徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:松村真宏著、『仕掛学 人を動かすアイデアの作り方』(東洋経済新報社)

2020年08月10日 | 書評ーその他



このところ、説得力や人に対する影響力、文章力など人(の心)を動かすということに関していろいろと調べたりしていたので、audiobook.jp で松村真宏著『仕掛学 人を動かすアイデアの作り方』が期間限定で読み(聴き)放題対象になったというメルマガの知らせに誘われて1.5倍速で一気に聞きました。

【作品紹介】
押してダメなら引いてみな。一言で言うとこれが仕掛けの極意です。
人に動いてほしいときは無理やり動かそうとするのではなく、
自ら進んで動きたくなるような仕掛けをつくればよいのです。

ただ、言うは易し行うは難し。
そのような仕掛けのつくり方はこれまで誰も考えてきませんでした。

本書では仕掛けの事例を分析し、体系化。
「ついしたくなる」仕掛けのアイデアのつくり方についてご紹介します。 

ポイントは、どうしたら「ついしたくなる」のかという人間の心理を理解することにあります。する労力とすることによって得られる便益のバランスはもちろんのこと、社会的規範や人目があるかどうかによっても人の行動が多かれ少なかれ決まるので、そうした可能な決定要因を考慮しつつ、目的の行動(例えばゴミを拾って捨てる、トイレをきれいに使うなど)に誘導するにはどうしたらいいか、その方法論を既存の仕掛を分類・分析しながら解説されています。
人の好奇心や遊び心、ちょっとしたチャレンジ精神をくすぐるといったポジティブなトリガーや(例:ゴミ箱の上にバスケットゴールを設置して思わずゴミを投げ入れたくさせる)、なんとなく悪いことをしてはいけないような気にさせるネガティブなトリガー(例:小さな鳥居を設置してゴミの不法投棄を止めさせる)を利用するなどのアイデアは実に示唆に富んでいました。

こうした仕掛けは言葉を介在しないコミュニケーションの1つとして捉えられます。人の目に留まらなければそこにあるだけのギミックですが、目に留まれば設置者の意図したとおりの行動を誘発できる可能性が高いところが面白いですね。
もちろん伝達できる内容は限られていますし、複雑な行動を起こさせることもできません。人間の本能に即した衝動にアピールするため、人を「動かす」範囲は自ずと限られてきます。それでも知っていれば役に立てられる武器にもなると思いました。