『甘噛み^^ 天才バカ板!』 byミッドナイト・蘭

ジュリアナから墓場まで・・・。森羅万象を語るブログです。
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[映画『プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂』を観た]

2010-05-30 13:35:42 | 物語の感想
☆全く以てステロタイプの物語だが、私は、その予定調和を楽しんだ。

 私は、これも一種の、アメリカ版時代劇だと思っているので、かような作品が、現代的な技術や雰囲気をまとってコンスタントに作られているアメリカを「なかなか健全な国だなぁ」などとも思うのだ。

 何も、斬新なことばかりやるのが作品っちゅうものでもない。

 で、その中にあって、これまで、あまた繰り返されてきた展開としては、この作品、かなりきっちりとまとめてある作品だった。

 普通なら、そこに、技術面が優れたが、脚本の安易さが見えるなどと、作品の品質の一進一退が随所に見られるものだが、この作品はそつなく作られ、なおかつ、新しい点も多々見られた。

   ◇

 ペルシャの町で、横暴な兵士に絡まれた親友を救う主人公ダスタン、その勇気と正義と友情に厚い姿を偶然にも見かけた国王が、二人の王子がいるにもかかわらず、ダスタンを三男として養子に迎える。

 そんな古き良き時代を髣髴とさせる美談は、あたかも「毛利元就の三本の矢」の逸話のごとき、国王の兄弟愛を目指す志向に至る。

 いちおネタバレになるので記さないが、兄弟愛としてのテーマは、この作品内で、二つの方向性を示す。

 ダスタンは、とある都を占領する過程で、策略にはまり、都のお姫様と国を追われる。

 で、残った二人の王子の追跡を受ける。

 追われつつ、旅を続け、お姫様と心を通わせつつ、自分を嵌めた、国を傾けた敵に戦いを挑む。

 姫のいた都には、神との契約の品<時間の砂>があり、それがクライマックスで効果を生む。

 ダスタンは、逃走の中で、兄である二人の王子と戦うが、二人の王子はそれぞれ死んでゆく、だが、その前に、二人の王子は、ダスタンの無実を理解して世を去る。

 こういうトコがうまいのである。

 最終的に、<時間の砂>効果で、ダスタンは、二人の王子と再会を果たす。

 しかし、真相を理解されず、死別していたとしたら、再会のエピローグは、なんか解せない展開になっただろう。

 手塚治虫は、このような「時間逆転オチ」を何度もその作品で使用したが、そのオチを使用するときは、いつも「打ち切り」みたいなときに使うので、完成度が著しく悪かった。

 例えば、この作品でならば、ダスタンが憎まれたまま、二人の王子と死別するような展開にするのだ。

 となると、時間が遡って、あたかもハッピーエンドを迎えても、見ている者は、「兄弟愛」のテーマの成就が「時間逆転」で無理矢理なされたに過ぎないことが分かり、作品に解せなさ感がつきまとうのである。

 この作品は、三人の王子の「兄弟愛」は見事に決まり、だが、もう一つの「兄弟愛」が残念な結果を迎え、兄弟と言うものの愛憎の表裏を見事に描いている。

   ◇

 この作品の主人公は、かなりの好青年である。

 そして、お姫様は、使命感はあれど、お嬢様育ちという設定である。

 ディズニーらしく、あまり残虐なアクション(バトル)はなく、ダッタンの動きはユーモラスな展開を示す。

 お姫様は、これまでの自分の王宮の生活と、ダッタンとの逃避行の落差に戸惑う。

 この物語はステロタイプだが、もし、本当に、「観ている者が心地良いと思うステロタイプ」を目指すならば、

 ダッタンは「三枚目」の個性が付加されるべきだった。

 ユーモラスなアクションや、例えば逃走の過程で美女の集うハーレムに迷い込むのだが、そこが好青年の主人公では効果を生まないのである。

 また、お姫様が、やや分別があり過ぎて、砂漠を旅するときや、小悪党に囚われて召使みたいに使役されるときの面白みがない。

 「三枚目」と「高飛車お嬢様」の逃避行ならば、心地良きワンパターンを堪能できたはずだ。

 ただ、クライマックス…、主人公だけが時間を逆行し、全てを知り得た立場で、お姫様と出会うシーンの、お姫様の「ああ、この人、<時間の砂>を使って、冒険を繰り広げてきたのね・・・」と言う表情が実に良かった。

 テーマ「恋愛」の成就である。

 この女優、20年ほど前に、当時、人気絶頂だったデミ・ムーアの似てるけどいまいちなアンディ・マクダウェルみたいな顔をしているのだが、

 物語の経過とともに(それが物語の良さだが)、しだいに可愛く見えてくる。

 ここぞと言うときには、目に涙を浮かべる演技が素晴らしい。

 私も、エピローグで妙に感動させられた^^

   ◇

 この作品独自の面白さも随所に見られたので面白かった。

 小悪党に使われているナイフ使いの黒人がいるのだが、こいつは、後にダスタンの仲間となり、敵と重要な決闘をする。

 その男の義理堅さや正義感と言うのは、脚本の随所で垣間見られ、実に良い。

 悪の親玉が使う「ハッサンシン」とか言う忍者部隊みたいのがいるのだが、こいつらが蛇を使ったり、ワイヤーのような鞭や手裏剣状を使用したりと面白い。

 それを鮮明にリアルに見せる映像技術がいいんだよね。

 ナイフ使いなど、『男塾』の三面拳の一人みたいだし、「ハッサンシン」たちも『男塾』の格闘家みたいだし、ジェリー・ブラッカイマーが『男塾』を原作に忠実に作ったら、永遠の名作になるだろう^^

                                        (2010/05/30)
コメント (2)
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