料(しょくりょう)を調達(ちょうたつ)するために町へ出かけた。その途中(とちゅう)に、あの坂道(さかみち)がある。彼女は右カーブの手前で自転車(じてんしゃ)を止めた。ここから全てが始まったのだ。今まで、通るたびに元の世界へ戻(もど)れるのではないかと、はかない期待(きたい)を持っていた。だが、それがかなうことはなかった。今日もきっと…。彼女はため息をついて、自転車をこぎ出した。
 カーブに入ったとき、彼女は目を疑(うたが)った。ガードレールにぶつかるようにして車が止まっていたのだ。彼女は急いで駆(か)け寄り中を見た。人だ。男性がハンドルに頭をつけて、動く様子(ようす)はなかった。典子はそっとドアを開けて、男の身体(からだ)を揺(ゆ)すってみた。身体は温(あたた)かいので死んではいないようだ。彼女は、何だかほっとした。この人から、何かが分かるかもしれない。もしかしたら、元の世界に戻れるかも…。彼女は男に声をかけ続けた。
<つぶやき>希望(きぼう)の光が見えてきたのかも。この男はどこから来て、何者なのでしょう。
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