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『棺一基 大道寺将司全句集』

2012-07-28 06:57:00 | ノンジャンル
 オタール・イオセリアーニ監督・脚本・共同編集の'06年作品『ここに幸あり』をDVDで見ました。失言で辞任せざるをえなくなった大臣が、秘書官に妻を奪われ、先妻にも拒まれ、故郷の町へ戻り、昔の仲間たちと再会して、波乱の日々を過ごす様子を描いた映画で、淡々と描かれるその様子がコミカルな味を生んでいました。また、象やピューマなど、様々な動物が出てくるとともに、ミシェル・ピコリが女役で出演しているという不思議な映画でもありました。

 さて、'12年に刊行された『棺一基 大道寺将司全句集』を読みました。東アジア反日武装戦線“狼”部隊に属し、連続企業爆破事件の主犯として死刑囚となっている大道寺がガンにかかっていることを知った辺見庸さんが、最後は言葉にしか救われないと考えて、これまで続けてきた句作を勧めた結果、刊行された句集だそうです。第一句集『友へ』、第二句集『鴉の目』とその後の新作を併せた「全句集」となっていて、収録されている句の数は千を越えています。
 獄中に38年いながらも、未だに革命への思いが消えていないことを示す句が多くあるのに、まず驚きました。例えば、ペルーの人質事件でMRTA全員死亡のニュースに接して詠んだ「春雷に若きゲリラの死を悼む」と「鏖殺を賛美ばかりの春の果」(「鏖殺」とは「皆殺し」のこと)、ゲバラの死後三十年に寄せて詠んだ「ゲバラ忌や小声で歌ふ革命歌」、「過激派のままにてよろしちちろ虫」、「狼は檻の中にて飼はれけり」、「大逆の刑徒偲ぶる寒暮かな」、「アイヌ史に涙を零す弥生かな」、「革命歌小声で歌ふ梅雨晴間」、「八州の闇深々と梅雨あがる」(「八州」とは「日本」のこと)、「革命の夢破れたり遠花火」、同志の由紀ちゃん(浴田由紀子)の法廷で証言して詠んだ「如月に笑み弾けたる同志かな」と「再会の笑み零るるやいぬふぐり」、「日の丸に尿(ゆばり)放てよ蚤虱」、「革命をなほ夢想する水の秋」、「日本に弓を引きをれ油虫」、「牢獄の義民も耐へし炎暑なり」、パレスチナに思いを寄せて詠んだ「宵闇にゲリラの潜む石の町」と「青なつめ抵抗の石高く飛ぶ」、「狼や見果てぬ夢を追ひ続け」「『V NAROD!(ブナドーロ)』と口にしてみる夕蛙」(「V NAROD!」とは「人民の中へ!」のこと)、「狼の夢に撃たれて死なざりき」などなど。そして、救いようもない寒々とした句も多く「残骸の獄屋の梁に寒鴉」、「夏寒く鳩食はれたる血糊かな」などを代表として、逆に言えば明るい句は数えるほどしかありませんでした。また、母の日にちなんだ句も多く、「母の日や差し入れらるる本二册」、「母の日や四半世紀を過ぎ来しも」など、母が亡くなるまで毎年詠まれていたようです。
 死刑囚が詠んだ句を集めた本として希有な本であり、読みごたえも十分あったと思います。

→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/

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