みどりの一期一会

当事者の経験と情報を伝えあい、あらたなコミュニケーションツールとしての可能性を模索したい。

市民税減税―名古屋のどえりゃー挑戦/受益と負担を考える契機に

2010-01-15 07:33:38 | 市民運動/市民自治/政治
東京からの帰り、名古屋のホテルにいます。

PCは持ってきたのですが、電源コードを東京に忘れてきたので、
省電力モードで、注目の名古屋関連の新聞記事をお送りします。



 社説:市民税減税―名古屋のどえりゃー挑戦
2010年1月9日 朝日新聞

 首長が動けば、こんなこともできるのかと驚いた人も多いだろう。名古屋市の河村たかし市長が議会を押し切り、新年度からの市民税減税が決まった。思い切った挑戦に注目したい。
 個人市民税、法人市民税をともに10%減税する。個人の場合、年収500万円で年にざっと9500円、1千万円で3万2900円の減税となる。
 市区町村民税は通常、個人なら3千円と各種の控除をした後の所得の6%を納める。2004年度の地方税法改正により自治体の政策判断で変更可能になり、財政難の北海道夕張市が高くしたが、減税した例はなかった。
 東京都杉並区も将来の減税のために基金を積み立てる方針のほか、名古屋市に刺激され、同じ愛知県の半田市が新年度に個人市民税の減税に踏み切ることが決まっているが、200万都市が恒久減税に踏み切る影響は大きい。
 河村氏は、減税を売りに企業や住民の誘致をはかるという。中日ドラゴンズの落合博満監督も「東京から住所を移そうかな」と語った。
 しかし話はそう簡単ではない。減税の初年度には161億円が不足する。名古屋市は地方交付税の不交付団体で、一般会計も1兆円規模だが、公債発行残高はその2倍近くある。市民サービスが削られてしまうのではないか、借金が膨らむのではないか、との不安はぬぐえない。
 河村氏は、財源を行革で生み出す方針だ。逆に行革を強力に進めるてこに減税を使いたいとも言う。
 名古屋市でも裏金が発覚し、水が余っているのに徳山ダム導水路事業に参加するなど、市民が首をかしげることが多かった。とはいえ無駄を洗い出し、事業をふるいにかけるのは簡単ではない。事業仕分けなどで十分な財源を生み出せず、国債発行が過去最大の規模に膨れあがった民主党政権の予算編成の苦吟をみればわかる。
 一律減税は高額納税者ほど恩恵が大きい。そのために低所得者にとりわけ必要な福祉サービスが切られるようなら、本末転倒だ。河村氏は「必要なサービスは守る」と約束した。予算編成でそれを果たしてもらいたい。
 市議会の大勢は、財源論などから慎重だった。ところが市長支持者らがリコールの準備を始めたことなどを契機に賛成に踏み切った。
 議員ボランティア化が持論の河村氏は、議員定数や報酬を半減させる条例案まで提案している。中学校区程度のエリアで無給の公選委員らによる地域委員会をつくり、約1千万円ずつ予算の使い道を決める事業も、モデル的に始めることが決まった。
 議員も安穏としてはいられない。市長と議会の緊張関係は歓迎だ。議会もしっかり監視し、提案し、存在価値をアピールしてもらいたい。


応援クリック人気ブログランキングへ してね 
本文中の写真をクリックすると拡大します。



社説:名古屋の市民税減税/受益と負担を考える契機に
2010年01月06日水曜日 河北新報

 鳩山政権の金看板である「地域主権」が目指すのは、地域のことは地域で決めることだ。国のくびきから解放されたとき子育て、介護、産業振興などの政策は地域の個性を映し、活気あふれたものとなるに違いない。
 ならば、その原資となる地方税率を地方自治体自らが決定してはどうか―。そんな問題意識で名古屋市の河村たかし市長が提出した市民税減税条例が12月、曲折の末、可決、成立した。
 恒久的な市民税減税は全国初で、「庶民革命」を掲げる河村市長は面目を施した。標準税率という国が定めた基準に追随してきた自治体の事なかれ主義に、風穴をあけた意義は大きい。
 市民税減税は、市民生活の支援と地域経済の活性化が目的。新年度から個人と法人の両市民税を一律10%削減する。
 このうち、個人市民税は均等割を年3000円から2700円に、所得割の税率を6%から5.4%に引き下げる。初年度の減税規模は約161億円となる見込み。
 住民税は地方税法で標準税率が定められている。地方分権の流れを受けた2004年の地方税法改正などにより、自治体が税率を変える要件が緩和されたが、これまで実際に減税を実施した自治体はなかった。
 河村氏は政治家になる前から30年間、家業の古紙リサイクル会社の経営に携わった。その経験から「商売の基本は、より良い商品をより安く提供すること。自治体もより良い公共サービスをより安く提供すべきだ」と、コスト感覚を前面に出す。
 同市の地方債残高は08年度末で約840億円。厳しい台所事情を考えれば、減税策は「人気取りのばらまき」にも見える。
 市議会との対立は抜き差しならないものとなった。いったん可決した議会修正案が再議で廃案となりその後、市長原案が可決された。市長が議員定数を「おおむね半減」とする議会改革条例案を提出して議会側を揺さぶるなど政争の様相も呈した。
 財源難を理由に減税に二の足を踏む役所幹部と議会を敵に回し、孤軍奮闘する市長という図式。市民は市長の頑張りに快哉(かいさい)を叫んだ。
 無論、課題がないわけではない。河村市長は「行財政改革で賄う」と主張するだけで、減収分の財源確保や歳出削減の具体的手段が明確でない。税金は安いに越したことはないが、ふたを開けてみたら行政サービスの低下という結果では「革命」の名が泣こう。
 国との関係でも関門が待ち受ける。それは減税できるほど富裕な自治体と見なされてしまうことだ。標準税率を下げた結果、世代間負担の公平性確保の観点から市債の発行が不許可となる可能性もある。この点、国は自治体の自助努力をプラス評価する仕組みを導入すべきだ。
 派手なパフォーマンスばかりが注目される河村市長だが、標準税率というタブーに挑戦した功績は大きい。それは「受益と負担」の関係をどう考えるかという、地方自治の基本テーマにかかわる問い掛けでもある。



最後まで読んでくださってありがとう
人気ブログランキングへ クリックを

 記事は毎日アップしています。
明日もまた見に来てね
  

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする