ならなしとり

外来生物問題を主に扱います。ときどきその他のことも。このブログでは基本的に名無しさんは相手にしませんのであしからず。

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熊森のドングリ運びに憤る人たちへ

2010-12-07 01:10:35 | 熊森
今回の記事は自戒も込めて書いてます。先日、熊森がヘリコプターを使ってドングリを散布しそれがテレビで好意的に紹介されました。これに対して憤る保全関係の方は多いと思います。僕もその一人です。
これについての批判はいろいろあると思います。獣害的な観点、他の生物との関係性という観点などなどです。今回は遺伝的多様性からの批判について考えてみます。
熊森の行為は外来生物問題を作り上げ、遺伝子撹乱や病害虫の伝播などのリスクを含むのは保全生態学を学んだ人間にとってはだれの目にも明らかです。許せることではないし、専門家を名乗る人間、組織がやっていいことでもありません。
ただ、熊森のこのような行動が受け入れられてしまう背景には保全生態学者をはじめとする保全にかかわる人間が遺伝的多様性の重要性についてうまく伝えられていないせいもあるのではと思ってしまうのです。どのレベルまでなら理解されるのか少し考えてみましょう。
「遺伝的多様性は病気などからの影響を防ぐのに重要です」これくらいはまぁ僕の観測内では理解されているように思います。では次。
「遺伝的多様性は個体群間の個体の移動で維持されています」
これはメタ個体群の概念を理解している人には当たり前の話ですね。個体群間で個体の移動があるからこそ、孤立化して近交弱勢が起こらないようになっています。では、次の話と合わせると?
「周りから隔絶された個体群では近交弱勢が起こりやすくなります」
こちらが知られ過ぎて、“そうなったら大変だから他所から個体を持ってきて多様性を回復させよう”に安易につながっているのではないでしょうか?
最後にこれ。
「遺伝的多様性の独自性、地域性を守りましょう」これが一番厄介ではないかと個人的に考えています。これ1つを大きな目標として掲げる分にはだれも反対しないでしょう。では個別の保全のケースでは?タイワンザル、渓流魚、その他もろもろ。いまだに放流事業に天皇陛下を呼ぶ様な状況下できちんと理解されている人は少ないのではないでしょうか。

個人的には交雑することでヘテロ接合が増えることが遺伝的多様性が増すと誤解されている気がしますが・・・。ヘテロ接合は指標であって、遺伝的多様性のすべてではないんですが・・・。正確に言えば、もともとどれくらい持っていたかが重要で、持ち込んで増やせばいいという話ではありません。
熊森に届かせる必要があるかはともかく、広く受け入れられる説明を作って今回の熊森のような行為がメディアで好意的に取り上げられることを減らす。その必要性はあるのではないでしょうか。
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7 コメント

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遺伝的な地域性 (さすけ)
2010-12-07 09:58:00
遺伝的な地域性を人為的に薄めてしまうことは、私は進化のチャンスを奪ってしまうことだと考えています。

たとえば、紀伊半島のクマは他の地域と遺伝的な違いが大きいようですが、今の状態を維持していけば、もしかしたら50万年後に「キシュウグマ」という新しい種ができるかもしれません。

ホッキョクグマは北米のヒグマの1グループから派生した種ですが(つまり、北米のそのグループは北海道のヒグマよりもホッキョクグマのほうが遺伝的に近い)、もし過去に北海道のヒグマをそのグループの生息地に人為的に移動させたりしたら、ホッキョクグマという種は誕生しなかったかもしれません。
(人類到達以前の話なので、もちろんあり得ませんが)


現在の種を絶滅させてはいけないとと同様に、未来の種を絶滅(派生するチャンスを奪う)させてはいけないはずです。
メディアの教育 (魚屋)
2010-12-08 17:52:57
こんにちは。遺伝的多様性は梨さんの言われるようにもともとどれくらい持っていたかが重要でそれは種、個体群によって異なるはず。個体数が少なくても近交弱勢を示さない種、個体群もあると思います。

メディアについていえば、経験的に生き物ネタを担当している記者はたいてい能力が低く、なんでも単純にものをとらえ、美談、感情論に訴える者が多いように思います。かれらの多くが空いた紙面時間を埋めるための予備記事を書くために取材をしていました。要はその程度のネタしか担当させてもらえないような人。
ですが、個別に仲良くなり、少しずつメディアへ教育している友人たちもいます。私の地方ではその友人らのおかげで淡水魚に関する限りまともな記事が多くなってきたようにも思います。
酔った記事、ニュースに憤慨しメディアと対立するのではなく、温かい目で時間をかけて取り込んでいくことが大切だなと最近は思います。アマチュアの私はそんな暇はありませんが。
みなさま (梨(管理人))
2010-12-08 22:08:31
さすけさん
確かにその通りで、異なる個体群を混ぜるということは種分化を妨げることになります。じゃあそれをどうやって説明すればわかってもらえるのかを考える段階に来ているのではないかと思います。「進化のチャンスを奪います」と言って通じる人がどれくらいいるのか、どの層に語りかけるのかを考える必要があるのではないでしょうか。

魚屋さん
メディアをバカにするのって簡単ですよね。僕も中日新聞とかは見なかったことにしたいくらいです。だけど現実には彼らとも折り合っていかなければならないわけで、ご友人の行動には敬意を表します。
伝えられてないというか (クマクマ)
2010-12-10 02:06:12
自分たちも正しいと熊森のトップ二人が本部で10~20代を洗脳して送り出しているのが問題だと思います。
トップ二人とは ("ね")
2010-12-10 07:31:30
クマクマさん
トップ二人とはどなた達のことでしょうか。
一人は会長さんだと思いますが。
トップ二人 (クマクマ)
2010-12-10 17:10:33
表にはあまりでてきていないですが会長の夫ですよ。
Unknown ("ね")
2010-12-10 23:33:19
くまくまさん
いわゆる「応援団長」さんですね。
某所では役人に芸風奪われて拗ね拗ねだったご様子だったようで。
さて、
熊森季刊紙をちら見する機会があったのですが、かなり閉鎖系の集団ですね。オブラートするように外部の人間との交流が挿入されていますが。
季刊紙では学生たちが何やらいろいろ部会などを作って活動をしていたようですが、最近の学生は就職すると遠くへ行ってしまうので定着していないようですね。支部があちこちに出来るのはそのせいかしら。
愛知県支部は本部と運営方針が合わなかったので解散したようですね。本来の森林の回復活動を目指していたのが解散理由とか。なんか本末転倒のような。
では。

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