私は、教員だった頃を含め、生徒を引率して、何度も沖縄修学旅行に行きました。
校長になってからは、CAのチーフの方が、行きも帰りも、離陸前にご挨拶に来てくださいます。
「今日は、○○航空をご利用いただき、ありがとうございます。生徒さんにとって思い出になる空な旅となるよう、心より願っております・・・」
私は、「中学生ですので、騒がしくしたりするかましれませんが、ほかのお客さんにご迷惑をおかけしないようにします。どうぞよろしくお願いします」などと、言葉を返します。
また、那覇空港に到着すると、「箕面市立第三中学校のみなさま、本日はご搭乗ありがとうございました。よき修学旅行になりますよう、願っております。またのご利用をお待ちしております。」と、アナウンスが流れます。
いつも、ほのぼのとした気持ちになります。
さて、チーフパーサーについて、こんな実話があります。
「夫婦のお客さまが、大きな人形を胸に抱き、いくら言っても離してくれません。人形ごとシートベルトをしています。安全確認ができません。」
CAからこの相談を受けた、チーフパーサーは、そのお客様のところへ行きました。
「お客様のお子様は、おとなりの席に座らせてあげて、お子様にもシートベルトをかけてあげましょう。お母様はそのままご自身でベルトをおつけくださいね」
女性は、「わかりました」と素直に、となりの席に人形をすわらせ、シートベルトをしました。
飛行機は、無事に離陸できました。
そのチーフパーサーに、後日、手紙が届きました。
その夫婦の夫からでした。
「妻は子どもを亡くし、あの人形をかたときも離さなくなりました。外へ行くときも、いっしょでないと出歩けなくなりました。
あの日、あなたに『お人形』てなく、『お子様』と言っていただいて、妻は嬉しかったようです。本当にありがとうございました。」
チーフパーサーは、そんな事情があるとは思いつかなかったものの、人形を抱くお母さんのただならない様子から、なにか強い思いを感じとったのでした。
人には、他人にはうかがい知れない事情があることもあります。
チーフパーサーは、振り返って、こう語っていました。
「お客様の繊細な心に寄り添うことで、かたくなだった心がほどけることがあることを、私も学びました」
さて、最後は話を教育につなげます。
三中にも、なかなか心を開かない、かたくなな態度をとる生徒がいます。
多くの教師が、その子とすんなりと会話ができにくい。
でも、特定の教師とは打ち解けることができる。
きっと、その教師は、思春期の繊細な心に寄り添うことができるのです。かたくなな心はほどけ、その教師は会話ができるのかもしれません。
この意味で、中学の教師は、無神経ではつとまりません。
また、無神経な言葉で余計にその生徒を傷つけるかもしれません。
生徒の思いを感じとり、繊細な気持ちや心情に寄り添いえる教師に、生徒は心を開きます。