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鈴木清順監督『踏みはずした春』その2

2021-03-26 08:47:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。

 和江「イーゼルとパレットと筆と絵具と、それに椅子も。せっかくの開店なんだから、お祝いよ」。
 梶田「いいとこ見せつけやがって」。
 恵子の家。信夫「明日から似顔絵を描こうと思ってるんだ。このネクタイの模様も。そうそう、頼まれてたバート・ランカスターの似顔絵も持ってきたよ」。ギターを手にする信夫。「皆自己流だ」。和江、歌う。やがて信夫も歌に加わる。恵子「これでいいんだ」。
 電話。和江「え? 信夫ちゃんが?」トンガリ「嘘じゃねえよ。切った張ったの喧嘩で重傷を負ったんだ。東横のホームで待ってる」。
 路上で似顔絵の営業をする信夫。「絵描きさん」「あ、恵子さん」「お客さん、第一号ね」「記念に美人に描いてあげるよ」「ネクタイ、うまく描けてるわ」。
ナイトクラブ。和江、トンガリに連れて来られる。(中略)カウンターの客(殿山泰司)「あいつ何て言うんだ?」「知らないわ」。
 事務所。「信夫ちゃん!」。顔の布を取ると梶田がいる。和江、逃げ出そうとするが、梶田に捕まり、クロロホルムを嗅がされる。「兄貴! ポリ公だ!」。窓から逃げ出す梶田ら。
 信夫「あー、最初の夜に雨なんて降りやがって」「笠原、兄貴のところに面を貸してくれ」。喧嘩。破けたネクタイが地上に。
 梶田「笠原、こないだは世話になったな」「もうお前らに用はない」。路地で喧嘩。真上からのショット。「くたばれ、この野郎」「和江は今晩俺たちがいただいたからな」「何? くそー。もういっぺん行ってみろ」。右手をレンガで傷つけられる信夫。「和江は俺たちがもらったんだ。ハハハ」。排水溝の中から上を通る傷ついた信夫。「和江」。
“刑事係室”の表札。刑事「おい、誰があんなアホなことをやりだしたんだ? あの子はショックで気絶したんだぞ。どうせ分かることだ。な、言ってみろ」トンガリ「すいません」「すいませんじゃ、済まないだろう。誰だ? 俺に言ってもらいたいんだろう。警察をバカにすると、とんでもないぞ。犯人は分かってるんだ。梶田だな」「ん?」「そうだろ?」「そんな」「何? 違ってるのか?」「違います。それは笠原です」「笠原?」。うなずくトンガリ。「あん畜生がそそのかして、やったんです」。
 破れたシャツ。血まみれで、びしょぬれの姿でやっと歩く信夫を室内から移動撮影。実家で警察が待ってる。「貴様ら、まだ来る気か?」「じたばたするな。俺が何をしたっていうんだよ」「とにかく参考のために警察まで来てもらおう。おい、おとなしくするんだ」。
 心配そうに見る母親。
「どうです? 白状しましたか?」「一応調書は取ったんだがね。トンガリと絶交しているから、犯行については何も知らないと言うし、それにその子が恋人なんだから、やる訳がないと言うんだ」「よくも貴様、恋人だなんて。奈々子というのはお前の情婦だろ」「知らねえってたら知らねえよ。本当に和江は…」「(中略)その傷は何だ? 窓から逃げ出した時に打ったんだろ? やったらやったと男らしく言ったらどうだ?」「和江は俺だって言ったのか?」「麻酔なんかかかせやがって、とんでもない奴だ。かわいそうに気を失ったんだぞ」。信夫、刑事の方を見る。「貴様、2度も入ったくせに、まだ懲りないのか?」。考える信夫。「今度は少年院なんて学校じゃないんだぞ。刑務所だよ。いいのか、笠原」。一点を見つめる信夫。「よく考えてみるんだよ」「刑務所の飯が食いてえのか?」「刑務所なんて怖くねえ。くそ。でたらめばかりぬかしながって」。
 カウンターの上を手でなぞり、“少年係”のところで止まる。警官(高品格)「君は一体笠原の何だね?」「友たちです」「友だち? へへ、それじゃお前も奴の仲間だな。そうだろ? よく笠原と町を歩き回っているらしいじゃないか」「刑事さん、少し言葉を謹んでらっしゃいません? 私はただ参考人として来ただけなんです」「何度も言う通り、今、取り調べ中だから、面会なんかできないね」「会わせていただけなければ結構です。でも彼はそういうことをする子じゃないってことだけ言いに来たんです」「はあ、なかなか自信があるみたいだね。しかし君の保障だけで笠原を帰す訳にはいかんよ。あれは今、保護観察中の男だからね」「知ってます。私がその身柄を引き受けております」「ふ~ん」「私、BBSの会員なんです。笠原君のこと、連絡があったものですから」「んは? BBS? 何なんだ、そりゃ?」「保護観察処分を受けた子供たちを個人的に指導する団体なんです」「法務省のかね?」「民間団体です」「えっへへ。知ってるよ。冗談だ。ま、いいだろ。そういう関係なら」。

(また明日へ続きます……)

鈴木清順監督『踏みはずした春』その1

2021-03-25 18:55:00 | ノンジャンル
 DVDで、鈴木清順監督の1958年作品『踏みはずした春』を観ました。白黒映画です。

 銀座の風景。バスガイドたちが事務所に帰ってくる。「緑川さん、細川さんから電話。2時にBBSから」と黒板に。
“産婦人科 細川医院”の看板。細川「笠原信夫は乱暴者で、父を殺そうとしました。脱獄のリーダーも。保護司として立派に仕事をして下さい」。
 暗い部屋。手術道具、蜘蛛のおもちゃで遊ぶ信夫(小林旭)。
 信夫「君はBBSなんだろ」緑川恵子(左幸子)「いい友だちになりたいの」「喫茶店でおごるよ」「今日はお母さんのところへまっすぐ帰りましょう」「母親のことは言うな」。
 ナイトクラブ。「そもそも和江という女が原因だったんだ。今は幼稚園の先生をやってる。踊ろう」。
 ラブホテルに連れて行かれる恵子。「先に風呂に入ってきていいぞ」「じゃあ、そうするわ。話は後で」。風呂から戻ってくると、「度胸があるな。勘定は頼む」の書置き。
 細川「信夫と和江は中学時代からの同級生なの」。
 幼稚園で働く和江(浅丘ルリ子)を訪ねる恵子。
 和江「梶田という元仲間が私にキスしたの。それが原因で喧嘩になり、少年院に行くことになったんです。彼のこと、怖いわ」。
 “代官山駅”の看板。信夫「和江のことなんて、余計なお世話だ」。
 バイクに後ろ乗りをするトンガリ(野呂圭介)「兄貴! 奈々子が会ったら、気絶するぜ」。
 アイススケート。トンガリは初心者の女性に教えてやり、財布をする。
「よくも俺のスケに手を出したな。(財布を取り返し)ここは俺たちの縄張りだ。落とし前はどうつけてくれる?」梶田(宍戸錠)現われ、「明日の5時までに5万円を用意する」。
 奈々子の部屋。「あなた変わらないね。じっと待ってたのよ。意地悪。何か言って」。
 アイススケートの女、ナイトクラブで泥酔してる。
 口笛を吹きながら実家を訪ねる信夫。恵子も一緒。母「5つで家出した」恵子「あの絵はあなたの?」「ああ。父は暴力的な男だった。(母に)どうして俺を産んだんだ?」。家を飛び出す信夫。
 路上で父への恨みを述べる信夫。見物する人々。(中略)
 山田先生(二谷英明)、恵子に「自信を持たせるのがいいな」。
 信夫、恵子に「弟を殴ってた。兄貴風を吹かしてた」「そういうのやくざ根性って言うんじゃない? お母さんの働く会社で働いてみない?」「自分の仕事ぐらい自分で見つける」。
(中略)
「保証人が必要だな」「あの目つきを見て」「辞める子がいたら」と次々に就職を断られる。
(中略)
“緑川”の表札。母「BBSもいいけど、そろそろお嫁に行ったら。あなたが一人救っても世の中は変わらないわ」「せめて私と同じ考え方をして。お母さんが唯一の味方なの。私はやりぬくわ」「笠原っていう人が来たよ」。喜ぶ恵子。オルゴール。「雰囲気いいね」「時々遊びに来るといいわ。今度来るときは私の似顔絵を描いてきて」「仕事を探したがダメだった。殴ってくれ。俺はダメな人間なんだ」「自分に甘えてるわ」。信夫、家を飛び出す。「私、間違ってるのかしら。方法を考えないと」。
 恵子、和江を訪ね、「あなたが必要なの」「私、信夫さんを立ち直させる自信がないわ」「本当に好きなら会って。(中略)」。
 恵子、信夫に電話。「4時30分にハチ公前のフジっていう喫茶店で待ってるわ」。
 信夫、和江を見て「騙された」。
 笑顔で歩く二人。
 和江「ネクタイをプレゼントするわ」。
 和江「絵描きを目指せば? 一つのことに夢中になっている人って魅力的よ」。歌を歌う和江。
 背広姿の信夫。“村田商事”。社長(安倍徹)「ケンカ以外には何もできません」「うちの女の子に手を出さんでくれよ。いや、冗談だが。働いてみるかね?」「止めた。止めました」。
 信夫からの電話を待つ恵子。
 デパートの屋上。よりつく子供たちを叱責する信夫。財布をすったトンガリに出会い、「:他人の物に手を出さないっていう約束を忘れたのか」と、トンガリを殴る。
 クラブで深酒をする信夫。奈々子に「お前だけだ」と信夫。「あの子と私、どっちが好き?」客「少年院に就職すれば?」。喧嘩を始める信夫。破壊される店。
BBSの会議。「“6月5日。信夫のことが気になって眠れない”。感傷的な手紙ね。BBSなのに喧嘩の相手に1ヶ月のケガを負わせたことを知らなかったのは問題よ」恵子「信夫を信じてるとしか言えません」「笠原が釈放したらしいぞ」恵子「私、行ってきます」。
恵子「信夫君、迎えてに来たのよ」。
橋の上。恵子「BBSで批判されたの」「みんな俺のせいだ」「気晴らしに海に行かない?和江さんも誘って」。
バスの車中。和江「やっぱり来なかったわね」。
浜辺。子供「笠原の兄ちゃん、来てるよ」。走る和江。岩の先端に座る信夫。「信夫ちゃん」。海に引きずり込まれ「キャー!」。服を絞る二人。
様子を見に行く恵子は、彼らを一目みて、戻ってくる。
岩の上で抱き合う二人。

(明日へ続きます……)

斎藤美奈子さんのコラム・その78&前川喜平さんのコラム・その39

2021-03-04 13:27:00 | ノンジャンル
 恒例となった、東京新聞の水曜日に掲載されている斎藤美奈子さんのコラムと、同じく日曜日に掲載されている前川喜平さんのコラム。

 まず2月24日に掲載された「抜け道人事」と題された斎藤さんのコラムを全文転載させていただくと、
「東京五輪・パラリンピック組織委員会の人事。女性差別発言で退いた森喜朗会長の後任は橋本聖子氏に落ち着いた。橋本氏の後任の五輪担当相は丸川珠代氏。橋本氏は離党したとはいえ、二人とも細田派(旧森派)の自民党参院議員。いわば森氏の身内である。
 今度こそジェンダー平等を実現しよう、日本の組織や会議を変えようとあれほど議論したのに結局これか。男社会(とあえていうが)の高笑いが聞こえてくるようだ。
 新会長の人選に際して組織委は、五輪への深い造詣、大会理念の実現など五つの条件をあげた。もっともそれは表向きの条件。橋本・丸川両氏が選ばれた理由は別にあると考えるべきだろう。
① 国や組織の既定の路線を変えないこと。
コロナ禍を考慮した五輪の中止なんかを主張されてはたまらない。組織が決めたことに逆らわないのが絶対条件。
② 世間のニーズに応えたふりができること。
批判をかわし、ジェンダー平等にも気を配ってますよという顔をするには女性が望ましい。
③ 手っ取り早く事態の収拾が図れること。
幅広い人選や本質的な議論をしている暇などない。近場を探せ。
今度の件に限らず、日本の人事はしばしば①②③が優先される。路線を変えなきゃダメなのに、抜け道を探すのだこれで丸め込めたと思わないでよね。」

 そして、3月3日に掲載された「与党の悪あがき」と題された斎藤さんのコラム。
「次から次へ、よくまあ燃料を投下してくれるよね。自民党議員有志が四十都道府県会議の議長に、選択的夫婦別姓を求める意見書を採択しないよう要請した件。丸川珠代男女共同参画担当相が名を連ねていたことで海外メディアも反応。またもや「ジェンダー平等意識の低い日本」をPRする結果になった。
 選択制がそんなにいやなら、いっそ逆転の発想で民放を「夫婦は妻の氏を名乗る」と変えたらどうだろう。同姓だから家族の絆は守られる。子の氏で悩むこともない。男性の姓が変わると社会生活に支障が出る? いままで築いたキャリアが崩壊する? 何をおっしゃいますやら。だったら旧姓を通称としてお使いになればいいじゃない。
 妻姓強制法は反対論の嵐、不平等だ差別だと大騒ぎになるだろう。でもね、現に女性は、事実上の夫婦強制で同じ状態に置かれているのよ。
 「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」によると、別姓を求める意見書を採択した地方議会は百七十八。うち都道府県議会は、千葉、愛知、岩手、三重、大阪、滋賀、神奈川の七府県(昨年12月21日現在)。
 くだんの圧力文書は地方で広がる意見書の採択に青くなった与党議員の悪あがき。地方自治を踏みにじる行為だし不平等を是正する流れに逆らう暴挙といえる。世論が味方だ、負けるな地方議会。」

 また、2月28日に掲載された「幸運を引き寄せる力」と題された前川さんのコラム。
「東北新社から高額の接待を受けていた山田真貴子内閣広報官。安倍政権で首相秘書官に抜擢(ばってき)され、総務省では情報流通行政局長、総務審議官と重要ポストを歴任。彼女の官僚人生は華々しい成功だ。しかし、この人は一体何のために仕事をしてきたのだろう。
 若い人に向けた動画の中で彼女は「幸運を引き寄せる力」について話している。飲み会は、自分にチャンスをくれる人に出会う幸運に巡り合う機会だ。断る人は二度と誘われない。私は「飲み会を絶対に断らない女」としてやってきた…。
 「飲み会を断るな」とは、まるで昭和時代の人生訓だ。僕は若いころに飲み会への参加を強いられて散々嫌な思いをした。今の若い人にh「嫌な飲み会はちゃんと断れ」と言いたい。
 彼女の言う「幸運」とはひとえに自分のための幸運」だ。それは要するに出世して高い地位に就くことだ。全体の奉仕者として人々の幸福を実現するという使命をどれほど自覚しているのだろう?
 彼女の最大の「幸運」は菅義偉氏に出会ったことだ。だから菅氏につながる東北新社の接待も断らなかった。25日の予算委員会で山田氏は、東北新社や菅正剛氏との関係についてきわめて曖昧な説明に終始した。それは菅首相に対する精一杯(せいいっぱい)の忖度(そんたく)だ。それは必ずや彼女に新たな「幸運」をもたらすだろう。」

 どれも一読に値する文章だと思いました。