徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:池井戸潤著、『花咲舞が黙ってない 』(中公文庫)

2018年03月30日 | 書評ー小説:作者ア行

昨年秋にいきなり文庫発行された『花咲舞が黙ってない 』(中公文庫)は、「読売新聞」朝刊に2016年1月17日~10月10日に連載されていたそうですが、私は作家「池井戸潤」の新刊というだけで購入した次第です。

連作短編集『不祥事』(2004年発行)の続編で、時代設定は当時のまま花咲舞と合併前夜の東京第一銀行の物語が綴られています。ライバル行である産業中央銀行と合併準備が進行中ということもあって、半沢直樹が同行の企画部調査役としてちょい役ではありますが登場します。いえ、登場回数は少ないものの決定的な役割を果たすので、かなり重要な役回りですね。

主人公の花咲舞は己の領分・臨店指導で「銀行を良くしたい」という正義感を発揮し、次々露になる東京第一銀行のスキャンダルと隠ぺい体質に果敢に立ち向かいます。その中で重要な役割を果たすのが企画部特命担当調査役の昇仙峡玲子です。産業中央銀行側の半沢直樹と対を成す役職という位置づけで、特に花咲舞の味方というわけでは全然ないクールな女性なのですが、舞の方は彼女に期待して、自分の発見したことや思いなどを彼女に訴えます。

舞は「女半沢」みたいなところもありますが、もっと感情的で暴走しがちです。紆余曲折を経ながらも出世していく半沢直樹とは政治力やバンカーとしての実力がかなり違いますね。

第1話から7話までありますが、短編連作というほどバラバラではなく、かといって一つの物語としてまとまっているのかというとそれほどでもない、全体的に緩やかな繋がりがあります。このため、ページを繰る手が止まらないということはなく、1話が終わったところで問題なく休憩できます(笑)

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