ネコ好きSENの洋画ファン

ワン5ニャン9と共棲。趣味は洋画と絵画。ライフワークは動物・野生動物の保護救済、金融投資。保護シェルターの設立をめざす

悲しみが立ち込める瞬間(とき)

2018-04-19 14:06:28 | ネコ大好き★

 

暖かい午後となりました。

 

おかげで集中できず、ストロングブラックなコーヒーを飲んでもあくびばかり。

 

 

 

そんな午後は

過ぎ去った日々に想いを馳せる……

なんて。

 

 

まあ。

ふと、

なんの脈絡もないまま

ふっと。

想いが湧き上がってくるときがあります。

 

いいようのない想いが。。。

 

 

 

 

常に心の底にある感情

けっして変わることなく

常にどこかさらさらと流れているみたいな

 

 

そんな想いが

何かしらのきっかけで

ふわっとわきあがり

しばし

包まれることがあります。

 

 

みなさんにもそんな感情がありますか?

 

 

 

ときおり

忘れられない想い出のひとつとして

心に刻まれた、決して色あせることのない場面が

よみがってきます。

 

  

 

 

 

それで、

若いころですね。

学生だった頃

中原中也の―――

 

 

いや、中原中也が特に好きだった、というわけではありませんが

 

 

ある日、

中也の詩がラジオから流れてきたんですね。

(ラジオ、なんて古いですね。

 

 

NHKラジオでジャイアンツ戦を流しながら、

おれは書き物に熱中していて、

試合が終わったことも意識として気づかず、

続いての番組だったのでしょう、「詩の朗読」が始まったというわけです。

 

 

おれは本当に集中していたのですが

その朗読の

1行目から

 

どういうわけか

なんとも不思議なことに

今までそんなことはなかったし、

その後も一度もないことですが

 

 

その1行目から心がつかまれ

はっとなって

前かがみだった姿勢が

椅子の背に背中を戻し

時間が止まったかのような感覚、

 

そして自分の耳が、

全身が

その朗読されるひとつひとつの語らいに

胸が締め付けられていくのを感じました。

 

 詩に没入した、というか

……

 

 

 

 

その詩がこちらです。

 

 

 

 

月夜の浜辺

 

 

月夜の晩にぼたんがひとつ

波打際に落ちていた

 

それを拾って役立てようと

ぼくは思ったわけでもないが

 

なぜだかそれを捨てるに忍びず

ぼくはそれをたもとに入れた

 

月夜の晩にぼたんがひとつ

波打際に落ちていた

 

それを拾って役立てようと

ぼくは思ったわけでもないが

 

月に向ってそれは抛れず

なみに向ってそれは抛れず

ぼくはそれふところに入れた

 

月夜の晩にひろったぼたんは

指先に沁み心に沁みた

 

月夜の晩にひろったぼたんは

どうしてそれが捨てられようか

 

 

 

 

 

え、これ?

大した詩でもないのになんで??

 

って

思われたでしょう。

 

なのに

どうしてか

ぼくの胸は締め付けられたのです。

すごくすごく。

 

哀しみ色に……

 

 

たぶんぼくの

胸のずっと奥にある

そっと流れている想いみたいなものに

触れたのだと思います。

 

 

この感情、

深い哀しみの感情。

 

 

 

それで

ぼくは、アビィが死んだことにまだ立ち直れなくて

 

その後、他のネコたちとめぐりあって

楽しく暮らし、

悲しい場面にも立ち会いましたが

そうやって日々は流れていくのですが

 

アビィのことは

記憶は変わらず

悲しい想い出はそのままに

きっと

一生立ち直れないのだろうと思います。

 

 

 

 

それが

 

そのとき

あのとき、

 

アビィのお葬式から数日たって

まあ、日々が流れていく中で

 

あるとき、

何気なく入った兄の部屋

その床の

隅のほうに、

数枚の枯葉が落ちていました。

 

枯葉が数枚

 

 

ところどころ端が砕けた古くなった枯葉でした。

 

他は掃除してあるのに

何でここに枯葉が落ちているのだろうと

ぼくは棄てるために、その枯葉を拾い上げようとしました。

 

 

すると兄が

兄が

ソファにいた兄が

枯葉をそのままにしておいてくれ、と言います。

 

 

それは

あの子が置いていったものだから

 

あの子が元気よく庭を走り回って

この部屋に入ってきて

 

その葉っぱを身体につけて

そこに寝そべっていたから

 

そこがお気に入りの場所だったらしく

いつも寝そべっていたから

 

あの子が運んだものだから

そのまま

置いといてくれ

 

 

 

胸が締め付けられます。

少しも薄れることのない悲しみに包まれます。

 

心から消えないもの。

 

中原中也のあの詩は

そのときの

ぼくの想いに

まったく同じだったと

 

どうしてそれが捨てられようか、と。

 

ほんとうに

ほんとうに

 

悲しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 



最新の画像もっと見る

コメントを投稿