長尾景虎 上杉奇兵隊記「草莽崛起」<彼を知り己を知れば百戦して殆うからず>

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『小泉純一郎』池上彰「日本の戦後を知るための12人」『小泉純一郎篇』(文藝春秋社)「第三回 小泉純一郎 断言する〝変人〟政治家」より参照引用

2021年12月17日 15時34分57秒 | 日記












 『小泉純一郎』池上彰「日本の戦後を知るための12人」『小泉純一郎篇』(文藝春秋社)「第三回 小泉純一郎 断言する〝変人〟政治家」より参照引用
  (「自民党をぶっ壊す!」「私に反対するのは全て抵抗勢力」キャッチ―なワンフレーズで大衆の支持を掴んで離さなかった小泉純一郎という〝変人〟政治家。様々な改革を成し遂げましたが、現在、多くの人を苦しめる状況を生んだこともまた確かです。)
   小泉純一郎・こいずみじゅんいちろう・政治家。一九四二年、神奈川県生まれ。祖父の代から政治家の家系。慶応大学卒業後、英国留学を経て福田赳夫の秘書に。七二年に初当選し、大蔵族の道を歩む。七八年に結婚するが四年後に離婚(政治家の進次郎は次男)。二○○一年に首相就任。官邸主導の政治を牽引し、郵政民営化などを実現。○六年に首相を退任、○八年に政界を引退後は反原発を訴える。

 小泉純一郎という人が挑んだ戦後って何だろうか?
 彼は、郵政改革のように、戦後にかたち作られ、それが当然と思われていたものに対して異議を申し立て、それに反対する者は抵抗勢力だとして斬り捨ててきました。そうした手法は毀誉褒貶もありますが、やはり「戦後に挑んだ」と言えるのではないか。
 彼は高い支持率を得ました。演説が非常に巧みだとも言われました。あるいはポピュリズム政治家なんていう言い方もされました。その高い支持率によって、いわゆる官邸主導の政治を実現したのです。安倍さんが同じようなことをやりましたが、首相が強い力を持ったがため、官僚たちが「忖度」する場面が多々見られるようにもなったりしました。

 ワンフレーズの源泉は?

 実は先日、小泉さんご本人と対談をいたしました。会ってみて、この人は語彙――ボキャブラリィの少ない人だなと思いました。彼はよく一言で物事を表現しますね。難しい言い回しはせずに印象的なワンフレーズで片付けたり、主語と述語だけだったり。例の大相撲を観戦したときに発した「感動した」の一言もそうでした。
「ワンフレーズ・ポリティックス」といいますが。しかし、小泉さんの場合は、語彙力が少ない故なのかな、と思いました。
「父親が結婚式から帰るたびに『今日の主賓の演説は長かった』ときき……短くても印象に残る名演説を勉強した」とか。父親というのは小泉純也さん。防衛庁長官などを務めた政治家ですね。
 現在の純一郎さんは悠々自適の生活で、五時前には必ず目が覚めてしまう、とか。それから二度寝をするとか。午前中は仕事を入れないそうです。普段は、月に四回ほど反原発集会に呼ばれて反原発論をぶってくる以外は、映画に行ったりオペラや歌舞伎を見たり、本当に悠々自適な生活を送られています。秘書のようなひともいない。
 これはかっこいいなと思いました。

  小泉旋風の正体

 小泉旋風とは何だったのか? 彼の仕事をひとつひとつ検証していきましょう。
 二〇〇一年に森喜朗首相の退陣を受けて行われた総裁選での彼のワンフレーズ。皆さん覚えていらっしゃいますよね。「自民党をぶっ壊す」――自民党議員なのに、自民党をぶっ壊す、ってどういうこと? 今ではそういう疑問が出ますが、このワンフレーズで彼の破壊力に期待した人も多かったのではないでしょうか。
 実は、あの言葉の前後の文脈を見てみると、こうです。
《もし改革を断行しようとする小泉を自民党がつぶそうとするならば、その前にこの小泉が自民党をぶっ壊します》
 お分かりですか? その後段だけが切り取られて独り歩きしたのであって、自分をつぶそうとするならそれに反撃するぞ、と言ったにすぎません。ところがこの誤解が小泉さんは破壊力がある、となったわけです。

 首相就任の決め手となった田中真紀子劇場

 小泉純一郎という〝変人〟政治家が内閣総理大臣まで上り詰める原動力となったのは、角栄さんの長女・田中真紀子さんの演説力が大きかったのです。
 当時の自民党総裁選挙の小渕恵三氏を〝凡人〟、梶山清六氏を〝軍人〟、小泉純一郎氏を〝変人〟……この言葉で、政治が面白くなった。
 この真紀子さんの演説力で、小泉さんは総理大臣まで成り上がったんです。
 その論功行賞で、小泉さんは真紀子さんを外務大臣に指名します。
 だが、真紀子さんは様々な問題を引き起こします。
 外務大臣室で、「(自分の)指輪がなくなった」と大騒ぎし、外務官僚たちを〝泥棒〟呼ばわり。そして、「指輪がないなら銀座まで行って、同じものを買ってこい。外務省には機密費があるだろう」と命令。だが、帰宅すると指輪は自宅にあった……。
 アメリカ同時多発テロ9・11のときも、米国政府が再テロに備えて臨時にホワイトハウスの場所を移したのをその場所をポロっと言ってしまった。これじゃあ、使えない大臣ですよね。
 たまりかねて小泉首相(当時)が田中真紀子大臣を更迭すると、支持率ががくんと下がった。
 でも、また支持率は回復する。そこで、小泉純一郎さんは念願だった郵政民営化に着手するわけですね。彼は、大学卒業後、英国に留学しています。が、本人も言う通り留学ではなく、遊学。ひたすらミュージカルを見続けて遊んでいた。そこに、父親の純也氏が急死して、帰ってこい、と。地盤を継いで、立候補しますが落選(全国の落選議員の中での最多得票数)します。そのとき、当時は中選挙区ですから、彼があてにした郵便局の団体は、彼のライバルを支援した。で、落選した。だから、そのときの恨みも、純一郎さんにはあるわけで。その恨みが郵政民営化につながる、という。
 小泉さんを知る人は、彼はそんな小さな人物ではない、というひともいます。
 政治家には珍しく裏表がない。逆に言えば薄っぺらいともいえるのですが、とにかく裏表がない。そのままのひとです。彼は政治を牛耳るのは予算・お金だ、とわかっていました。だから、大蔵族となり、予算の勉強をするのです。
 世の中を変えるための大蔵委員会でした。
 それから、彼の強みは政治献金を一切受けとらなかったことです。祖父が、小泉又次郎氏で戦前の逓信大臣で、父親は娘婿の純也氏。これだけの家系なら、地盤・看板・カバンのすべてが生まれた時からあり、お金の苦労はない。
 汚い金を受け取って、利益誘導、論功行賞……とは無縁だった訳です。
 その逆が、田中角栄さんで、お金がないと人は動かないから、犯罪まで犯してでも、大金を集めて、金脈をつくり、錬金術で、お金を集めてバラまいた。
 小泉・竹中の政権で格差が拡大したではないか!
 ということを言うひとがいます。確かに、それも一理そうなんです。が、格差はすでに橋本龍太郎政権の〝金融ビックバン〟政策頃には広がっていました。
 また、ジニ係数というのがあって、八十年代から格差は広がる一方です。
 小泉政権の格差社会を象徴したのが、二〇〇八年のリーマンショック後に出現した日比谷公園の「年越し派遣村」でしょう。また、プログラマやSEなどに限られていた派遣労働を製造業などにも認めたため、「派遣切り」による失業者があふれました。
 これは小泉(+竹中)政権の「負の遺産」といえると思います。
 官邸主導の政治は、「経済財政諮問会議」と「官僚人事」で行っていました。
 ハンセン病のときの裁判で、国の控訴断念を決断したのは立派でした。このことで、我々は「首相が決断すれば物事は動くんだ」と学習しました。
「郵政民営化で二十四万人の国家公務員が減る」と主張した郵政選挙ですが。確かに、郵便局員は国家公務員でしたが、税金で養われている訳でも何でもなく、郵便事業の収益から給料が出ていた。だから、「国の財政負担が減る」とは言わない。嘘ですから。だから、「国家公務員の数が減る」と主張したわけです。
 郵政選挙で、抵抗勢力に〝刺客〟………それも話題にはなりましたが。実際にその後、どうなったのか。「郵便局がコンビニのように便利になる」とか、なっていませんよね。
 北朝鮮外交は、最初だけ五人の拉致被害者が帰国したが。それっきり、うまくいかない。どうも、戦後補償で、大金を……みたいな話だったらしいのですが。
 金丸は最低一兆円、とかいっていて。じゃあ、北はそれ以上、もらえる、と踏んで五人をかえしたのか? だが、独裁政権に大金は与えず、で取りあえずは正しい。それでは交渉は動かないけどね。イラクへの自衛隊派遣も、「自衛隊が行くところが非武装地帯だ」みたいな、非論理的な屁理屈を通した。ああいうのを許したがゆえに、今も、国会で非論理的な答弁が続いていることになる。
 また、小泉元首相の「脱原発論」ですが、何故、そこに至るプロセスなどを示さないのか? ただ、反対のための反対のように「脱原発」「とにかく、首相が決断したら脱原発になるんだ」というだけでは、誰も動かない。
 脱原発に至るまでのプロセス、代替エネルギー論、様々な論説が必要だ。ただ、無邪気に「脱原発」というだけでは、悪口だけのグレタ・トゥーンベリ小娘と同じでしかない。
 「脱原発」に関しては、誰か別のひとが動かす必要があるだろう。
純一郎さんの息子の進次郎さんは、進次郎=グレタ=人寄せパンダ、みたいに言われるが、まだ実力がついていないのは事実だと思う。まだまだ進次郎さんはこれからだ。
 勉強が足りない。先の総裁選で、河野太郎氏を支持し、軍師気取りで石破氏とともに『小石河連合』……とか言われたが、小泉元首相の息子(しかも四世)だから注目をされるのであって、勘違いはしないことだ。タレントの女性と結婚するとか。
 そんな枝葉末節ではなく、もっと大局観をもってほしい。でないと、首相などまだまだ数十年先だ。親父の有名税で、天狗になっている場合ではない。
 しっかりしろ、進次郎くん! こういっておわりにしたい。
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