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阿曽山大噴火『裁判狂時代』

2008-06-19 15:40:35 | ノンジャンル
 今朝の朝刊各紙にシド・チャリシーさんの訃報が載っていました。17日に心臓発作のためロスの病院で86才で亡くなったそうです。私にとってのシド・チャリシーさんは'52年の「雨に唄えば」の幻想シーンの中でジーン・ケリーを誘惑するギャングの情婦役のミュージカルシーンが一番印象的です。バレーをやっていた筋肉質の素晴らしいプロポーションと美貌に打ちのめされました。ご冥福をお祈りいたします。

 さて、芸能人で唯一の傍聴マニアである阿曽山大噴火さんの「裁判狂時代」を読みました。内容は単行本「裁判大噴火」に大幅に加筆、修正を加えたもので、大部分は「裁判大噴火」と同じでした。新しく加わった点は、単行本が発行された'04年からこの本が発行された'07年の間に著者が新たに体験したことや、社会的に起こった変化について書かれていることです。
 新たに加わった内容を列挙すると、
・この3年の間に傍聴人が増えたこと
・裁判官や弁護人にノートパソコンを使う人が増えたこと
・75才から急に窃盗癖が出るようになり、裁判で知能テスト(ボケ判定テスト)を受けさせられていた77才のおばあさんの話。
・仕事がないので万引きをするしかない、と堂々と検察官と渡り合う、名前を言わない男の話。
・法の華の被告人質問における福永法源のバカっぷり(ゴーストライターによって書かれた100册以上の自分の著作を一冊も読んでいないことをあっさり認め、天声は嘘をつかない、という法源に「では、天はすべてお見通しなんですね」と検察官に言われ、何も言えなくなってしまう、など)。
・以前日本に存在した陪審員制度の話(36人から裁判所職員が12人に絞り込むが、その手続きは非公開であり、陪審員の議論が1日で終わらないと泊まりになり、有罪になった場合は陪審員を呼ぶのにかかった費用は全額被告人の負担になり、陪審裁判にするかどうかは被告人が決められたことなど)。
・来年導入される裁判員制度の説明
・オウム裁判で何もしゃべろうとしない麻原被告に何とかしゃべらせようとする弁護団の孤軍奮闘ぶり。
・松本の日本司法博物館のハチャメチャな展示ぶりの話。
などです。
 そして著者はあとがきでこう書いています。「(前略)数々の裁判を見てて、常に思うのが、被告人は特別変わった人間じゃないってこと。逆に言えば、いつ自分が刑事裁判を受ける側になっても不思議じゃないってことですね。
 被告人の発言を聞いてると、罪を犯したことには賛同できなくても、犯行までのいきさつや動機には、うなずける点はたくさんある。その辺は理解できなくても、経歴なんかを聞いていると、過去にはいたって普通の生活をしてたことが分かる。
 そんな、自分とはほとんど変わりのない人間が、一歩踏み越えてしまった瞬間を自ら語るんだから、これほど『人間』ってものを見つけられる場ってないと思うんだよね。
 他人や世間に見せるために行なう劇場型犯罪ってのもあるけど、ほとんどが理解のできる人間くさい裁判だらけだ。
 スーパーの店員の目の前で万引きする奴はいないし、電車に5人くらいしか乗ってないのに痴漢する奴もいない。捕まりたくないって思いからでしょう。車で人を轢いて『ケガ人がいる』って警察に連絡してから逃げた人の裁判を見ると、実に人間くさいな、と思うわけだ。
 連続殺人事件の裁判だって、自分と同じ人間がどういう理由があって、そんなことをしたのか、解き明かされていくのは、興味深いという意味で、非常に『面白い』。
 そして、裁判を見るたび、初めて傍聴したときのように、思う。
 『人間って、面白い生き物だなぁ』と。(後略)」
 確かに、裁判を見なくても、この本を読むと、被告人は個性の強いけど、言ってることは理解できる人ばかりでした。被告人を犯罪に追い込むのは、やはり社会的な原因が圧倒的に多いのだと思います。これからは偏見を持つことなく、被告人の人たちをウォッチングしていきたいと思いました。
 ただ面白いだけでなく、多くのことを学べる優れた本だと思います。文句無しにオススメの本です!

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