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熊谷達也「調律師」

2016年09月24日 | か行の作家

 

文春文庫
2015年12月 第1刷
解説・土方正志
267頁

 

 

東日本大震災を挟んで2010年8月から2012年11月まで『オール讀物』に連載された連作7編を収録

 

主人公は、新進気鋭のピアニストとして世間の期待を集めていましたが自分が運転中に起きた交通事故で妻を喪い引退
今は、妻の仕事だった調律師を生業としています
彼は、道具を使うと同時にピアノが発する『匂い』で調律を進めていきます
ピアノから匂いを感じるようになったのは交通事故の後
そしてそれは妻が持っていた特殊な感覚なのでした
事故の衝撃が脳に影響を与えた可能性も否定できず色々と検査を受けますが、はっきりとした因果関係はわかっていません
妻を亡くしたショックから今だ立ち直れずにいる主人公
彼を見守る周囲の人々

 

物語は比較的優しい雰囲気で進みますが

震災前の
「少女のワルツ」「若き喜びの歌」「朝日のようにやわらかに」「厳格で自由な無言歌集」「ハイブリッドのアリア」

から

震災後の
「超絶なる鐘のロンド」「幻想と別れのエチュード」

では当然ながら、大きな転調を見せます

 

ラストには、再生を果たした主人公が被災地の旅を続けるであろう姿が描かれます
仙台在住の熊谷さん、被災地を見守る温かい視線を感じます

 

 

 

 


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