ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

ザ・ビートルズ (The Beatles "White Album")

2007年04月09日 | 名盤


  アルバム・ジャケットは、いたってシンプルな真っ白(そのため通称"ホワイト・アルバム"と呼ばれています)ですが、それに反して内容はとても多彩な作品です。
 ハード・ロック、カリプソ、フォーク、バラード、アバンギャルド、ボードビル、ブルース、ロックンロール、カントリー、ジャズなどなど、いろんな種類の曲が30曲も詰め込まれています。
 「散漫な内容である」との批評もよく見かけます。たしかに統一感はやや薄いものの、それ以上にメンバーそれぞれのパーソナリティや、バラエティに富んでいるビートルズの音楽性が存分に発揮されているので、グレードの高い小品集という趣きが感じられるアルバムになっていると言えるのではないでしょうか。むしろ、彼らの才能の豊かさに驚かされるばかりです。


     
 
 
 この頃、バンドのイニシアティヴはポールが取っており、それに嫌気がさしたリンゴは録音中にスタジオを離れてしまいます。冷静さを取り戻したリンゴが一週間後にスタジオに戻ると、愛用のドラム・セットの上に「出戻り歓迎」のメッセージと花束が飾られていた、という話が残っています。
 この話からは、結束の堅さを誇っていたビートルズの中にこの頃から亀裂が生じ始めていたことが伺えます。しかし、メンバー間にヒビ割れが生じても、これだけのアルバムを作ることができるんですね。


 このアルバムの中でぼくが好きなのは、
 エリック・クラプトンの泣きのギターが聴かれる「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」、楽しさいっぱいのカリプソ風の曲「オブラディ・オブラダ」、場面展開が劇的な「ハピネス・イズ・ア・ウォーム・ガン」、アコースティック・ギターが美しい「ブラック・バード」「マザー・ネイチャーズ・サン」、フォーク・ロック調のラヴ・バラード「アイ・ウィル」、ブルース・ロックの「ヤー・ブルース」、ハードなロックンロールの「バック・イン・ザ・USSR」「バースデー」、ヘヴィ・メタルのはしりのような「ヘルター・スケルター」、テナー・サックス4本とバリトン・サックス2本のアンサンブルがカッコいい「サヴォイ・トラッフル」などです。
 これらの多彩な曲群の曲順には必然性があると思います。しっくりくるんですね。このアルバムの構成はこうでないと、という意思が見える気がします。


 このアルバムもビートルズらしい遊び心と実験的精神に満ちていると思います。



◆ザ・ビートルズ/The Beatles
  ■歌・演奏
    ビートルズ/Beatles
  ■リリース
    1968年11月22日
  ■プロデュース
    ジョージ・マーティン/George Martin
  ■収録曲
   [side-A]
    ① バック・イン・ザ・U.S.S.R./Back In The U.S.S.R [ Lennon=◎McCartney Lead-vo : McCartney ]
    ② ディア・プルーデンス/Dear Prudence [ ◎Lennon=McCartney Lead-vo : Lennon ]
    ③ グラス・オニオン/Glass Onion [ ◎Lennon=McCartney Lead-vo : Lennon ]
    ④ オブ・ラ・ディ・オブ・ラ・ダ/Ob-La-Di, Ob-La-Da [ Lennon=◎McCartney Lead-vo : McCartney ]
    ⑤ ワイルド・ハニー・パイ/Wild Honey Pie [ Lennon=◎McCartney Lead-vo : McCartney ]
    ⑥ ザ・コンティニューイング・ストーリー・オブ・バンガロウ・ビル/The Continuing Story Of Bungalow Bill [ ◎Lennon=McCartney Lead-vo : Lennon, Yoko Ono  ]
    ⑦ ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス/While My Guitar Gently Weeps [ Harrison Lead-vo : Harrison ]
    ⑧ ハピネス・イズ・ア・ウォーム・ガン/Happiness Is A Warm Gun [ ◎Lennon=McCartney Lead-vo : Lennon ]
   [side-B]
    ⑨ マーサ・マイ・ディア/Martha My Dear [ Lennon=◎McCartney Lead-vo : McCartney ]
    ⑩ アイム・ソー・タイアード/I'm So Tired [ ◎Lennon=McCartney Lead-vo :Lennon ]
    ⑪ ブラックバードBlackbird [ Lennon=◎McCartney Lead-vo : McCartney ]
    ⑫ ピッギーズ/Piggies  [ Harrison Lead-vo : Harrison ]
    ⑬ ロッキー・ラックーン/Rocky Raccoon [ Lennon=◎McCartney Lead-vo : McCartney ]
    ⑭ ドント・パス・ミー・バイ/Don't Pass Me By [ Starr Lead-vo : Starr ]
    ⑮ ホワイ・ドント・ウィ・ドゥ・イット・イン・ザ・ロード/Why Don't We Do It In The Road? [ Lennon=◎McCartney Lead-vo : McCartney ]
    ⑯ アイ・ウィル/I Will [ Lennon=◎McCartney Lead-vo : McCartney ]
    ⑰ ジュリア/Julia [ ◎Lennon=McCartney Lead-vo : Lennon ]
   [side-C]
    ⑱ バースデイ/Birthday [ Lennon=◎McCartney Lead-vo : McCartney, Lennon ]
    ⑲ ヤー・ブルース/Yer Blues [ ◎Lennon=McCartney Lead-vo :  Lennon]
    ⑳ マザー・ネイチャーズ・ザン/Mother Nature's Son [ Lennon=◎McCartney Lead-vo : McCartney ]
    ㉑ エヴリボディーズ・ゴット・サムシング・トゥ・ハイド・エクセプト・ミー・アンド・マイ・モンキー/Everybody's Got Something To Hide Except Me And My Monkey [ ◎Lennon=McCartney Lead-vo : Lennon ]
    ㉒ セクシー・セディ/Sexy Sadie [ ◎Lennon=McCartney Lead-vo : Lennon ]
    ㉓ ヘルター・スケルター/Helter Skelter [ Lennon=◎McCartney Lead-vo : McCartney ]
    ㉔ ロング・ロング・ロング/Long, Long, Long  [ Harrison Lead-vo : Harrison ]
   [side-D]
    ㉕ レヴォリューション1/Revolution 1 [ ◎Lennon=McCartney Lead-vo : Lennon ]
    ㉖ ハニー・パイ/Honey Pie [ Lennon=◎McCartney Lead-vo : McCartney ]
    ㉗ サヴォイ・トラッフル/Savoy Truffle  [ Harrison Lead-vo : Harrison ]
    ㉘ クライ・ベイビー・クライ/Cry Baby Cry [ ◎Lennon=McCartney Lead-vo : Lennon ]
    ㉙ レヴォリューション9/Revolution 9 [ ◎Lennon=McCartney ]
    ㉚ グッド・ナイト/Good Night [ ◎Lennon=McCartney Lead-vo : Starr ]
  ■録音メンバー
   ※Beatles
    ポール・マッカートニー/Paul McCartney (bass①~④ ⑥~⑩ ⑫~⑮ ⑲㉑㉒㉔㉕㉗㉘, piano①②③⑦⑨⑩⑭⑮⑱㉒㉕㉖, organ㉔㉕,  guitars①⑤⑨⑪⑮⑯⑱⑳㉓, drums①②⑨, percussions①②⑤⑳㉑, recorder③, fluegelhorn②, lead-vocals, backing-vocals, chorus)
    ジョン・レノン/John Lennon (guitars①②③⑥⑦⑧⑩⑰⑱⑲㉑㉒㉕㉖㉘㉙, 6st-bass①⑬㉓, piano④㉘㉙, organ⑥⑩㉒㉘, mellotron㉙, drums①, percussions①⑯㉑㉙, harmonica⑬, sax㉓, lead-vocals, backing-vocals, chorus)
    ジョージ・ハリスン/George Harrison (guitars①~④ ⑥⑦⑧⑩⑫⑲ ㉑~㉕ ㉗㉘㉙, bass①, 6st-bass⑱㉖, organ⑦㉗, percussions①㉑, lead-vocals, backing-vocals, chorus)
    リンゴ・スター/Ringo Starr (drums③④ ⑥~⑧ ⑩⑬⑭⑮⑱⑲ ㉑~㉘, percussions③④⑥⑦⑧⑫⑭⑯⑱㉑㉒㉘, piano⑭)
   ※Additional Musicians
    マル・エヴァンズ/Malcolm Evans (trumpet㉓, backing-vocals②)
    ジャッキー・ロマックス/Jackie Lomax (backing-vocals②)
    クリス・トーマス/Chris Thomas (mellotron⑥, harpsichord⑫, piano㉔, electric-piano㉗)
    オノ・ヨーコ/Yoko Ono (vocal⑥, backing-vocals⑥⑱, spoken-word㉙)
    モーリン・スターキー/Maureen Starkey (backing-vocals⑥)
    パティ・ボイド/Pattie Boyd (backing-vocals⑱)
    フランシー・シュワルツ/Francie Schwartz (backing-vocals㉕)
    エリック・クラプトン/Eric Clapton (guitar⑦)
    ジョージ・マーティン/George Martin (piano⑬, harmonium㉘, spoken-word㉙,celesta㉚)
    マイク・サムズ・シンガーズ/Mike Sammes' Singers (chorus㉚)
  ■チャート最高位
    1968年週間チャート アメリカ(ビルボード)1位、イギリス1位
    1968年年間チャート イギリス2位
    1969年年間チャート アメリカ(ビルボード)8位、イギリス10位
    1987年週間チャート アメリカ(オフィシャル・チャート)18位、日本(オリコン)4位
    2009年週間チャート アメリカ(ビルボード)7位、イギリス21位、日本(オリコン)19位
    2018年週間チャート アメリカ(ビルボード)6位




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4 コメント

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Unknown (ろ~ず)
2007-04-10 01:28:07
ビートルズをよく聴いてたのは73~75年あたりで、赤盤から入ってsgtペッパー以後はアルバムを順にきいていったのですが、ホワイトアルバムは買った当時は「バースデイ」とか「バック・イン・ザ・USSR」あたりはすんなり入ってきましたが「レヴォリューション」とか「ヘルター・スケルター」あたりはどうも・・という感じでした。当時はポップソングを聴いてたのでハードなのの洗礼を受けてなかったんですね。アルバムも散漫な感じがしました。

ところがその後パンクとかいろんな音楽を聴いた今、ビートルズでどれか1枚、といわれたらこのホワイト・アルバムを選びます。

ハードなものでは「ヘルター・スケルター」「ヤー・ブルース」「レヴォリューション」がいいですね。

「アイム・ソー・タイアド」「ジュリア」とか「マーサ・マイ・ディア」などアコースティックなものも捨て難いです。

あとジョージの「グラス・オニオン」「サヴォイ・トラッフル」も好き。もちろん「ホワイル・マイ~」はいいですね。

昔は散漫に思えたものが、今は逆にいろんなタイプの曲が入ってるところが魅力です。しかも「レヴォリューション#9」とかすごい実験的なのも入ってたりで改めてビートルズの広さに驚きます。
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ろ~ずさん (MINAGI)
2007-04-10 11:35:11
ぼくも最初はこのアルバムはとくに好きでもなかったのですが、聴けば聴くほど気に入るようになってきました。
きっとこのアルバムの音楽の幅が広すぎてついて行けなかったのが、多少耳が肥えてくるにつれてどの曲もすんなり受け入れられるようになったのだと思います。
これだけたくさんの曲がありながら、キライな曲がないんです。月並みですが、どの曲もいい曲なんですよねぇ。
つい数日前、他のブログを見ている時に、「ホワイト・アルバムは長すぎるから曲を削ってを一枚にしてみた」という記事を面白く読みました。ぼくは、二枚組のこのアルバムを一枚ずつ独立させても充分質がある、と思います。
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Unknown (ジェイ)
2007-04-10 14:44:07
私もMINAGIさんと同じです。若い頃はそう大好きってアルバムでもなかったけど、今は凄く好きです。
ビートルズって詳しくないんですが、魅力が凝縮されているし、一枚ずつ独立させても充分楽しめると思います。「ホワイル・マイ。。」は本当に良い曲だわ。
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ジェイさん (MINAGI)
2007-04-10 19:04:18
目立たないけれど佳曲ぞろいのアルバムですね。でもなぜ最初からそう思えなかったんだろう。。。やっぱりある程度耳が肥えないと良さが分からないのでしょうか。(^^;)
「ホワイル・マイ・ギター~」ぼくも好きです。ジョージの書く曲、目立たないけど良い曲ばかりですよね。「アビイ・ロード」に入っている「サムシング」「ヒア・カムズ・ザ・サン」なんかも大好きです。
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