インドで作家業

ベンガル湾と犀川をこよなく愛するプリー⇔金沢往還作家、李耶シャンカール(モハンティ三智江)の公式ブログ

色白信仰

2007-11-29 23:12:58 | 美容&ファッション
肌の色が一般に褐色系のインド人は、皮膚の色に対して一種強迫観念に
も等しいこだわりを持っている。色が白い方が高貴な上層階級とする昔
ながらのカーストの慣習も染み付いているせいと思うのだが、石鹸や化
粧品は色白、フェアになることをキャッチフレーズにした製品が大量に
出回り、人気を博している、
とくに女性の場合、色白は美人の一条件でもあるので、率先してフェア
クリーム&石鹸を用い、浅黒い肌にアンマッチな真っ白のファウンデー
ションやしろいをはたいて、涙ぐましい努力を重ねている。何せ、新聞
の結婚広告にも、カーストは無論だが、色白の人はこれ見よがしに、必
ず「フェア」と誇らしげに掲げるほどなのだ。

                 

最近の若い男性は、うちの息子はじめ、女性に負けないくらいおしゃれ
で、石鹸、シャンプーは無論、クリーム、香水まで良質の製品を好み、
色白になる触れ込みのものが人気。ところで、効果のほどだが、なにが
しかはあるようで、現実に薄褐色気味だった息子の肌色が幾分白めに
なったこともあった。が、なんといっても、気候という自然の効果に勝
ち目はなく、ダージリンの寄宿舎に通いだした頃から、見違えるように
白くなり、外見的には日本の若者とまったく変わらないようになった。
男の子は浅黒い方がたくましいといわれるけど、まさしくその意味では
うちの子なんかいい案配になって、親バカの私はにんまり。
カンチェンジェンガの雪山が校舎から仰げる絶好の学習環境で四年学ん
だだけに、夏でも涼しい山間気候が肌に及ぼした影響は実に実に多大で
あった。ちなみに、わがインド人夫も、日本に三ヶ月滞在後戻ったら、
友人連中から、おまえ、少し白くなったんじゃないかと驚かれたくらい
で、欧米などに長く住み着いているインド人の肌はその地の土壌に染
まりく、脱色したような肌色に変わっている。がゆえに、生まれたとき
から海外に住んでいる二世など、真っ白。

                        

無論、国内にも少数派とはいえ色白の人はいて、とりわけイスラム女性
は欧米人に近い肌白さ。もちろん、ヒンドゥ教徒のなかにも色の白い人
はいて、周りが褐色だと、やはり目立つ。この間、甥の結婚式で、わが
親族と旧交を温める機会があったが、夫の兄の息子であるもう一人の甥
のお嫁さんが肌白なのがひときわ目を惹いた。黒地に金ラメの晴れ着サ
リーをまとっていたので、余計に白さが際立つ。五歳になる丸々太った
可憐な坊やも、真っ白。うちの亭主は褐色めなので、同じ一族でも、突
然変異のように白いのがいたかと思うと、残りは黒めだったりとさまざ
まで、肌色は個々人によって微妙に異なる。ヨガインストラクター、ビ
ティカ&ビショウロダ姉妹も、姉は黒目の個性的な顔立ちでがっしりし
た体格だったのと対照的に、妹は肌白のスリムな可憐美人と、姉妹でも
まったく別人のようだったことを思い出す。

あと、ルックスを売り物にする女優やモデルはおおむね、色白と相場が
決まっている。売れてくるにしたがって、当初黒めで野暮ったかった容
貌がみるみるうちに垢抜けて色白になるのも不思議。人気という魔術の
なせる技だろうか。化粧品の効き目も無論あると思うが、往年のトップ
女優、レカなど、初期は肌黒のセクシーさが売り物だったのが、見違え
るように白くなって、典型的色白美人女優に変身したものだった。
最近、アジア一セクシー女優賞を獲得したビパシャ・バスは珍しく、褐
色の肉感ボディが売り物、ライバルで抜けるような色白のカリーナ・カ
プールが陰で、彼女のことをカーリービラリ(黒猫)と呼んで嘲笑して
いたゴシップは有名。ミスワールド出身の国際派超美人女優、アイシュ
ワルヤ・ライは肌が真っ白のみならず、瞳が透き通ったエメラルド色
で、並みのインド人とは思えないたぐいまれなる美形。

                

かくいう日本人の私は、雪国北陸出身のこともあって、肌は白め。色
白は七難隠すというけど、インドではとくにちやほやされる。ヨガセ
ンターの若い女性たちからも、お肌を触られたりしてどうしてそんな
にソフトで白いのと羨ましがられたほど。年齢では勝てないが、肌の
白さでは私もまだ捨てたもんじゃないなとにたにた。
肌色を決定する要因として先に気候をあげたが、彼らはたまたま亜熱
帯国インドに生まれ、容赦なく照りつける日差しの下で育ったがゆえ
に黒くなってしまっただけのことなのである。それが幾世代にもわ
たって続いてきたので、メラニン色素も自然強化され、生まれたとき
から褐色、これに加えること苛酷な風土で二重に日焼けするから、自
然真っ黒になってしまうのだ。ちなみに、私は移住以降、日中は外出
せずお肌を守ってきたこともあって、若い頃の透き通るようなとまで
はいかずとも、そこそこ色白を保っているのである。これが無頓着に
炎天下毎日外出してみい、二十年後の今はきっと、私とて、インド人
肌化していたことは間違いない。保守的な当地では、女性はあまり外
出せずもっぱら家内にこもっているのだが、私も現地の慣習にならっ
て深窓の奥様でいたことも今となっては(窮屈だなあと散々ぼやいて
いたのだが)、幸いしたといえそうだ。

自然条件によって左右される不可抗力の肌色とはいえ、黒めの人が、
白めの人に劣等感を抱いているのは間違いなく、内に潜むコンプレッ
クスからフェアソープ&クリームへと走るのだ。
今後も、化粧品業界は、色白を謳い文句にした製品が乱立、競争が激
化しそうである。

                        


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