gooブログはじめました!

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

宮田珠己『いい感じの石ころを拾いに』

2014-08-06 09:22:00 | ノンジャンル
 宮田珠己さんの'14年作品『いい感じの石ころを拾いに』を読みました。
 この本によると、石ころ拾いに適した場所の選び方は、様々な種類の石が落ちていること、メノウがあること、火成岩より堆積岩が多いこと(これは宮田さんの趣味)なのだそうです。
 本に出てくる石ころの写真で、すごいと思ったものは、本物らしい風景が描かれている「灼熱の大地」と題された石(p.13)、浮かび出た模様が、まるでグランドキャニオンのような地形や、木立に見えたり、摩天楼のように見えたもの(p.22)など。
  宮田さんのいつもの本のように、文体で面白かった文章も多々あり、例えば、「息子が喜ぶのではないかと思い、思わず(アンモナイトの化石の)1000円のやつをひとつ買う。息子ではなく、自分が喜ぶのではないか、息子をだしに自分が欲しくて買ってるのではないかなどと、読者はゆめゆめ疑ってはならない。むしろここは父の息子への愛を読みとる場面であるという点、念のため断っておく。」、「なんでも、最近武田氏のいるフロアでトラブルが続発し、先月の取材でもらってきた石のせいではないかとあらぬ嫌疑がかけられているというのだ。(中略)何を言っておるか。そんな風評を真に受けてどうする。人間、誰だってたまにはミスをするものだ。石に罪はないぞ。『仕方ないから、営業部の若手にあげました』 おお、営業部なんかに置いたら今度は本が売れなくなるではないか! ‥‥ん? いやいや、そうじゃない。そうじゃなくて、ミスは石のせいではない!」、「最初は石に批判的だった彼女も、大洗で拾った石をきれいに洗って部屋に飾っているというから、いよいよ石拾いフリークの仲間入りか。『違います。津軽に前々から行きたかったんです。石は関係ありません』 本人はそう言うが、大洗といい津軽といい、わざわざついてくるのは、石そのものの魅力に抗いきれなかったか、そうでなければ颯爽と石を拾う私もしくは武田氏の粋な姿に惚れた以外に説明がつかない。」、「今まで一度も死んだことがないことから見ても、私はかなり運がいいほうだ」など。
 また読んでいて、そこに行ってみたいと思った文章としては、「(すごい石の風景といえば)ナミビアの鉱山の周りですかね。あそこはこんなの見たことないって景色ですね。はるか地平線まで褶曲した地層が全部現れてるんですよ。それが黒雲母や花崗岩の地層になってたりその脇にクオーツが露出してたり、あとこのバウムクーヘンのような地層にずどーんと玄武岩が貫入していたり。(中略)砂丘のなかには、ガーネットサンドといって、ガーネットが砕けて砂になってるところがあるんですけど、すごい輝きで、そこに行くと座ったときと立ったときで地面の色が違うんです。光の屈折で。そういうの見ちゃうと、すごく感動します」、「ナミビアには実際に手で触れる世界最大の隕鉄があるんですよ。50トンか60トンかな。それがゴロンとあって」(ここまでのナミビアの話はアフリカ専門の旅行会社『道祖神』の久世清重さんの話)、「(東予の関川は、白雲母が銀色に光り)そこらじゅう光って、すごいですよ。晴れた日は、サングラスがないと。」、「竜飛は青函トンネルが通じた今でも、強烈な最果て感のあるところで、平成になった今も、昭和以前の空気が漂流しているようなそんな場所であった。」、「北海道の海の眺めは、本州とまた違う趣きがあって魅了された。褐色の砂と流木からなる景色に、非人間的な味わいがあるのである。海の色は重く、浜は白く溌溂と輝いたりして人間に媚びることをせず、漁師の存在すら場違いなような非人情な風景。太古の気配というのだろうか、海獣や、むしろ恐竜が似合う荒涼とした眺め。石よりも骨のようなものが落ちてそうである。」など。
 また、面白いと思ったのは「(拾ってきた石を)庭に置いて、水をかけて、それが乾いたり、というのを繰り返しているとですね、年月がたつにつれて、石に風格というか味わいが出てくるんです。(これを“養石”といいます。)」というものでした。
 あと、最後に付け加えておきますが、写真の宮田さんがすっかり痩せこけてしまっていたことに驚きました。(p.17)

 いつもの宮田さんの本と同じく、大変楽しく読ませていただきました。次回作が今から楽しみです。

→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/

最新の画像もっと見る

コメントを投稿