イラク開戦後
死者65万人超
大学調査で推定
【ロンドン=岡崎衆史】
英医学専門誌『ランセット』(電子版)は11日、イラク戦争開始後、銃撃や暴力、健康悪化など戦争にかかわるイラク人死者が人口の約2・5%に当たる65万人を超えたと推定する研究論文を発表しました。
論文は、米国のジョンズ・ホプキンズ大学ブルームバーグ公衆衛生学部とイラクのムスタンシリア大学の共同調査によるものです。
論文は、戦争前の死亡率を基に算出した数と比べ、イラク戦争開始2日前の2003年3月十18日から06年6月末までの死亡者は、「65万4965人多かった」と指摘。このうち、60万1027人が暴力行為によるもので、その56%が銃撃などで死亡したとしました。
調査は、イラクの47集落で1849世帯1万2801人を対象に実施。02年1月から06年6月までを対象とした調査では、人口1000人当たりの死亡者は戦争前が年間5.5人だったのに対して、開戦後は同13.3人に急増していました。ここで得られた結果から、イラク全土での死亡者数を推測しました。
論文はイラク紛争について、長期化していることと、極めて多数の人がその否定的影響を受けていることを挙げ、「21世紀の最も破壊的な国際的紛争」と指摘。被害状況をより明確にするために、独立の国際機関による調査の実施を求めました。
『ランセット』誌は04年10月、今回の論文と同じチームによるイラク戦争開始後のイラク人死者は約10万人と推計する論文を発表し、イラク戦争被害を過小評価していた人々に衝撃を与えました。今回の論文は同論文の内容を改定することが目的でした。