おとなりカフェ

『かけがえのないもの』


(養老孟司著、新潮文庫、2009.1.1)
柔和な笑みを浮かべながら「現代のこの社会には、もちろん、言いたいことなんていっぱいありますよ」とテレビのインタビューでおっしゃっていましたが、その言いたいこと、大切なことがこの本の中にはたくさん詰まっています。
文庫ですから、電車の中で読んでいても快適です。

私たちは「かけがえのないもの」という言葉を、その言葉の重さを考えたらとてもじゃないけど気軽に使えないはずなのに、よく使います。

「かけがえのなさ」を感じる時の、その前提となっている、戦後の都市化の中で「あたりまえ」だと思いこんでいる事柄を丁寧にひもとき、「かけがえのなさ」を浮き彫りにしていきます。

どの人にもぜひ読んでほしい1冊なので、私などが余計な説明をすべきではないのですが、
「かけがえのないもの」とは、簡単に言えば自然、特に都市のルールにさらされていない子どもも自然、予測不可能な、その個体それぞれのストーリー。

私たちの住む社会は、結局のところ、脳が決めた社会なのだと。
こうであるはずという意識が、都市のルールを維持しようとする。そのために資源を使い、自然から離れた生活が前提となってしまった。

都市のルールは、(自然の姿として)子どもを産み育てる女性と、予測不可能な未来をたくさん持っている子どもがはじかれるようにできている。だから都市で暮らそうとする子どもは早いうちに、自分の持っている予測不可能な「かけがえのなさ」を削って都市のルールに乗るように、おそらく、させられてしまう、ということ。

解剖学、虫取りがライフワークの先生ですから、興味しんしん、語り口も素敵です。
この本を読んで、「自分でものを考えること」の大事さを感じればそれがなにより。

養老孟司さん、言うまでもなく社会の財産、偉大な先輩、どの人とも同様にかけがえのない人です。


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