堅曹さんを追いかけて

2002年(平成14年)9月から先祖調べをはじめた速水家の嫁は、高祖父速水堅曹(はやみけんそう)に恋をしてしまったのです

富岡製糸場と和歌 ②

2008-10-18 00:33:25 | 勉強会、講演会

さて、相棒Tさんの講演会のつづきです。

堅曹さんの和歌の紹介になります。


Cimg5147 講演の様子



最初は2006年に富岡製糸場の倉庫から発見された「柱隠し」に

書かれていた和歌。

柱隠しとは

  柱の表にかけて装飾とするもの。

  竹、板、陶器などでつくり、多く書画などを描いたもの。


     白露の 奥ゆかしくも 住む宿に 

               植えたる菊に 千代の色なる  


Photo 発見された柱隠し
  



次はモニュメントにも収められている、速水家4代、5代、6代を追悼した和歌3首。


     武士の 大和心を 家の子に 

               付けとて君は 教えおきけん


     咲き染むる 花とや言わん 君はしも

               いと珍しき 勲たてけり


     世の人は 常磐とも見ず 夏山の

               青葉に混じる 松の一木を



日記から抜粋したもの。

堅曹さんが生糸の仕事にかかわるようになった明治維新前後の時期のもの5首。

その中から一首


     物おもふ おもひの外に としくれて

              こころ静かな 春にこそあれ



『蚕業新報』に連載された「製糸場の大庭」という

堅曹さんが毎年正月に工女さんたちに話した演説集があります。

そこにのっている和歌と漢詩13首。

たとえば、


     世の人は 知るか知らぬか とみおかの

               いとにぎはしき 年のはじめを


     春ことに なれみし花も さらにまた

               ことしはまさる 色香なりけり


     手弱めの よはき手にくる くりいとは

               わか日の本の 光とそみる


漢詩は


     旧去新来上下均 参千五百萬人春

     請看自立卓然女 紅粉錦裳不頼親


   古い年が去り、新しい年が身分に関係なくやってきた 

   全国民三千五百万人の春

   どうか見てやってください、自立して際立ってすぐれた女性たちを 

   白粉も着物も親に頼らずにがんばっています   (訳 Tさん)



富岡製糸場の賑わい、

花にたとえて詠まれた工女さんたちの一生懸命さ,

しっかり自立した女性の姿が詠まれ

見守る指導者の温かい目があります。



それぞれの歌については堅曹さんの略年表と対比させながら、

詠んだ時の状況を説明し、現代語に訳してくれました。

また、富岡製糸場の出来事や当時の群馬県内や日本での生糸関係の動きも

丁寧に解説してくださいました。

それによって、国の蚕糸業の発展と堅曹さんの仕事がリンクしていったのが

よくわかります。



明治23年(1890)10月に東園侍従が富岡に来た際、

差し出した長歌と和歌をとりあげました。


  上つけのかむら・・・ひなにはあれど 西には妙義浅間南にはみかほ・・・、


と富岡の素晴らしい自然と四季を詠み、


  五百人の工女らが競って糸をひき、夜は文学も学び、

  長くたゆみなく仕事に励むにつれて、外国に名声を上げてきた。

  わが国の富の基本は富岡の里にあり、繁栄は糸繰りの糸にあり。

  この富岡に及ぶ里は他にはない、この糸に及ぶ糸も他にはない、

  上野の甘楽の里をご覧くだされ。(筆者 意訳)


という内容の長歌と


     富岡の 里のおとめか くり出だす

                いとながくこそ 国は栄えめ


この長歌と和歌は当時の富岡製糸場の様子を最もよくあらわしていると

思います。


最後にTさんはこの歌を紹介して、

半数以上のかたが富岡にいったことがない会場の人たちに、

ぜひこのような富岡製糸場を見に来てください。

そして絹蚕業遺産群と速水堅曹のことをご理解いただき、

世界遺産活動のご支援をお願いしたい、

と話されました。


今回の講座をきいてくださった方たちが、堅曹さんの歌をとおして、

当時の富岡製糸場や工女さんたちの様子、

日本が蚕糸業で栄えていたころの気概を感じていただけたら

とおもいました。



講演が終わったのが、3時半。

2回にわたって4時間の講演、Tさんご苦労様でした。

下調べにとても時間をかけて、和歌に出てくる場所はすべて

見にいかれたようです。


いままで誰もとりあげたことのない、富岡製糸場にまつわる和歌をまとめられて、

文化的な面から検証したとてもいい内容でした。


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