mia's看護日誌

みあず かんごにっし
看護の原点を追い求めています

円満退職のススメ (2/2)

2015-01-20 | 一般
前回からの続きです

さて、退職理由と同じくらい重要なのが、「退職時期」でしょう。

退職の日をいつ、どの時期を選ぶかに、
その人の人間性や考え方が表れることがあります。

もちろん、本人の意思とは関係なく
家族の都合や健康の理由等で退職する場合は別ですが、
就職によっては、自分で時期を決定して辞めた場合、
転職先に、どの時期で退職したかをチェックされるケースもあります。

これは、日本の社会では、年度末退職が基本であるという考えが一般的であり、
中途退職はよいイメージを持たれず、
ワケありというレッテルを貼られることもあるようです。

なので、今まさにこの時期に退職を申し出るナースは
年度末の締め日での退職を希望する、優秀な人材が多いのです。

一方で、退職時期として人気があるのは、夏や冬のボーナスをもらった直後。
例えば7月末や12月末で辞める人は
ボーナスの支給を一つの区切りとする考えで、
例え本人にそんなつもりはなくても
「もらうものはきっちりもらって辞めるんだな」と思われます。

ズル賢い、がめつい、腹黒いという印象を持たれているかも知れません。

また、年度の途中で辞めていく人は、不満に耐えきれないケースが多いです。
何事にも不満を持ちやすく、こらえ性のない人は
時期に関係なく、退職手続きをしてから最短で認められる月に辞めていきます。

これらはあくまで他人からみた勝手なイメージですが、
社会的にはそう判断されてしまうことも多々あるのです。

退職を決めた場合、いつ上司に話すかも大きなポイントですが、
たいていの職場は、就業規則により退職の申し出時期について定められています。

だいたい1ヶ月~3ヶ月という場合が多いとは思いますが、
中には半年前という職場もあります。

基本的には、この就業規則に従わなくてはなりません。

しかし、ナースという職業は引き止めに会いやすいもの。

相手はなかなか手強いもので、引き止めのノウハウを身に付けているはずですから
隙や迷いを見せると、そこを集中的に突つかれてうまく丸め込まれてしいます。

なので、退職の申し出には強い意思を持ち、凜とした態度で望みたいところです。

ですが困ったことに、こちらがどんなに正当な手を尽くそうとも、
相手がそれに応じないこともあります。
どんなに努力しても円満に話し合いが進まず、困り果てている人は多いのではないでしょうか。

常識の範疇をこえているような引き止めに会ったり、
退職に際して、不利益を被るような条件を突きつけてきたりするような
悪徳な職場もなかにはあるようです。

そんなときは、決して泣き寝入りせずに
労働者は法で守られていますので、おかしいと感じたことは納得がいくまではっきりさせておきましょう。

退職届を受理してもらえず、
ドラマのようにビリビリに破られたり、ゴミ箱行きになったり…
そんなことも実際にあったようです。

退職届の提出期限が迫っているのに受理されず、もうお手上げだ…
という場合でも諦めるのはまだ早いです。

まずは、「労働基準局」に相談をしましょう。
もめずに退職するためのよい方法をアドバイスしてもらえます。

しかも、労基に相談しているという事実を知ると
たいていの職場は折れると思います。

そして、それでも埒があかない場合。
最終手段ではありますが、就業規則よりも強い民法で解決しましょう。

民法627条
「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、
各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。
この場合において、雇用は、
解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。」

と定められているように、
2週間前までに退職届を提出すれば法的に退職が認められるわけです。

退職届はどうすればいいのか?

それは、「内容証明郵便」で強制的に送り付けるのです。
内容証明郵便は、受け取りを拒否することができませんから
相手に届いた時点で退職届の効力が発生します。

ただし、ここまでいくと円満退職とは言えなくなってしまいますので、
どうしても他に方法がなく困った場合のみにとどめておきましょう。

退職が決まってから、退職するまでの期間、
たいていは1ヶ月~数ヶ月あると思いますが、
その期間の働きかたにもその人の思いが表れます。

どうせ辞めるからと、だらだらしたりやる気がなかったり
引き継ぎがいい加減だったり
そういう人は、残る人の気持ちを考えない、所詮自分本意な人間です。

また、退職を申し出る際に感情的になって喧嘩をしたりしてしまうと
退職日までの期間を気まずい思いで働かなくてはならず、
後味の悪い辞めかたになってしまうかも知れません。

退職を決断した裏には、やはり何か思うところがあり
職場にマイナスの感情を抱いていたかもしれませんが、
ここは一つ大人になって…お世話になった職場、お世話になった人、
その人へ感謝の気持ちを持って、仕事を全うするべきだと思います。

退職の際に、遠く離れた地に引っ越して、
一緒に働いてきた人たちと 今後一切の連絡を断つような状況ならともかく、
なかなかそうはならないもの。

人との縁はそう簡単には切れません。

さらに、今後ますます地域連携の必要性が重要視され、
医療期間同士の密接な連携が求められるようになり、
退職した医療機関を出入りしなければならない状況もあるはずです。

自分の身内や知り合い、また自分自身がその医療機関にかかることだってあるでしょう。

今後、誰とどこでばったり会い、またどんな形でお世話になるかもわからないので
少しでもきれいに去っていけるようにしたいものです。

「立つ鳥跡を濁さず」!!

一時の努力と冷静な対応が、今後を大きく左右するかもしれません。

円満退職のススメ (1/2)

2015-01-17 | 一般
今年度も残すところあと2ヶ月半。

この時期になると、看護部のトップや人事課は、
4月から入職を希望する中途採用者への対応だけでなく、

年度末で退職を希望するナースとの面談や引き止め交渉に追われているのではないでしょうか。

看護師がこれほどまでに医療機関に重宝される理由は、要は
ナース(看護師)の人数が多いほど儲かる仕組みがあるからです。

看護師の数が、医療機関の運営に大きく関わっているため
できるだけ多くの看護師を確保したいというのがホンネなのです。

そうでなくても、全国的にナースは不足しており、
中小規模の病院になると、業務に支障が出るくらい
ナースが足りないところもたくさんあるため、
それぞれの医療機関が看護師集めに躍起になっています。

そんな背景もあり、ナースが転職を考えたとき
採用されるのはわりと簡単で、辞めることのほうが難しいというのも頷けます。

ナースは、高給取りのイメージばかりが独り歩きしていますが
実際の仕事内容は、3Kとも5Kとも7Kともいわれる過酷なもの。

業務の幅が広く、さまざまな知識や技術が求められ、
小さなミスや見落としが命取りになるという緊張感。
不規則な生活のため家族とはすれ違いの日々。
女性ばかりの職場にありがちな人間関係のトラブル、いじめ、
クレーマー、モンスターペイシャント、等々
さまざまなストレス源にさらされ、精神を病んでしまうことも。

「仕事を辞めたい!!」「こんな病院、辞めてやる!!」と
心のなかで叫びながら働いているナースは少なくありません。

その職場を辞めたとしても、看護師は引く手あまた。
就職に困る心配はほとんどなく、簡単に転職できてしまう職種なのです。

そのせいもあってか、日頃から、ちょっと気に入らないことがあるたびに
「辞めてやる!辞めてやる!」と口癖のように言っているナースもいます。

(そういう人はたいてい、
周りから見て、是非とも辞めていただきたい人であるが、
なかなか辞めずに「辞める!辞める!」を繰り返すのです…
これを“辞める辞める詐欺”といいます。)

ですが、本気で辞めようと考えている人は
「辞める!辞める!」などと騒ぎ立てることはせず
冷静に気持ちを整理し、意思を固め、
具体的な退職の時期を決定し、水面下で準備を進めているものです。

無駄に早い時期から声高に退職を宣言したりすることもせず、
退職の準備をある程度整えた上で、時期を見計らって上司に報告するナースは、
たいてい迷いはなく本気で辞めようとしている人なのです。

一時の感情ではなく、期間をかけてじっくり考えているので、
意思は固く、その先の計画も決まっていることが多いため
引き止め成功率はかなり低いものと思われます。

ですが、やはり病院としてはナースには辞めてもらいたくないもの。

「辞めます」
「そうですか、わかりました」
というように簡単にはいきません。

辞めたい理由を根掘り葉掘り聞かれ、
何とかその状況でも辞めずに続けられるような方法や条件を提示され、
せめてあと○ヶ月頑張ってみましょうよと先延ばし作戦で勝負を挑んできます。

それでもこちらが折れないと、
「もう少し考えてみて。」と所定の退職届用紙を渡してもらえず、
それに代わるものをこちらで準備して提出すると、
様式が違うとかなんとか言い、結局は受理してもらえない。

退職希望の日がどんどん近づき、埒があかないとなると
最終手段でもある「労基に相談」「退職届は内容証明」という、
法を味方につけた方法に頼るしかなくなります。

こういった流れにハマってしまったら、なかなか軌道修正はできません。

そうならないために、「退職の理由」の段階で
つまずかないようにしなければならないのです。

退職には必ず「理由」が必要になります。

理由はさまざまですが、
“退職が認められやすい理由”と、“引き止められやすい理由”とがあります。

ここで、“退職を認められやすい理由”を述べられるかどうかが、
円満退職へのカギともいえます。

“退職を認められやすい理由”としては、
やはり「どうしようもないこと」に限るでしょう。

例えば、
夫の転勤や引っ越しによって通勤ができない。
家庭の都合や自身の健康の関係で、仕事そのものができない。
今の職場では経験できないことを、転職先で学び、看護の幅を広げて成長したい。
など、引き止めようのない理由や、前向きな理由であれば
病院側もこれ以上無理に食い下がっても無駄だと判断するでしょう。

逆に、辞める理由が日頃の不満で、ここぞとばかりに不平不満をぶちまけた場合。

病院側は、ではその点を改善すれば続けられるだろうというふうになります。

また、愚痴を吐き出したことによってスッキリしてしまい
退職意欲が減退したり、迷いが生まれる場合も。

それはそれでいいのかもしれませんが、社会人としてどうかなと思うところです。

退職を希望する約8割の人が、退職理由のホンネとして
職場に対する不満を挙げています。

しかし、そのほとんどの人が、円満退職のため敢えてそこは飲み込んで
相手に嫌な思いをさせなくて済むような“建前”を考えているのです。

次回に続きます

入院中の性処理

2015-01-14 | 一般
入院患者さんの7割はお年寄りが占める、わが病棟。

どの病棟もだいたい同じだとは思いますが、
ナースステーションに近い病室は、病状の重い人や、認知症などで監視が必要な人に入っていただき
ナースステーションから離れるにつれて、病状が軽く、自立度の高い人が多くなります。

もちろん、男女が同じ部屋になることはありませんが、
男性部屋、女性部屋が隣同士や向かい合わせになっていることは
決して珍しいことではありません。

私が所属する病棟の場合、大部屋(4人部屋)では、
年齢の近い人を同じ部屋にすることもありますが、
そうすると逆によくないこともあるので、
お年寄りも若者も関係なく、病状や自立度で決めることのほうが多いです。

なので、お年寄りのなかに若い人が1人ということがよくあるのですが、
それはそれでお互いにうまくやっているようです。

以前、ある患者さん(70代女性)から
「同じ部屋のAさん(30代女性)の携帯が、夜中に鳴るので寝られない」
と相談がありました。

話を聞くと、夜中の12時や1時頃、ほぼ毎晩のように
Aさんの携帯が鳴っているのだとか。
しかも20~30分以上鳴り続け、途中で止まったかと思うとまた鳴り出したり
カーテン越しに小さな声が聞こえることもあるのだそう。

私たちは夜間、1時間おきに各病室を巡視していますが、
一度だってそんな異変に気が付いたことはありませんでした。

しかしその患者さんが嘘を言っているようにも思えなかったので、
Aさんの携帯が鳴っていることに気が付いたら、そっとナースコールを押してもらうようにお願いしました。

そして、夜中1時30分頃だったでしょうか。
巡視を終えてナースステーションに戻ろうとしていた時、そのナースコールは鳴りました。

足音を立てないようにその病室に急ぎ、
病室のドアをそっと開けて耳を澄ましましたが何も聞こえません。
Aさんのベッドを覗いてみると、布団をかぶって寝ている様子でした。

一体、何なんだろう…

ナースステーションに戻り、しばらくするとナースコールで知らせてくれた患者さんがやってきました。

「さっきも携帯がブーン、ブーンって長いこと鳴ってたんだけどね。
看護婦さんが来てくれたとたん、急にピタッと音がやんだのよ。」

うーん、一体どういうことだろう…
夜中に着信?
毎晩、真夜中にしつこく携帯を鳴らし続けるなんて、
一体どんな誰なんだろう?なんの用事で??

謎は深まるばかり。

結局、その日は事実を確認できず、解決できないまま朝を迎えました。

その後も、教えてくれた70代の患者さんは、
Aさんとのトラブルを避けたいということで、
直接本人に問いただしたり注意をしたりはしないで欲しいと強く希望され、
ほどなくしてその患者さんは退院の日を迎えました。

それから、その病室の患者さんからは
同じような相談を持ちかけられることはなく
私たちも、Aさんの携帯の一件は記憶から消えつつありました。

そんなある日。
朝、私が出勤するなり、夜勤明けのナースが
「私、見ちゃったんですよ…!!
前に、Aさんの携帯が鳴りっぱなしだって言ってたアレ。
わかっちゃったんです!!」
と、声をひそめながら興奮気味に耳打ちしてきました。

そのナースは、あの時ペアで一緒に夜勤をしていた子。
合点がいかない、あのモヤモヤを共感できる相手です。

「3時の巡視の時、Aさんのベッドを覗いたんですよ。
そしたら、ブーーーンて音がするから、あ、携帯鳴ってる!!って思って…」

「Aさんは寝てるし、気づいてないみたいだから起こそうとして…」

「で、ライトでそっと照らしてみたら、…布団の上で動いてたんですょぉ」

ん?ん?何が動いてたの?
携帯が動くの?
え、何?どういうこと~??

「…あの、大人のおもちゃですよ…バイブ!!」

えええええーーーっっ!!!???

・・・・・・・・・・

しばらく声が出ませんでしたが、しばらく考えるうちに
あぁなるほどな、そういうことだったのね、と納得がいきました。

夜な夜な鳴り止まない携帯の正体は、なんと大人のグッズだったのです。

性に対しての関心や欲求の度合いは人それぞれ。

もし、入院患者さんが病院の中で不純行為に及び、それが見つかってしまった場合、
厳重注意を受けるか強制退院になります。

しかし、こうやって一人で処理をするのはどうなのか?
他人に迷惑をかけないように一人でこっそりばれずにやるのなら、禁止する理由はありません。

日本人という民族は、性に対して“恥ずかしい”というイメージを持っており
人前で口に出すのはタブーとする風潮があります。
なので、わざわざ院内会議で審議にかけるのもためらわれるでしょうし、
そもそも問題行為なのかどうなのか、判断に困るケースでもあると思います。

謎が解決したけれど、新たなモヤモヤが湧いてしまった出来事でした。

高齢者に押し潰される国、日本。

2015-01-11 | 一般
2015年。

「2015年問題」と言われてきた年を迎えました。

私が生まれる前から、もうすでに日本は高齢化社会に突入していました。

その後、高齢化はさらに進み、現在では
全人口のうち65歳以上の高齢化が占める割合が20%を越え、
超高齢化社会がもう目の前に迫っています。

今年は、団塊の世代すべてが65歳以上(前期高齢者)となるため
2015年問題と呼ばれています。

そして10年後には、この団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる
2025年問題が控えています。

私が高齢者となる頃には、3人に1人が65歳以上という
超超高齢化社会となると言われています。

子の世代、孫の世代を苦しめるくらいなら、
私は、働けなくなった頃にポックリ逝きたい…

そう願ってやみませんが、こればかりはどうすることもできません。

世界でトップクラスの長寿国と呼ばれる日本。

2013年の平均寿命は、男性が80.21歳、女性が86.61歳。
年々伸び続け、男性が初めて80歳を越えました。

しかし、それに対して「健康寿命」は
男性は約70歳、女性は約73歳と、
平均寿命に比べると10年ほどの差があります。

この10年という期間は、自分ひとりの力では生きられず
医療や介護など手助けを受けながら生活することを意味しています。

そして、無駄な延命処置によって生かされている寝たきりの高齢者も
この中に含まれているのです。

人間らしく生きることよりも
一日でも長く生きることを選んだ結果、
もはや生物でもない「植物」と例えられ、
意思も感情も持たない「ヒト」として人生の終わりを待つだけの日々。

もちろん、全員がそうというわけではありませんが
幼い頃から、何かにつけて
長生きは素晴らしいと教え込まれてきた日本人には、
QOL=クオリティオブライフ=生命・生活の質
よりも、一日でも長く生きることにこだわりを持つ傾向があり、
「無用の長物」をどんどん増やし続けているのです。

胃瘻(いろう)難民 安楽な死に向けて

2015-01-08 | 一般
前回からの続きです

そんな胃瘻ですが、「胃瘻難民」と呼ばれる人々が増えすぎて
今では社会的に大きな問題となってしまいました。

そもそも、胃瘻による栄養法を老人に施すようになったのも、
食べられないばかりに長期の入院を強いられている人を、
退院し在宅で生活することを可能にするためだったのです。

高カロリーの点滴は、入院した上で医師や看護師による管理が必要でしたが、
胃瘻は食事と変わらないため、自宅でも家族の手によって行うことが可能となります。
生活の場を病院から自宅に移せる、そうすれば限りある医療費の増加を食い止めることができる
そんなねらいもあったのでしょう。

しかし、そんな思惑とは裏腹に「胃瘻難民」を大量に生産する結果となり
さらに莫大な医療費がかさむようになってしまったのです。

現実の世界では、胃瘻によって生きながらえている・生かされている老人がベッドを占領しています。
寝たきり、意識がない、認知症の末期、回復の見込みがない、なんの反応も見せない、
そういった、植物状態と呼ばれる老人たち。
命あることが家族の生きがいになっているならまだしも、そんなケースは珍しく、
家族の足も遠のき、ただ生かされているだけ。
きれいごとでは済まされない光景です。

いつまでも病院にいてもらうわけにはいかないけれど、受け入れ先がないので仕方ありません。
退院後は在宅か介護施設に行くかのどちらかですが、胃瘻を受け入れられる施設は限られています。

今はある一定の条件を満たせば、介護職員も「たんの吸引」「経管栄養・胃瘻」を行うことができますが
それでもそのような処置が必要な人が入所できる人数に制限を設けている施設が多数あり、
誰でもかれでも施設に、というわけにはいかないのです。

そんな経緯もあり、現在では無理に胃瘻を勧めることはできなくなりました。
ようやく胃瘻の在り方について見直され、数年前にガイドラインが作成されています。
本当に必要な場合にのみ胃瘻は造設されることになります。

医療人は、長きにわたって「命を救うこと」を業としてやってきました。
しかし近年は、安らかに死に向かための援助も重要視されてきています。

時代の流れでしょうか、医療に頼らず、人間らしい自然な死を望む人も増えています。

延命処置をしないことは、逃げでもあきらめでもありません。
自然な成り行きです。

食べられなくなったとき、高カロリー輸液(TPN)も行わない、胃瘻も造らない、
では一体どうするのか?

決して放置するわけではありません。
上記のような処置をすれば、年単位で生きながらえることは可能となります。

ですが、そこまで命を延ばしたいわけでもない、ただ苦痛なく穏やかな最期を迎えたい…

そんな場合には、普通の点滴で水分と最小限の栄養を補っていきます。

死に向かう時、人間の体はそれほどたくさんの栄養も水分も必要としていません。
必要以上の水分を入れたところで、心臓に負担がかかってしまったり、
余分な水分がむくみとなってしまったりするだけなのです。
そういう場合は、点滴の量も少しずつ減らしていき、やや脱水気味に管理します。
それが、一番苦痛の少ない方法だとされています。

さらに死に近づくと、今度は血管も細くなり、点滴ができなくなります。

細くなった手足に、あちこち針を刺しては失敗し、最終的には、医師によって
太ももの付け根や首、鎖骨下の太い血管に太くて長い管を入れて点滴を続けるか…

それとも、わずかに命を延ばすために苦痛を与えることはやめて点滴そのものを中止するか。

点滴をやめると、もって数日~1週間以内となりますが、決して苦しそうな様子はなく
呼吸も表情も穏やかなのが印象的です。

(私ならこの“合法的な安楽死”を望みます)

個人の死生観にも左右されるこの問題。
正解なんてありません。

最後に、決して「胃瘻」そのものを否定しているわけではないことを付け足しておきます。
胃瘻によって幸せに生活し、胃瘻を造ってよかったと実感している人もたくさん知っています。
胃瘻が本来の役割を果たせた、素晴らしいケースだと思います。