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坡州環境運動連合のノ・ヒョンギ共同議長は「DMZの保全が意味を持つには、4キロメートルの狭い帯ではなく、民統線区域まで連結して保全しなければならない。

2019-11-06 | 東アジアの文化と歴史を学ぶ会

[ルポ]冷戦の贈りもの“4873種の動植物の楽園”…

乱開発による環境破壊を憂慮

登録:2019-11-05 18:29 修正:2019-11-06 09:05

京畿道-ハンギョレ共同企画 
[DMZ現場報告書](3)天恵の生態環境 
坡州~高城248キロメートル…国土の1.6%に該当 
人の手が入らない“生命と生態の空間” 
開発旋風が吹き生態系破壊の憂慮高まる 
民間人出入り統制線内の国有地、湿地保護地域への指定から

 
冬の渡り鳥である雁が、京畿道金浦の漢江河口の鉄条網の上を飛んでいる=パク・ギョンマン記者//ハンギョレ新聞社

 朝鮮半島の腰部を横切る非武装地帯(DMZ)は、戦争と分断が生んだ悲劇の地だが、自然にとっては祝福の地だ。

 分断後の66年間、南北が鉄条網で厳重に囲い対立する間、人の手が入らない自然は世界で最も厳重な“重武装地帯”を平和と生命の空間に変えた。

 京畿道坡州(パジュ)から江原道高城(コソン)まで、248キロメートルに及ぶ非武装地帯の生態軸は、丘陵、河川、農耕地、湿地が広がる西部(坡州、漣川(ヨンチョン))と山岳地帯の東部(華川(ファチョン)、楊口(ヤング)、麟蹄(インジェ)、高城(コソン))、その中間で生態通路の役割を果たす中部(鉄原(チョルウォン))に分かれる。

 山岳地帯、湿地、河川、平野など、生態系をあまねく備えた非武装地帯は、国土全体面積の1.6%に過ぎないが、絶滅危惧種91種(41%)を含む野生生物4873種(20%)が生きる動植物の楽園になった。

 特に、臨津江(イムジンガン)と泗川江(サチョンガン)、沙彌川(サミチョン)、漢灘江(ハンタンガン)、駅谷川(ヨッコクチョン)、鉄原(チョルウォン)平野などの湿地と農耕地が発達した中西部地域は世界的保護種であるタンチョウヅル、マナヅルの最も安定した生息地として国際社会の注目を集めている。

 山林地域の東部非武装地帯一円は、ツキノワグマをはじめ山羊、ジャコウジカ、ヤマネコ、カワウソ、テン、モモンガなど絶滅危機野生生物の楽園だ。

 非武装地帯の優れた生態環境は、分断が贈ってくれた思いがけないプレゼントであるわけだ。だが、最近の南北和解ムードに乗って、民間人出入り統制線(民統線)の後退、道路開設などの開発構想があちこちで頭をもたげ、生態系破壊の憂慮とともに地域住民の暮らしまで脅かされている。

 
京畿道坡州市郡内面亭子里の民間人統制区域の農耕地で発見された絶滅危惧種1級のスウォンアマガエル=坡州環境運動連合提供//ハンギョレ新聞社

西部DMZ生態系の核心“湿地と川”

 西部非武装地帯一円の生態系の核心は、臨津江と畑だ。河口が開いている臨津江・漢江(ハンガン)では満ち潮と引き潮が出入りして山南(サンナム)湿地、恭陵川(コンヌンチョン)河口湿地、城東里(ソンドンリ)湿地、長湍(チャンダン)湿地、文山(ムンサン)湿地、臨津閣(イムジンガク)湿地、草坪島(チョピョンド)湿地など、多くの湿地を作った。湿地は背後の畑や水溜り、自然河川と共に野生生物の生息地になっている。

 坡州環境運動連合が2012年から毎週1回ずつ昼間に調査した結果、臨津江河口流域で鳥類、昆虫、魚類、哺乳類、両生・は虫類など合計47種の絶滅危惧種が確認された。

 臨津江河口から沙彌川を経て鉄原、駅谷川に至るまでの非武装地帯には、かつては畑であり自然湿地に変わった土地が広がっている。自然湿地は畑につながり、自然河川の原形をとどめた臨津江につながる。

 特に臨津江と民統線の周辺の畑は、タンチョウヅル、マナヅル、クロツラヘラサギ、オジロワシ、ヒクイナ、ヒシクイなどの絶滅危機鳥類が餌場、産卵場、羽休めの場として活用する重要な湿地だ。絶滅危惧種のスウォンアマガエルやソウルポンドガエルをはじめ、ヤマネコ、アオダイショウ、ジムグリガエル、タガメ、ゲンゴロウなどが暮らす所も畑だ。

 だが、政府はコメの生産量が多いという理由で、畑を減らす政策を展開しているうえに、畑を生態・自然度(自然環境を生態的価値などにより等級化して作成したもの)3等級地に分類し、鉄原・坡州の多くの農耕地が開発圧力を受けている。

 そのため、環境運動連合は先月、坡州・漣川・鉄原地域の農民・環境団体と共に「民統線内の国公有地・農耕地から湿地保護地域に指定しよう」という内容の「民統線内畑湿地保全方案」を政府に政策提案した。保護対象地には、坡州、臨津江の馬井里(マジョンリ)、沙鶩里(サモンリ)、巨谷里(コゴンリ)の河川敷農耕地▽坡州、長湍半島農耕地と葦湿地▽漣川、臨津江の郡南(クンナム)洪水調節池上流河川敷▽鉄原平野内の地雷埋設地域を挙げた。環境運動連合は、この他にも不在地主の所有地買い上げ予算策定▽農民所有地支援策拡大▽畑作物転換支援制廃止▽生物多様性管理契約の予算・対象を拡大▽農水路セメント化禁止を提案した。

 環境部は2006年、金浦・高陽(コヤン)・坡州の漢江河口を湿地保護地域に指定して管理しているもの、臨津江河口は保護地域に含めていない。

 
       DMZ平和地帯化、生態系の現状=資料:環境部、国立生態院、文化財庁、国防部//ハンギョレ新聞社

全世界のタンチョウヅルの半分が訪れる漣川・鉄原

 先月30日午後、京畿道漣川郡の中面三串里(チュンミョン・サムゴンリ)の臨津江流域では、「冬の伝令」である雁数十羽が群れをなして飛んだ。5~6年前まで稲作をしていた85万平方メートル規模の村の前の洪水跡は、郡南ダム竣工後に韓国水資源公社が営農を禁止したせいで、アレチウリやカエデブタ草などの有害植物で覆われた。

 坡州や漣川より刈り入れが早い鉄原には、先月17日、マナヅル32羽が東松邑(トンソンウプ)、江山里(カンサンリ)野原を訪れた。雁類1万7千羽も鉄原に無事到着した。

 通常、10月末から3月まで朝鮮半島に留まるタンチョウヅル類は、ほとんどが鉄原と漣川の非武装地帯一円で越冬する。昨年2月、漣川ではタンチョウヅル374羽、マナヅル387羽、シベリアシロタンチョウ2羽が確認された。鉄原では今年1月の調査で、合計5492羽のタンチョウヅルとマナヅルが観測された。

 世界自然保全連盟(IUCN)が今年、野生のタンチョウヅル個体数を1830羽と推定したが、その半分以上が韓国の非武装地帯で越冬するわけだ。

 鉄原が世界最大のタンチョウヅルの越冬地になったのは、1万ヘクタールを超える農地の半分以上が民統線内にあり、タンチョウヅルが暮らしやすい環境を備えているためだ。ここに鉄原だけの独特の生態系である壺型泉の“泉筒”が、野原のあちこちにあり、漢灘江、駅谷川、大橋川(テギョチョン)、土橋(トギョ)貯水池などタンチョウヅルの安全な餌場と寝場所が確保できるためだ。

 だが最近、民統線の解除と乱開発で、タンチョウヅルの生息地が大きく脅かされており、地域住民は強く憂慮している。「渡り鳥の村」と呼ばれる東松邑陽地里は、2012年に民統線から解除された後、畜舎が大量に作られ、タンチョウヅルが棲息できない環境に変わっている。鉄原郡では2016年から昨年までの3年間に合計18万平方メートル規模の企業型畜舎78棟ができた。

 
世界最大のタンチョウヅルの越冬地である江原道鉄原郡漢灘江の川辺でタンチョウヅルが越冬している=パク・ギョンマン記者//ハンギョレ新聞社

 また、軍部隊が撤収した跡に太陽光発電施設が乱立し、地域住民が「地域の特性を考慮しない乱開発の横暴」として反発している。鉄原で最近許可された太陽光発電事業は400件を超える。

 「タンチョウヅルと農業を営む人々」のチェ・ジョンス代表は「民統線が解けて畜舎と太陽光施設ができ、タンチョウヅルのみならずよく見かけられたヤマネコやジムグリガエル、ヒキガエルなども3年間でほとんどいなくなった。民統線が解除されれば開発を防ぐことはできないので、農民とタンチョウヅルが共生できる土地を政府があらかじめ確保しておかなければならない」と話した。

 漣川地域も、臨津江上流の早瀬と非武装地帯一円に湿地、餌場の鳩麦畑が多く、天恵のタンチョウヅル生息地に挙げられる。将軍早瀬は、臨津江水路の中で島のようになり、天敵を避けられる最適な寝場所だ。将軍早瀬より500メートル余り上流にある氷崖早瀬は20~30センチの浅い早瀬で、冬も凍らずタンチョウヅルが魚やカワニナを獲って食べることができる。

 だが、水資源公社が洪水調節池にした郡南ダムは、冬季の湛水のために将軍早瀬が水に浸るなど、タンチョウヅルの生息環境が悪化している。弱り目にたたり目で、三串里の民統線監視警戒所が年内に横山里(フェンサンリ)側に3キロメートルほど北上する予定なので、タンチョウヅル生息地の保護にとって非常事態になった。漣川臨津江市民ネットワーク(YICN)のイ・ソクウ共同代表は「保護対策なしに警戒所を移転する場合、タンチョウヅルの寝場所である将軍早瀬と氷崖早瀬が車と人波に露出してしまうだろう」と懸念した。

 漣川郡関係者は「観光客の便宜のために警戒所を移転しても、既存の三串里警戒所を存続させ、夜間の出入りを統制する案を検討中」と話した。

 
マナヅルのつがいが昨年10月、刈り入れが終わった京畿道坡州市の民間人統制区域内の農耕地で餌を食べている=パク・ギョンマン記者//ハンギョレ新聞社

冷戦が保護した生態系、和解ムードで毀損の危機に

 非武装地帯一円は、最近の南北和解ムードに乗って「生態・平和・観光活性化」「DMZ生態、文化、観光ベルト開発」 「南北鉄道・道路連結現代化事業」などの各種開発計画があふれている。行政安全部は、接境地域発展総合計画で2030年までに合計13兆2千億ウォン(約1.2兆円)の投資を準備している。

 すでに観光資源開発、道路開設、ビニールハウス・畜舎新築などで、一部地域で絶滅危惧種の生息地が破壊され、住民の暮らしまで脅かされている状況で、こうした開発計画は生態環境を一層悪化させると懸念される。韓国環境政策・評価研究院(KEI)のキム・チュンギ自然環境研究室長は先月19日、京畿道が主催したDMZフォーラムに参加して「一度損傷した生態系は、回復に数十~数百年の時間が必要だ。生命と平和という名で取り繕ったとしても、原始の自然生態系を破壊しかねないいかなる利用・開発も許可してはならない」と強調した。

 特に、国土交通部が推進中の文山-都羅山(トラサン)高速道路は、長湍半島と白蓮里(ペクヨンリ)などの野原を貫通するように設計されており、住民の反発が強い。長湍半島は文在寅(ムン・ジェイン)政府の100大国政課題に含まれた「統一経済特区」で選挙の度に公約として登場する「第2の開城(ケソン)工業団地」の有力候補地に選ばれている。環境団体は、長湍半島が文山地域の洪水予防のための貯水池で、学校給食米として納品される有機米の生産地であり、絶滅危惧動植物の生息地という理由で開発に反対している。坡州環境運動連合のノ・ヒョンギ共同議長は「DMZの保全が意味を持つには、4キロメートルの狭い帯ではなく、民統線区域まで連結して保全しなければならない。今、民統線区域で至急にすべきことは開発でなく生態調査、文化財の指標調査だ」と話した。

パク・ギョンマン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

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