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ローラン・ビネ『HHhH プラハ1942』

2014-01-01 08:54:00 | ノンジャンル
 明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

 さて、朝日新聞で紹介していた、ローラン・ビネの'09年作品『HHhH プラハ1942』を読みました。
 冒頭部分を要約すると「プラハのある教会の側面には地下室への採光窓がついていて、この窓のまわりは無数の弾痕のある石で囲まれ、ガブチークとクビシュとハイドリヒの名を記したプレートが張りつけてある。僕が見ることができた教会の納骨堂には、今から六十年前にここで起こった惨劇の跡が、恐ろしいほど生々しく残っていた。地下の採光窓の裏側、数メートルにわたって掘られたトンネル、壁と丸天井に残るたくさんの弾痕、二つの木のドア。またパラシュート部隊員の顔写真もあり、チェコ語と英語で記された説明文のなかには裏切り者の名前もあるし、レインコート、鞄、自転車が一か所に集められて展示されているし、肝心なときに働かなかったステン短機関銃ももちろんあるし、ロンドン、フランス、亡命政府、リディツェという名の村、ヴァルチークという名の若い見張り番、よりにもよって最悪のときに通りかかった路面電車、密告者のための一千万コルナの報奨金、青酸カリのカプセル、手榴弾、それを投げる人、無線機、暗号によるメッセージ、当時イギリスでなければ入手できないペニシリンのこと、『死刑執行人』とあだ名された男の支配下に丸ごと入った街、鈎十字の旗と髑髏の記章、イギリスのために働いていたドイツ人スパイ、タイヤのパンクしたメルセデス、運転手がひとり、虐殺者がひとり、ひとつの棺を囲む高官たち、遺体を覗き込む警官たち、恐るべき報復の数々、戦争と死があり、強制収容所のなかのユダヤ人、虐殺された家族、戦死した兵士がいて、生の力と死の力のあいだで繰り広げられた闘争の痕跡があり、いくつかの石に封じ込められた全世界史があった」
 前半ではヒトラーの片腕としてユダヤ人絶滅作戦を進めるハインリヒの半生が描かれ、後半ではロンドンのチェコ亡命政府によるハインリヒ暗殺計画の様子が描かれる。暗殺者として選ばれたパラシュート部隊員は自動小銃を扱うスロヴァキア出身のガブチークと、爆発物を扱うモラヴィア出身のクビシュ。それにヴァルチークという名の若い見張り番。彼らは1941年12月28日にチェコに降下し、モラヴィッツ家に匿われる。1942年5月27日に暗殺の日を迎える。ハイドリヒが出勤するのにたまたま警備がつかなかった日、曲り角で速度を落としたメルセデスの前に躍り出たガブチークは、満員の路面電車と車が重なったにもかかわらず、レインコートを脱ぎ捨て、ステンの引き金を引くが、何も起きない。それを見たクビシュが車の前部座席を狙って投げた爆弾が後部右側の車輪の脇に落ち、爆発。ハイドリヒは「あの野良犬を捕まえろ!」と吠えて、倒れる。ガブチークはグビシュとともに逃げおおせ、最終的に他のパラシュート部隊員と教会に隠れる。ドイツ当局が空前の規模で捜索を実施するが、犯人を逮捕できない。やがて情報提供者に1千万コルナの報奨金が約束される。一方、ハイドリヒは軽傷の手術を受け、一時は安定するが、感染症を起こし、イギリスにあるペニシリンがないばかりに、命を落とす。そしてその報復としてリディツェ村の住民が皆殺しにされ、建物もすべてブルドーザーで更地にされ、地図から消えた。しかしこれは国際世論として糾弾され、“リディツェ”が連合軍側の合言葉になる。ハイドリヒの犯人探しの責任者パンヴィッツは「5日以内に情報を提供した者には特赦を与える」と宣言し、パラシュート部隊員の裏切り者チュルダは密告する。モラヴィッツ家をゲシュタポが訪れると、夫人は青酸カリで自殺し、夫と息子は逮捕され、拷問を受ける。教会は包囲され、回廊に隠れた3人とドイツ側と銃撃戦が始まり、3時間の戦いの末、1人は死に、2人は意識不明の重傷で発見される。やがて地下室も発見され、そこにいた4人は2つのドアを通して銃撃戦に応じ、脱出用のトンネルも掘ったが、弾が尽き、3人とも自殺する。七百人以上の親衛隊がほぼ8時間かけて、ようやく7人の男を仕留めたのだった。

 実際に資料を前にして書く著者自身に視点が向けられながら、書き進められているという希有な小説でした。実際には、上記以外にも多くの抵抗運動やナチスの暴虐な政策も描かれていたことを付け加えておきたいと思います。ちなみに「HHhH」とは「ヒムラーの頭脳はハイドリヒと呼ばれる」との意味だそうです。

→「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/

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