みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0953「割り込む」

2020-09-13 17:57:55 | ブログ短編

 彼と待(ま)ち合わせをしている彼女。その彼女に話しかけてくる男がいた。彼女にとっては初めて会う人。だが、男は彼女のことをよく知っているようだ。男は言った。
「いま付き合ってる人と別(わか)れて下さい。そうじゃないと、良くないことがおきるんです」
 急にそんなことを言われても、とうてい彼女には受け入れられなかった。男は続けた。
「実(じつ)は、僕(ぼく)は未来(みらい)から来たんです。これを見て下さい」
 男はポケットからペンダントを出して彼女に見せた。彼女はハッとして、
「それは、私が持ってるのとよく似(に)てるわ。これが…、何か…」
「これは、僕の母親の形見(かたみ)なんです。母は幼(おさな)い頃(ころ)、実の父親に虐待(ぎゃくたい)されて――。母は…、あなたが産(う)んだ娘(むすめ)です。父親というのは、いま、あなたが付き合ってる男なんです」
「そ、そんな…。信(しん)じられないわ。彼がそんなことするなんて…」
「これは、事実(じじつ)なんです。僕は母から何度も聞かされました。母は、父親から逃(に)げ出すとき、あなたからこれを受け取ったと言ってました」
 彼女は、急に不安(ふあん)な気持ちになってしまった。彼女は、彼を待つことをやめて帰って行った。男は彼女を黙(だま)って見送(みおく)った。そこへ、別の女が近寄(ちかよ)って来た。女は男に言った。
「あんな話、信用(しんよう)するなんて…。ほんとバカよね。これで、あの人はあたしのものよ」
「まったく、強引(ごういん)だね。でも、あんただったら、どんな男もいちころかもなぁ」
<つぶやき>これは、用意周到(よういしゅうとう)な計画(けいかく)のようです。そうまでして手に入れたい男って…。
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