御影のブログ

企画/シナリオライター御影のブログ。

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「御影新作プレゼンのサンプルシナリオ_01」の5

2014年01月25日 13時12分26秒 | 新作プレゼンのサンプルシナリオ
;■屋敷・食堂(19時半)
;■ 雪村陣(私服
;■ 御蔵姫子(メイド服
;■ ピリッタ・マキネン(私服
;■ 黒崎今日香(私服
;■ 黒崎明日香(私服
;■ 比良坂小夜(私服
;
【小 夜】「そういう楽しそうなことをしてるときは、呼んで欲しかったなー」

【明日香】「……趣味が悪い」

【今日香】「せんせー、スカート人間みたいだったねぇ♪」

【ピ リ】「見られてないので恥ずかしくありませんでしたよ?」

【 陣 】「頼む……そろそろ、その話題をやめてくれ」

夕飯時の食堂に人が増えるたび、この会話が繰り返されている。

;■微笑み
【姫 子】「皆さん揃いましたね。それでは、この屋敷の主人である私から食事の前のご挨拶を――」

1回見ただけで慣れてしまったが、姫子が音頭をとるのを合図にして、食事がフライングで始まる。

自己弁護を中断して、俺も自分の食べる分をさっさと確保した。

【姫 子】「……陣くん、ちょっと取りすぎじゃありませんか?」

【 陣 】「女の子と食べる量を一緒に考えないでくれ。それより、続けて」

【姫 子】「まったく……皆さん、自分の食べる分は手元に集めましたね? では、残りは全て私のものです」

【姫 子】「で、昨日と今日、それぞれが陣くんとの交流を深めたでしょうが、続けるにしろ辞めるにしろ、明日には彼は外に出てしまいます」

【姫 子】「なにか心残りのある方は、今夜中にお話してくださいな」

【姫 子】「それでは、いただきます」

すでに食べ始めていたが、姫子の「いただきます」に全員が続ける。

【今日香】「でも、せんせーが辞めちゃったらさみしいねー」

今日香がもぐもぐと口を動かしながら、残念そうな声をもらす。

【 陣 】「本当にそう思われてるなら、嬉しいよ」

【明日香】「……陣は戻ってくるわ」

【小 夜】「あら、双子ちゃんたちが懐いてる?」

【ピ リ】「わたしも陣くんはいいことですよ。やっぱり、男の子がいると助かります」

【姫 子】「反対意見はないようですね」

姫子が俺に対して笑いかけてくる。

もちろん、俺も仕事を続けるつもりだったので、苦笑いを返しておいた。

【姫 子】「それで、陣くん、明日は何時くらいにお帰りになります?」

【 陣 】「そうだな……問題がなければ昼前には出ようかな」

日が暮れる前には施設に戻りたかったし、3時までの授業で今の俺が話せるネタはほとんどない。

それなら、さっさと次に来るときの準備をしてきたほうがいいだろう。

【 陣 】「だから、体験って言っても明日の分の給料はいらないよ」

【姫 子】「いいでしょう」

そこだけは屋敷の主らしく、姫子が鷹揚にうなずく。

【小 夜】「続けるの?」

ふいに、小夜が小さな声で訊ねてきた。

【 陣 】「そのつもりだけど」

【小 夜】「そう」

うつむき気味に静かにつぶやいたあと、ワンテンポおいて、小夜がまた顔をあげる。

【小 夜】「なにが一番の理由?」

お金――と正直に答えるのは、屋敷の住人には失礼だろう。

【 陣 】「まあ、楽しかったし、ピリの料理が美味しいからかな」

俺は無難な答えを返しておいた。

………………

…………

……


;■屋敷・渡り廊下(23時)
;■ 雪村陣(私服
;■ 比良坂小夜(私服
;
食後の時間をサロンで過ごし、女の子たちが全員入浴を済ませたのを確かめてから、俺も露天風呂に入ってきた。

【 陣 】「いい湯だったな」

鼻歌を歌いたいくらい気分がいい。

昨日よりも心に余裕があったので長湯してしまったが、火照った身体に春の夜気が心地よい。

これも屋敷を好む理由のひとつか。

【 陣 】「あれ?」

渡り廊下まで戻ってきたところで、小夜が立っていることに気づいた。

【小 夜】「やっほ」

【 陣 】「こんなところでなにしてるんだ?」

【小 夜】「夜の散歩中、かな」

【 陣 】「もしかして、あの墓みたいなところに行くのか?」

【小 夜】「うん」

【 陣 】「もうちょっと明るい場所のほうがいいだろう」

暴漢という意味でならここは世界で一番安全だろうが、夜に足場の悪い林に入るのはさすがに危ない気がする。

;■くすくす
【小 夜】「それじゃあ、陣くんが一緒に来てくれる?」

【 陣 】「ん」

少しだけ迷う。

相変わらず小夜は挑発的な様子だが、俺が気にしすぎているだけなのだろうか。

;■微笑み
【小 夜】「冗談だよ」

【 陣 】「冗談?」

;■笑顔
【小 夜】「陣くんとお話しようと思ってここで待ってたの」

【小 夜】「だから、一緒に散歩しない? ってお誘いは本当だよ」

【 陣 】「ああ、夕飯のときに姫子が言ってたあれか」

俺が一度外に出るので、明日までに話があるなら今日のうちだと言っていたが、本当に声をかけてくる人間がいるとは思わなかった。

誰もが――俺自身も、また戻ってくると考えていたからだ。

【 陣 】「なにか急ぎの用事があるのか?」

【小 夜】「今のうちに聞いておきたいことがあったから」

【 陣 】「内緒の話か?」

【小 夜】「ううん、そんなことないよ。陣くんが部屋に戻りたいなら、ここで聞いて済ませちゃうような話」

【 陣 】「わかった。散歩に付き合う」

俺は素直に従うことにした。

彼女たちに望むものは与えろ、というのが仕事であり、俺の立場だ。

ちょうど夕涼みにもなるしな。



;■屋敷・花畑の墓標(23時)
;■ 雪村陣(私服
;■ 比良坂小夜(私服
;
墓標の立つ花畑は、相変わらず雰囲気のある場所だった。

【 陣 】「そういえば、ここ、昼間に来たことないな」

【小 夜】「きれいな場所だよ」

【 陣 】「次に屋敷に戻ってきたときに見てみるよ」

【小 夜】「次、か」

小夜がぼんやりと繰り返す。

【 陣 】「なんか、夕飯のときもそんな感じだったけど、小夜は俺が戻ってこないほうがいいのか?」

【小 夜】「私はいいんだけど、陣くん自身のためには……どうなのかな?」

【 陣 】「俺?」

;■苦笑
【小 夜】「ごめんね、よくわからないよね。今は気にしないで」

困ったような笑顔を浮かべて、小夜が首を振る。

;■普通に微笑み
【小 夜】「それより、陣くんに聞いておきたかったのは、世話役の仕事を請けたときのことなんだ」

【小 夜】「陣くんが男の子だってことに、姫子とか守屋さん、なにか言ってなかった?」

【 陣 】「ああ、それなら守屋さんは気にしてたよ。女の子だけの屋敷に若い男を入れていいのかって」

今ならよくわかるが、彼女たちの異性に対する距離感は狂っている。

だけど――だからこそ、俺という存在は外に出る前の“慣らし”の意味があるのではないかと思っていた。

ただ、少しわからないこともある。

ドームや屋敷は『停滞』の象徴であるはずなのに、俺の存在は『変化』だ。

姫子が本当に望んでいるものは、いったいどちらなんだ?

【小 夜】「姫子はなんて言ってた?」

同じことを考えたわけではないだろうが、小夜が静かに問いかけてくる。

【 陣 】「あー、姫子は恋愛を禁止してるわけじゃないから男でも気にするな、って言ってたけど」

【小 夜】「そっか」

小夜が、うんうんとうなずく。

;■苦笑
【小 夜】「じゃあ、やっぱり陣くんは、私のために用意された王子様なんだね」

【 陣 】「王子様?」

;■にっこり
【小 夜】「私はお姫様だから」

【 陣 】「……それ、恥ずかしくないか?」

【小 夜】「女の子はみんな、心の中ではお姫様になりたいものだよ」

くすくすと小夜が笑う。

青白い光に照らされた小夜は、確かにお姫様に相応しい存在だろう。

それでも、俺が王子様というのはありえない。

まあ、よくてサンタクロースのなりそこない程度だ。

【 陣 】「よくわからないけど、俺は小夜のためだけに雇われたってことか?」

;■普通に、少しだけ考えこみながら
【小 夜】「多分、最終的にはそうなんだと思う」

【 陣 】「最終的?」

【小 夜】「ねえ、私って子どもの頃に少しの間だけ施設に預けられたことがあるんだけど、もしかして陣くんと会ったりしてないかな?」

突然、小夜が話を変える。

【 陣 】「いや……会ったことないと思うけど。それって何年前のことだ?」

【小 夜】「6年くらい前。この屋敷に来る前にちょっとだけね」

【 陣 】「思い当たらないな。俺の住んでる場所は――」

俺が施設の名前と地域を伝えると、小夜は肩をすくめた。

【小 夜】「そこじゃないなぁ」

【小 夜】「残念。そこまでは運命じゃないか」

【 陣 】「話ってそれだけか」

【小 夜】「あー、うん、そうだね」

【 陣 】「…………」

小夜がなにを確認したかったのか、さっぱりわからない。

ただ、なにかがひっかかっている。

この仕事の最後の一線のようなもの……

【 陣 】「……小夜、俺からもひとついいか?」

【小 夜】「いいよ」

【 陣 】「俺の前の世話役だった人は、どんな人間だった?」

【小 夜】「あ、その質問がきちゃったか」

軽くつぶやきながら、小夜はどう答えるか考えるように間をおく。

【小 夜】「名前を言ってもわからないだろうけど、三十歳くらいの女の人。あんまり詳しくないんだよね」

【 陣 】「その人は、あの屋敷に何年いた?」

【小 夜】「1年はいなかったよ」

【 陣 】「逆に言えば、半年以上はいたんだな」

【小 夜】「そうとも言える」

【 陣 】「なんで1年も一緒に暮らしてて詳しくないんだ?」

;■微笑み
【小 夜】「……陣くんが本当に聞くべきことは、それじゃないよ」

悪戯っ子のような笑みに、俺は少し考える。

【 陣 】「…………」

【 陣 】「どうして、こんな条件のいい仕事を、辞{・}め{・}た{・}んだ?」

【小 夜】「……それが正解」

小夜が銀色の髪を揺らしながら、表情を消し、静かに首をかしげた。

【小 夜】「詳しくないのは、前の世話役の人は部屋に閉じこもってばかりだったから」

【小 夜】「辞めた理由はね、壊れちゃったから」

【 陣 】「壊れた?」

【小 夜】「ねえ、陣くん、少し寒い」

小夜が自分の腕を抱いてつぶやく。

【 陣 】「……はぐらかしてるのか?」

【小 夜】「ううん。本当に冷えてきてるし、陣くんも湯冷めしちゃうでしょ」

【小 夜】「続きは屋敷に戻ってからしてあげる」

【 陣 】「サロン?」

【小 夜】「そこまで踏みこんだ話なら、あんまり目立つ場所じゃないほうがいいかな」

小夜がきびすを返しながら、のんびりと言う。

【小 夜】「陣くんの部屋に行っていい?」

【 陣 】「いや、それは……」

【小 夜】「ここに2人きりでいるのも、サロンも陣くんの部屋も、別に変わらないと思うよ?」

小夜の言うことは確かにその通りだ。

それでも、個室というのはやはり気になってしまう。

【小 夜】「とりあえず屋敷まで戻ろ」

歩き出してしまった小夜のあとを、俺は頭をかきながらついていく。

外の常識が通じていない。

仕方ないか――というのは、言い訳だろうか?



;■屋敷・陣の部屋(23時半)
;■ 雪村陣(私服
;■ 比良坂小夜(私服
;
結局、どこという場所も思いつかず、俺の部屋に来てしまった。

【 陣 】「確かにあったかいな」

意識していなかったが、屋内に戻ると身体が冷えていたことに気づく。

【小 夜】「ね。あのままだったら湯冷めしてたよ」

【 陣 】「そういえば、小夜も風呂に入った後だもんな」

【小 夜】「うん。あんまりこんな時間に出歩いたりしないしね」

小夜の言葉に、俺は無意識に携帯をとりだして時間を確認していた。

午後11時半。

全員が寝ているということはないだろうが、この屋敷の夜は早そうだ。

【小 夜】「……ちょっと寒い部屋だね」

小夜が内装を見渡しながらつぶやく。

【小 夜】「広さとかは他のところと変わらないけど」

【 陣 】「まだ生活感がないからかな?」

人が暮らしている部屋というのは、やはりそれらしい匂いや暖かさがある。

特に、この部屋は事務的な造りになっているというのもあるだろう。

【 陣 】「あの暖炉って使えるのかな?」

どうでもいい会話を小夜に振る。

しかし、彼女は答えなかった。

【 陣 】「……小夜?」

【小 夜】「暖炉なんて、いらないよ」

彼女は俺とは正反対のほうに視線を向けていた。

その先にはベッドがある。

【 陣 】「なにを、っ――!?」

視線を戻そうとした瞬間、小夜が俺の胸に飛びこんできた。

突然のことに支えることが出来ず、俺はそのままベッドに押し倒されてしまう。

【 陣 】「……さ、小夜?」

【小 夜】「…………」

瞳が潤んでいることを見てとれる近さで、彼女は俺を見下ろしていた。

両腕の手首を押さえられている。

小夜はわずかに頬を赤く染め、熱っぽい息をつく。

【小 夜】「……あんまり、驚かないんだ」

【 陣 】「……冗談だろ?」

俺は眉をしかめてしまう。

この体勢では力は入りづらいが、それでも押し返すことは出来る。

出来るが――出来なかった。

こうなることを期待していなかったといえば、嘘になる。

;■可愛くぼんやり
【小 夜】「……抵抗、しないの?」

【 陣 】「…………」

【小 夜】「……キス、してもいい?」

【 陣 】「…………」



;■Hシーンはとりあえず後回し。
;■CG枚数との兼ね合いもあるし、媒体を変える場合などはカットもありえるので。



;■ピロトーク
;
【小 夜】「……ふ、ぁ」

隣で寝ている小夜が妙な声をもらす。

【 陣 】「大丈夫か?」

【小 夜】「あ、うん。ちょっとクラクラしてるけど、平気」

気の抜けた表情が、とても可愛らしい。

【 陣 】「小夜が気持ちよかったのなら、よかった」

【小 夜】「……そうだね」

俺の手を握りながら、小夜が小さく微笑む。

出会って2日の少女と抱き合い、こうやっているのはおかしなことだろう。

それでも、俺は小夜を愛しく想っていた。

もう一方の手で、彼女の髪を撫でる。

【 陣 】「きれいな銀色だな」

【小 夜】「ふふっ。それだけが自慢だから」

猫が喉を撫でられるように、くすぐったそうに小夜が言う。

【小 夜】「ねえ、陣くん、私を選んで」

【 陣 】「……ん?」

【小 夜】「今だけでいいから、この屋敷の他の子たちじゃなくて、私を選ぶって言って」

懇願するような響き。

ピリや今日香や明日香ではなく、小夜を選ぶ。

今だけはという言葉に距離を感じたが、俺は彼女の望む言葉を告げようと思った。

【 陣 】「俺は、小夜を選ぶよ」

;■平静、目閉じ
【小 夜】「…………」

;■寂しい微笑み
【小 夜】「……ありがとう、陣くん」

また、その笑い方だ。

どうしたら小夜を普通に笑わせてあげることが出来るのだろう。

俺は彼女にキスをしようと腕を伸ばす。

しかし、彼女は俺の手を逃れ、身を起こしてベッドからおりた。

【 陣 】「……小夜?」


;■屋敷・陣の部屋(0時半)
;■ 雪村陣(私服
;■ 比良坂小夜(私服
;■ 御蔵姫子(メイド服
;
;■姫子の服装は和服もあり。
;■以降のCGの見栄えがよいもので。
;
彼女は俺の呼びかけに反応せず、手早く服を身に着け、ぼんやりとした視線を虚空に向けた。

;■ごく普通に
【小 夜】「姫子、聞いたでしょ、次は私よ」

【 陣 】「……姫子?」

;■少し残念そうに
【姫 子】「……馬鹿ですね、あなたは」

【 陣 】「――っ!?」

どこからともなく発せられた声とともに、いつの間にか――扉を開けることもなく、今この瞬間、姫子が部屋の中にいた。

【姫 子】「失礼しますよ、陣くん。覗いていたわけではないんですがね」

ベッドの上にいる俺に頭を下げたあと、姫子は小夜に視線を移した。

;■ため息
【姫 子】「やってくれましたね、小夜」

;■無感情
【小 夜】「ルールを決めたのはあなたよ」

【姫 子】「6年間……あなたとは一番長く暮らしていたのに」

【小 夜】「情が移った、なんて言わないでね?」

【姫 子】「……ありえないことに、親友だったと、私は思っていましたよ」

【小 夜】「親友なら約束を守って、姫子」

【姫 子】「…………」

姫子が押し黙る。

2人がなんの話しをしているのか、わからない。

姫子はちらりと俺のほうを見たあと、扉のほうへ歩いていく。

小夜もその後に続こうとする。

【 陣 】「……小夜、なんの話だ?」

【小 夜】「え? あ、驚かせちゃってごめんね。陣くんは気にしないで」

【小 夜】「確かめてみたかったの、自分を」

【小 夜】「私は夢みたいなものだから」

【小 夜】「悪い夢、だから」

まるで何事もなかったかのような、ぼんやりとした表情で小夜がつぶやく。

【小 夜】「そのまま寝てしまって、次に起きたときには忘れてしまっていいの」

【 陣 】「…………」

意味がわからなかったが、それ以上に、突然拒絶されたことがショックだった。

忘れることなんて、出来るはずがない。

【小 夜】「ごめんね、陣くん」

;■笑顔
【小 夜】「さよなら、私の王子様」

そして、小夜も部屋を出て行った。


;■屋敷・陣の部屋(0時半)
;■ 雪村陣(私服
;
【 陣 】「…………」

まともなことを考えられるようになったのは、小夜と姫子がいなくなって、さらに10分ほど経過してからだった。

衣服を整え、ベッドのシーツに広がった染みを軽くティッシュでふきとり、部屋に立ち尽くす。

どこか夢見心地だ。

まるで屋敷の中に俺しかいないような静けさだった。

あれは夢だったのか?

いや、そんなことはありえない。

この手に、小夜を抱いた感触が生々しく残っている。

夢のようだったのは、その後の小夜と姫子の会話だ。

【 陣 】「……選んだ?」

選んだ。

俺は小夜を選んだ。

どういうことだ?

自分を愛してくれということではなかったのか?

俺は2人が去っていった扉に目をやる。

喉が渇いている。

ざわざわと心が波打った。

選んだ。

選ばされた。

【 陣 】「……俺は、なにを選ばされたんだ?」



;■屋敷・陣の部屋(0時半)
;■ 雪村陣(私服
;
廊下に出た。

静かなのはいつも通りだが、なにかがおかしい。

まるで水の中のように空気が重い。

その重さがさらに強くなる方向――ホールのほうへ向かう。



;■屋敷・玄関ホール(0時半)
;■ 雪村陣(私服
;
2階を見上げる。

小夜と姫子が向かったのは自分たちの部屋だろうか?

2人の部屋がどこにあるのかを知らない。

だが、上ではない、ような気がする。

サロンや図書室のあるほうでもない。

なにも目印はないのに、それはナメクジが這った跡のように、1階の奥へと続いている気がした。

俺は誘われるように足を進める。



;■屋敷・渡り廊下(0時半)
;■ 雪村陣(私服
;
渡り廊下に出たところで、俺は自分がどこを目指すべきか知った。

あの花畑だ。

墓標。

悪い予感がした。

悪い予感が、した。

寒い。

俺はなにを選んだ?

頭を振る。

【 陣 】「……小夜」

無意識に名前を呼んでいた。

なにが起こったのか確かめるために、暗い森に足を踏み入れる。



;■黒画面
;
俺が選んだものはなにか。

前の世話役だった人間が壊れた理由。

外界と隔絶されたドームと屋敷の存在意義。

この仕事の本当の中身。

あの採用テストの質問。

『あなたは、いくらもらえれば人を殺せますか? 回答する必要はありません。考えてみてください』

――全ての答えがそこにい{・}た{・}。



;■花畑の墓標(0時半)
;■ 雪村陣(私服
;■ 御蔵姫子(メイド服
;
墓標の足元、赤い花畑に姫子がうずくまっていた。

彼女は砂遊びでもしているかのように、地面にあるなにかに熱中していた。

ピチャピチャと生理的に受けつけられない音がする。

【 陣 】「…………」

赤い花畑?

ここにある花は、月明かりを流しこんだような白だったはずだ。

赤いものがぶちまけられている。

その状況を、すぐには脳が認識できなかった。

赤いもの。

赤いものはペンキだ。

鉄の匂いのするペンキ。

ペンキ。

無意識に一歩後ろにさがっていた。

その気配に、姫子の動きが止まる。

【姫 子】「……あら」

;■わずかな微笑み
【姫 子】「陣くん、来てしまったんですね」

うずくまっていた姫子が顔をあげる。

姫子の手も真っ赤だ。

その細い指先から、赤いペンキが垂れている。

姫子は自分の指を舐める。

彼女の舌と唇の端からもペンキが垂れている。

【姫 子】「お見苦しくて失礼しました。ちょっと、久しぶりの食事だったもので」

食事。

食い散らかした跡だ。

な{・}に{・}を{・}?

はっきり見えないが、彼女の足元にある赤黒いものはなんだ?

【 陣 】「   、     」

なにかを自分が声に出したが、自分でもなにを言ったかわからなかった。

;■微笑み
【姫 子】「あなたが選んだものを頂いただけですよ」

姫子が笑う。

【 陣 】「  、    ?         ?      ?」

;■ため息
【姫 子】「なにを今更」

姫子が冷たい瞳で俺を見つめる。

【姫 子】「この仕事が尋常のものではないと、あなたも承知していたと思いますが?」

【姫 子】「神が、なんの見返りもなしに、人間に恩恵を与えると思っていたのですか?」

【 陣 】「      ?」

;■くすくす
【姫 子】「あの屋敷は私のもの」

;■歌うように
【姫 子】「そして、私への貢物が食べごろになるまで世話をするのが、あなたの仕事、あなたの役目」

【姫 子】「だから、あなたは選ぶんですよ」

【姫 子】「あの生{・}贄{・}の少女たちの中から、私が誰を食べていいかを」

【 陣 】「――   !?」

多分、俺は叫んだ。

無意識に姫子に掴みかかろうとした瞬間、視界がぶれた。

自分の身体がなくなったかのような脱力の直後、地面に顔から激突する。

【 陣 】「…………」

動けない。

力ずくで押さえつけられたとかではなく、四肢のどこにも一切の力が入らない。

ただ姫子が目を細めただけで、指一本どころか、呼吸も出来ない。

まぶたを動かすことも出来ず、眼球すら動かせない。

だから、俺はそれを見つめ続けることになった。

花に紛れて、銀色の髪が散らばっていた。

ほんの少し前に、俺がきれいだと言い、それが自慢だと言った少女の髪の色だった。

;■くすくす
【姫 子】「不遜も許しましょう。あなたの最後の味付けのおかげで、小夜は本当に美味しくなった」

【姫 子】「いい仕事でした」

【 陣 】「…………」

意識が遠くなる。

小夜は約束を果たした。

その身をもって、俺の前にいた世話役の人間が壊れた理由を教えてくれた。

誰か……誰か、誰か……

誰でもいい、俺を、殺してくれ。

………………

…………

……

;■長いウェイト





;■------------------------------------
;■<プロローグ・3日目>

;■-----
;■屋敷・陣の部屋(7時)
;■ 雪村陣(私服
;
目が覚めると自分の部屋のベッドで寝ていた。

【 陣 】「…………」

天井を5秒ほど見つめる。

どうやら願いは通じず生きているらしい。

それとも、死んでも今と同じような世界が続くのだろうか?

上半身を起こしてシーツをめくる。

【 陣 】「……どうして?」

パジャマではなく私服を着ていたが、倒れたときについたはずの血やドロがなかった。

昨日の夜のことは全て夢だったのか?

俺はベッドのシーツの上を調べる。

なにもない。

床の絨毯の上も這いつくばって調べたが、やはりなにも見つからなかった。

念のためゴミ箱の中を覗きこむが、昨日の夜に使ったティッシュペーパーも含めて、完全に空っぽになっていた。

【 陣 】「…………」

【 陣 】「……夢?」

いや……そんなことはありえない。

あんな生々しい、俺みたいな人間の想像力では思いつけないような夢などあるものか。

なにかあるはずだ。

俺はベッドに腰をおろして頭を抱える。

あの花畑や、小夜の部屋を確認するか――いや、ここまで証拠が消えているからには、なにもないだろう。

違う。

それは言い訳だ。

行きたくない。

外に出て……姫子に会うのが恐ろしかった。

【 陣 】「…………」

視線が枕に向かう。

ゆっくりと枕を持ち上げると、銀色の髪が1本、落ちていた。

【 陣 】「…………」

……小夜。

俺はその髪をティッシュに包んでポケットに入れる。

ここに来たときに着ていたコートを取りだし、一度だけ部屋を見渡して、廊下に出た。



;■屋敷・廊下(左翼)(7時)
;■ 雪村陣(私服
;■ ピリッタ・マキネン(制服
;
;■笑顔
【ピ リ】「おや、陣くん。おはようございます」

ホールに向かって歩いているとピリがいた。

【 陣 】「ああ、おはよう……」

まぶしい笑顔を見ていられず、思わず視線を逸らしてしまう。

【ピ リ】「ん? なんか陣くんは元気ありませんか? コートなんて着てどうしました?」

【 陣 】「あ、ああ……ちょっと風邪っぽくて。だから早めに退散するよ」

【ピ リ】「あれ、もしかして、お帰りですか? 朝ごはんくらい食べて行きませんこと?」

食事……。

【 陣 】「……ごめん」

俺は吐き気をこらえながら、ピリの横を通りすぎる。

【ピ リ】「あ、陣くん」

;■笑顔
【ピ リ】「元気になったら、また♪」



;■屋敷・外観(7時)
;■ 雪村陣(私服
;
ホールを抜けて屋敷の外へ。

振り返らず、そのまま草原を歩き続ける。

また……。

誰がこんなところに戻ってくるか……。



;■桜の木の下(7時半)
;■ 雪村陣(私服
;■ 御蔵姫子(メイド服
;■ 守屋信司(スーツ
;
目印である桜の木の場所に辿りつく。

何時にここを出るか誰にも伝えていなかったが、俺がここにいることはセンサーで把握しているだろう。

案の定、風景だった場所がスライドしてスーツ姿の男性があらわれた。

【守 屋】「こんな時間にどうかしたのか?」

【 陣 】「……帰ります」

【守 屋】「もう? 姫は?」

【 陣 】「屋敷にいるんじゃないですか」

【守 屋】「妙だな」

守屋が考えこむ。

あまり話をしたくない。とにかくここから離れたい。

守屋を悪い人間だとは思わないが――俺の味方ではない。

なによりも、彼女たちのように、このドームに閉じこめられることだけは避けたかった。

【守 屋】「……顔色がよくないが、大丈夫か?」

ピリに続いて守屋にまで――自分は、よほど酷い顔をしているらしい。

【 陣 】「調子が悪いから、風邪なら他の子に移す前に、早めに帰ろうと思ったんです」

【守 屋】「ああ、そういうことか」

【守 屋】「それなら長居させては申し訳ないな。手短に用件だけ済ませよう」

【守 屋】「屋敷での生活はどうだった。感想というより、実際に世話役を続けられるかという話だが」

【 陣 】「……また戻ってきます」

嘘だった。

だが、ここで『続けない』と言えば、その理由を問われるだろう。

【守 屋】「そうか」

【守 屋】「あとは君に対する賃金の支払いだな。現金でもいいし、預金口座を教えてもらえれば今日までの3日分、まず15万円を振り込んでおこう」

【 陣 】「口座は次に来たときでいいですか? あと、2日分でかまいません」

;■微笑み
【姫 子】「報酬は2億にしましょう」

;■木の上でもいいかな。CG次第。
なんの前触れもなく、姫子が桜の木の下で笑っていた。

【姫 子】「陣くんが他の子と同じようにあの屋敷を出ることなく3年間を過ごすなら、前払いで1億、後払いで1億」

【姫 子】「そのくらいはよろしいですよね、守屋くん?」

;■いぶかしく思いながらも普通に
【守 屋】「あなたがよければ構いませんが」

【 陣 】「……2億?」

呆気にとられてしまった。

姫子を怖がるよりも先に、内心で興奮してしまった。

2億――耳にしない額ではないが、それを俺みたいなガキに与えるというのはなんの冗談だ?

だが、それだけあれば前金だけでも施設を救うことが……。

;■流し目、くすくす
【姫 子】「もちろん、この金額は陣くんが本{・}当{・}に{・}戻{・}っ{・}て{・}く{・}れ{・}ば{・}、ですがね」

【 陣 】「……っ」

姫子の登場に驚き、恐怖するよりも、期待を抱いてしまう。

期待を……抱かされてしまった。

『大切な誰かを助けるために、別の誰かを殺すことは悪いことだと思いますか?』

『あなたは、いくらもらえれば人を殺せますか?』

『回答する必要はありません。考えてみてください』

はっ、と守屋が顔をあげる。

;■真剣
【守 屋】「まさか……食べたんですか? このタイミングで?」

【姫 子】「ええ」

【守 屋】「……誰を食べたんです? 今日香ですか?」

【姫 子】「なるほど。守屋くんは、次の生贄は今日香だと考えていたんですね」

【 陣 】「……隠してたな」

八つ当たりだとわかっていても、俺は守屋を睨みつけてしまう。

;■軽い困り
【守 屋】「否定はしない。それがルールだからな」

【姫 子】「そのルールを逆手にとって、小夜が自分から生贄になったのです」

【守 屋】「小夜が……」

意外なことに、小夜の名前を聞いて、守屋が表情を歪めた。

【姫 子】「とりあえず、陣くんには考える時間を与えます」

【姫 子】「メロスにちなんで3日後の日没までに戻ってくれば、よしとしましょう」

;■困り
【守 屋】「……戻ってくるとは思えませんがね」

そのほうがいい、と苦虫を噛み潰したような顔で守屋が言う。

;■くすくす
【姫 子】「代わりならいくらでもいるし、そも世話役がいなければ、私は勝手に食事をするだけです」

【姫 子】「当然、ここの話を警察にしたところで取り合ってもらえませんのであしからず」

【 陣 】「…………」

それで話は済んだとばかりに、2人は俺が出て行くのを邪魔しないらしい。

俺は混乱と期待を抱えたまま、扉に向かう。

;■くすくす
【姫 子】「誠実な人間は――」

すれ違いざま、姫子の笑い声に、思わず耳を傾けてしまう。

【姫 子】「誠実な人間は、例えこちらが信用されていなくとも、信頼はできるし御しやすい」

【姫 子】「より大きな誠実さを与えればコントロールすることができる」

【姫 子】「会って3日と経たない人間と、本来の自分の身内は比べるまでもなく」

【姫 子】「そうでなくとも、世話役がいないことで“無作為に選ばれた少女”は、きっと、あなたのことを恨むでしょうね」

………………

…………

……


;■第二都庁ビル前(8時・雪)
;■ 雪村陣(私服
;
よろけるようにビルを出たところで、あまりの寒さに驚いた。

;■空(雪空)
;
まるで昨日の明日香のように、季節を確かめるために空を見上げてしまう。

【 陣 】「……ああ、冬か」

ぼんやりと灰色に光る空に、雪がちらついている。

積もってはいないので3日間降り続けていたわけではないらしいが、身を切るような寒さに、それも時間の問題のように思えた。

そして、音の多さにも驚いてしまう。

車の音、鳥の声、建築現場の音、店舗の宣伝音声やBGM――それらが幾重にも重なって聞こえる。

世界には、こんなにも“音”が溢れていたのか。

あの屋敷で過ごしていた2日間でこれなのだから、彼女たちの感覚がズレているのも当然だと再認識してしまった。

と、ポケットの中で携帯が振動する。

13通のメールを受信――電波が入るようになって一気に届いたらしい。

2通はスパム、3通が友人からの他愛もない雑談、残りの8通は妹――要{かなめ}からだ。

妹からのメールは、最初のほうは自分に告げず泊まりのバイトを請けたことへの非難で、後半は心配だから返事が欲しいというものだった。

連絡がつけられるところに出てきたことをメールで返したところで、今日の曜日を思い出す。

【 陣 】「そういえば、火曜だから学校か」

すぐに返事はこないだろう。

自分も2時間目か3時間目なら間に合いそうだが、とても学校に行く気にはなれなかった。

そして――妹からのメールに少しだけ気が楽になっていることに気づく。

施設に戻るため地下鉄に乗ろうと考えたが、どの方向に向かうにも、この時間は朝のラッシュで混んでいるはずだ。

施設は新宿駅から東、住宅街の外れにある。ここからなら歩いても1時間はかからないだろう。



;■新宿駅東口(8時半・雪)
;■ 雪村陣(私服
;
新宿駅まで戻ってきたところで、ふいに足が止まってしまった。

いつもなら意識しない、人の多さに圧倒される。

この国で一番多くの人間が行き来する場所――学生、ビジネスマン、歌舞伎町から出てきた朝帰りの女性、外国人の旅行者、ビラ配り、浮浪者。

一昨日まではなんとも思わなかった“ありふれた日常”が、遠いものに感じられてしまう。

まるで自分が浦島太郎になったような気分だった。

この人たちは、あの屋敷で行われていることを知らない。

この人たちも、姫子の餌なのか?

すでに、自分が普通の世界の住人だとは思えなくなってしまっていた。

【 陣 】「…………」

立ち止まったままの俺を、通行人が怪訝な顔をしながら避けていく。

口元がひきつっている。

俺は今、どんな顔をしているのだろう?

これ以上の注目を浴びたくなくて、うつむきながら俺はゆっくりと歩きだした。



「御影新作プレゼンのサンプルシナリオ_01」の6へ続く
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