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菩薩さまの手(熱中症体験記)

2007-08-22 23:02:45 | Weblog

目の前の景色がくらりと揺れて、思わず片手が
駅ホームの床を掃いた。
それがこの夏、私が熱中症との出会いを自覚した日。
間断なく続く頭痛。
目を開けていられないほどの発汗。

「大丈夫?」誰かの声。
ふうっと息を吐き、気がつくとホームのベンチに座っていた。
大きな柔らかい優しいものが、体中を包んでくれていた。
言葉にすれば「安心」だろうか。
動悸も治まり落ち着いてみればそれは「手のひら」だった。
声から察するに母よりも少し若い老婦人が
私の汗に濡れた背中や頭を摩ってくれていた。
その手が頭を撫でると頭痛は嘘のように引き
背中に置かれるとそこから涼風が体を吹き巡った。
誰かが駅員さんを呼んでくれたらしく、
事務室で少しの時間休ませてもらった。
冷たい飲み物とクーラーの涼しさ。ほっと一息。
でも「大きな柔らかい手」を持つ人は既に消えていた。
あれは「菩薩さま」に違いない。
瞬時にそう悟って
「菩薩さまは何処に?」と駅員さんに聞いた。
駅員さんが「救急車呼びますか?」
 と気の毒そうな顔で云った。
コメント (5)
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