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森崎東監督『黒木太郎の愛と冒険』

2011-06-15 14:24:00 | ノンジャンル
 森崎東監督・脚本の'77年作品『黒木太郎の愛と冒険』をスカパーの日本映画専門チャンネルで見ました。
 3人の若者がこの映画で初めて自分たちが映画に関わることを述べます。コーイチとツトムとガンの3人の若者はスタントマンの黒木太郎、別名モンク(田中邦衛)の家に居候しています。モンクはデモのある日にゲリラを装ってジープを乗り回し、警察を混乱させます。一緒に住む姉の大婆(清川虹子)と近所のスーパーの社長(小沢一郎)は恋人通し。ガンは一度寝たエミを捨てたことでコーイチに責められますが、ガンは、芸能人になるために体を売ってそのままぐれてしまったエミのことを責め返します。大人のおもちゃ屋(財津一郎)のところへ、博打の負け金の取り立てをするゴメ(伴淳三郎)がやって来ますが、取り立ての勇気を得るために、飲んではいけない酒を飲んで死んでしまい、モンクとガンは彼の骨を極貧生活を送る彼の娘(杉本美樹)の元に届けますが、彼女らの上の階には猫を20匹も飼う女教師(緑魔子)が住んでいて、そこからノミが始終下に落ちて来るので、娘夫婦の営む床屋に客が入らないということを、モンクはおもちゃ屋に聞きます。「女教師は林間学校の時に元教え子らに輪姦されてから猫を飼って世捨て人のようになったので、もう一度強姦してやれば元に戻る」とおもちゃ屋に言われたモンクは、女教師を強姦するために彼女の元を訪れますが、逆に彼女に同情され、夜を共にします。翌朝、女教師は猫を運び出し、モンクも彼女のことを本物の菩薩だと言います。モンクにその夜のことを聞いたモンクの妻(倍賞美津子)は、自分のことをガンが慕っていると聞いて、ガンと浮気するために彼を呼び出しますが、ガンはモンクは女教師とのことで嘘を言っていると言い張ります。しばらくしておもちゃ屋の元に、太平洋戦争の玉砕での生き残りであるガンの父親(三国連太郎)が訪れ、ガンは父親が以前ゴメを救った飲み屋に父を訪ねていきます。すると、そこでは2人の男(殿川泰司、火野正平)が賭けをしていて、玉砕の生き残りであると言ったガンの父がそのことが嘘でない証拠に本当に腹を切るかどうか議論していて、そこへやって来た男(井川比佐志)はガンの父が寺で腹を切ったと知らせます。ガンが駆け付けると、そこには既に息絶えた父と遺書という本がありました。その夜、中婆の娘の中3のかすみが家出したという知らせがモンクのところに入り、コーイチはトルコ勤めとなったエミとかすみが以前一緒に歩いていたのを見たと言い、かすみが赤田組が経営するトルコの寮にいることを突き止めます。モンクはガンらと赤田組に乗り込み、かすみを救い出して、横須賀の小婆(沖山秀子)のところに隠しますが、モンクが赤田組の者に刺されたという知らせが入り、横須賀に行っていたモンクの妻と娘、そして小婆、ガンがモンクの入院している病院へ駆けつけます。大婆、小婆、モンクの妻らが必死に念仏を唱えて看病する間、ガンは単身赤間組へ行き、逮捕された後パトカーを乗っ取った赤間(麿赤児)らに迫り、日本刀で貫きます。結局、モンクも赤間も命は取り留め、刑務所から出たガンも今度は本当の映画を撮ることができるような気がするのでした。
 ATGの映画とは思えないほどの豪華なキャストで、黒を基調としたモノクロの画面がなまめかしくて魅力的でしたが、あらすじから分かるように登場人物の関係が錯綜していて、非常に分かりにくい映画でもありました。暗い情念に満ち満ちた映画だったと思います。

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岡野宏文×豊崎由美『読まずに小説書けますか 作家になるための必読ガイド』

2011-06-14 02:51:00 | ノンジャンル
 岡野宏文×豊崎由美の'10年作品『読まずに小説書けますか 作家になるための必読ガイド』を読みました。
 「良く読むものが良く書く」というのが文芸の基本である、なぜならテクニックは出尽くしているし、素晴らしい小説は既に山のようにあると考える著者が、例えばハリポタみたいなファンタジーやそれ以上に面白い小説を書きたいと思っている人がいるとしたら、ハリポタの作者以上に小説全般を読んでるぐらいじゃなきゃお話にならない、したがって、そういう人に役に立つブックガイドを作りたい、そして良質のものを厳選して精読できるための情報を提供できるといいと思って企画された対談本がこの本です。紹介されている本のなかで実際に読んでみたいと思ったのは、マーヴィン・ピークの『ゴーメンガースト』三部作、ハラルト・シュチュンプケ『鼻行類』やレオ・レオーニ『平行植物』、大塚英志『物語の体操』、リンダ・シガー『ハリウッド・リライティング・バイブル』、村上春樹『若い読者のための短編小説案内』、小島信夫『馬』、宮沢章夫『時間のかかる読書』、森見登美彦『新釈 走れメロス 他四篇』、佐藤哲也『沢蟹まけると意思の力』、中島らも『ぷるぷる・ぴぃぷる』、ウォルター・デ・ラ・メアの短編『謎』、ジョナサン・キャロル『我らが影の声』、泉鏡花『海異記」と『化鳥』、シャーロット・パーキンズ・ギルマン『黄色い壁紙』、ちくま文庫の小川未明の巻、川崎ゆきお『猟奇王』、エリック・マコーマック『パラダイス・モーテル』と『隠し部屋を査察して』、チャールズ・ラム『夢の子供達』、コニー・ウィリス『航路』、京極夏彦『魍魎の匣』、ガルシア=マルケス『百年の孤独』などなどでした。
 テーマ別(ファンタジー、巧みなプロット、コミック・ノベル、うまい比喩、語り上手、心のダークサイド、キャラクター小説、泣かせる小説、恐怖小説、恋愛小説、ピカレスクロマン、本歌取り、サプライズ・エンディング)に対談がなされ、巻末に一日一冊以上を読むという小説家・桜庭一樹さんも含めての対談と、公募文学新人賞一覧が掲載されています。本を読みたいけど、何から手をつけていいか分からないといった方にもオススメの本です。

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ロマン・ポランスキー監督『ナインスゲート』

2011-06-13 03:25:00 | ノンジャンル
 ロマン・ポランスキー監督・製作・共同脚本の'99年作品『ナインスゲート』をスカパーの洋画★シネフィル・イマジカで見ました。
 稀覯本のあくどい売買をしているコルソ(ジョニー・デップ)は出版者の社長で稀覯本の蒐集家でもあるバルカンから、悪魔が悪魔を呼び出す手引書として書いた『デロメラニコン』からの借用があるトルキア著の『影の王国への9つの門』という稀覯本を、テルファーが自殺する前日に自分が買い取ったもの以外に世界に存在する2册について調べてくれと依頼されます。テルファー夫人に先ず会いに行ったコルソは、本を知人のバーニーに預けた後、彼女から本を買い戻すと言われて色仕掛けに会いますが、本がないことを知った夫人に襲いかかられ、意識を失います。意識が戻ったコルソはバーニーの元を訪れますが、彼は既に殺されていて、彼の隠し戸棚から本を取り戻したコルソは、バルカンに仕事を降りると連絡しますが、断られます。テルファーが本を買ったというスペインのセニサ兄弟を次に訪ねると、トルキアが本を作るのに悪魔のルシファーが協力したと兄弟は言い、確かに本にある9つの図版のうち3つにはトルキアのマークではなくルシファーのマークが描かれていました。コルソは1册を持っているポルトガルのファルガスを訪ね、本を調べさせてもらうと、3つの図版にわずかな違いがあり、その図版にはやはりルシファーのマークが描かれていました。その直後コルソは謎の男に殺されそうになりますが、謎の女に助けられます。調査の結果を聞いたバルカンはその本を手に入れろとコルソに命じますが、そこにまた現れた謎の女とファルガスの元を訪ねると、彼は既に庭の池で溺死させられていて、本は図版のページだけ切り取られ、残りは半分燃やされてしまっていました。コルソは女と、残りの1册を持っているケスラー男爵夫人の元を訪ねると、彼女は火刑に処せられたトルキアを奉る「銀の蛇」という秘密結社があり、テルファー夫人の書いた本が1年に一度行われる儀式で朗読されることを知らされます。コルソがバルカンの使いであることを知った夫人は一旦は本の閲覧を拒否しますが、コルソが自分の本と夫人の本との図版の違いを指摘すると調査を許します。調べている時、コルソは不意に襲われて失神し、目覚めると夫人は絞殺されていて、やはり図版を切り取られた本が燃やされていました。ホテルに帰ると、自分の本がテルファー夫人に盗まれていましたが、馴染みのホテルマンにテルファー夫人が滞在しているホテルを調べさせると、夫人と謎の男の乗る車をコルソと女は追跡し、やがて夫人の実家である城に到達します。そこで謎の男を倒したコルソと女は、夫人の行う儀式に潜入しますが、そこへバルカンが現れて夫人を絞殺して、本とともに立ち去ります。一人それを追ったコルソは途中でまかれてしまいますが、ケスラー夫人の本にはさんであった絵葉書の場所に行くと、そこでバルカンはナインスゲートを開く儀式を行っていて、不死を確信して自らに火を放ちますが、あっさり焼死してしまいます。現れた謎の女は図版が一枚差し替えられていたのでバルカンは失敗したのだと言い、コルソを誘惑してセックスしますが、その最中女の顔は様々な人物のものに変わります。コルソが気が付くと、そこにはセニサ兄弟の名が書かれた紙が残されていて、コルソが彼らの元を訪ねると、兄弟は既に姿を消していましたが、本から引き剥がされた、図版の載ったページが1枚残されていました。そしてコルソがナインスゲートを通ることが暗示されて映画は終わります。
 沈んだ色調の画面が魅惑的でした。ジョニー・デップの良さもよく出ていたと思います。

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北尾トロ・下関マグロ『昭和が終わる頃、僕たちはライターになった』

2011-06-12 06:19:00 | ノンジャンル
 北尾トロさんと下関マグロさんの'11年発行の共著『昭和が終わる頃、僕たちはライターになった』を読みました。お二人が大学を卒業し、ライターという職業につくまでの過程('83年3月から'88年12月まで)を書いた本です。
 お二人が私より1年年上ということもあり、私と共通する部分が多々ありました。例えば、トロさんがうっかりして必修単位を落としてしまい、大学を1年留年したこと(私も大学で文転する際、必修科目を取り忘れて1年留年し、呆然とした経験があります)、トロさんが就職した先での研修初日に会社を辞めてしまったこと(私も最初の就職の研修合宿で気分が悪くなってしまい、研修の後半、部屋で一人サボッて寝ていた経験があります)、トロさんがサラリーマンだけにはならないと決めていたこと(私は営業だけにはなりたくないと堅く思っていました)、トロさんがちょっと面白いかもしれないと思ってジャーナリスト専門学校に通い出したこと(私も最初の仕事を辞めて自宅で悶々としていた時、ふと子供に社会を教えるのが面白いかもしれないと思い、塾教師を始めました)、トロさんが成りゆきで編集の仕事に巻き込まれ、忙しくなっていったこと(私も塾教師を始めると、次々と仕事を振られるようになり、週7日働くようになったことがありました)、トロさんがド素人にもかかわらず、編集の仕事をどんどん振られていったこと(私も最初の就職先で、ろくな経験もなかったのに、2年目にいきなりメインの部署の責任あるポストを与えられ、自滅しました)、トロさんが'83年11月当時、深夜にバイトで丸ノ内線茗荷谷駅の線路の点検を行っていたこと(当時、私は茗荷谷に住んでいました)、トロさんが大学時代の後半から、月曜に『週刊競馬ブック』を買い、週末の競馬に備えていたこと(私もそうした週の過ごし方をしていたことがあります)、トロさんが時間をつぶすため、よく映画館を利用していたこと(私も大学時代、よくそうしていました)、お二人が独立したばかりの上司に会社の経費でご馳走されたこと(私も同僚とともに上司に誘われて会社の独立に付き合い、その会社の経費で随分飲み食いした経験があります)、トロさんが仕事仲間と飲みながら延々と雑談にふけるのを最良の楽しみにしていたこと(私も塾教師の後半の時期は、毎夜のように同僚と飲みに行くのが日課になっていました)などなどです。
 写真が豊富に掲載されているのですが、若い頃のトロさんがあまりに痩せていることと、マグロさんがあまりにいかがわしい雰囲気を醸し出しているのが印象的でした。別にサラリーマンにならなくても何とか生きていけることを教えてくれる本です。

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エルマンノ・オルミ監督『木靴の樹』

2011-06-11 05:16:00 | ノンジャンル
 おとといのAKB総選挙の開票結果は、前田敦子さんの1位返り咲き、柏木由紀さんの3位と指原莉乃さんの9位への躍進という私には願ったり叶ったりのものとなりました。ただ、「ゆきりん」のメジャー化への抵抗感もあり、若干複雑な心境でもあります。4位の篠田さんの根強い人気というのも意外に思いました。

 さて、エルマンノ・オルミ監督の'78年作品『木靴の樹』をWOWOWで再見しました。
 息子のミネクを学校に行かせるように神父に言われるバチスティ。「出演者はベルガモ地方の農民である」「19世紀末ロンバルジア州に4軒の農家が暮らしていた。住居や樹木、一部の家畜は地主の物だった。収穫の3分の2が地主の物となる」の字幕。バッハの『トッカータとフーガ』が流れる中、農作業をする大人たちとはしゃぎ回る子供たち。収穫物の重さを量られるための検量の日には、それぞれの農家が馬車に収穫物を乗せて地主の元を訪ねますが、その中には馬車に秘かに石を積んでごまかそうとする者もいます。地主がかけるレコードの音楽に聞き入る農民たち。貧しいジョパが村を訪ねてくると、貧しいことを是とする農民たちは彼を歓迎します。夫を亡くして6人の子供を養っている女性は、一日川での洗濯に明け暮れます。蚕から糸を紡ぎ出す仕事をする村の女たち。アンセルモは秘かに鶏糞を集め、それを畑に肥料として捲いて、他の者よりも早くトマトを収穫しようとします。豚を屠殺する農民たち。バチスティには3人目の子どもが生まれますが、ミネクはその日、片方の木靴を割ってしまい、冷えきった裸足をひきずって帰ってきます。バチスティはそのことを誰にも言わないようにミネクに言い、その夜秘かに小川沿いの木を切って、ミネクに木靴を作ります。馬の蹄に金貨を隠していた男は、それがなくなっているのを発見すると、馬に当り散らし、興奮した馬は暴れて、村は大騒ぎになります。気が狂ったと思われたその男の元へは祈祷師が呼ばれ、男には怒りの虫がいるとしてまじないを施されます。村の娘マダレーナの結婚式が早朝に行われ、彼女は花婿を伴って、馬車と船で、ミラノで孤児院を併設する修道院の院長をしている叔母の元を訪ねます。そこで一夜を過ごしたマダレーナは翌朝、叔母から一人の幼い男の子を授けられ、里親になるように言われます。その子と共に村に帰ったマダレーナは、叔母から託された手紙を神父に読んでもらい、その子が15才になるまでの養育費は全て修道院が負担してくれることを知ります。アンセルモは収穫したトマトを町に売りに行き、村に帰ってきますが、その間にバチスティが地主の木を無断で切ったことがばれ、村を追放されることになったことを知ります。村にやって来た地主の管理人は、バチスティに預けられていた地主の牛を取り上げていきます。村人が同情する中、家財道具を馬車に積んだバチスティ一家は、夕闇迫る中、村を立ち去るのでした。
 カメラを意識しない純朴な子供の様子は、羽仁進の映画のように、ドキュメンタリーを彷佛とさせるものでした。ロンバルジアの美しい風景もふんだんに取り入れられ、そこで行われる農村の暮らしの姿が淡々と描かれて行く静かな映画でした。