薔薇の名前〈上〉ウンベルト エーコ,ウンベルト エーコ東京創元社このアイテムの詳細を見る |
記号論者ウンベルト エーコの小説です。
もう昔ですが、ショーンコネリー主演の映画を見た後で、小説を読みました。
おかげで分かりやすかったです。
今日、アロマの歴史の講義をしながら、いろいろ想いを馳せていました。
古代ギリシャ時代というのは、数多くの賢人たちが現れて、彼らの智の遺産を私たちは享受しています。
学校で習うユークリッド幾何学だって、この時代から始まるわけですし、原子(アトム)という概念も、この時代のデモクリトスに始まります。
医学の基礎や、その他にもあらゆる体系が作られる時代です。
この古代ギリシャ時代に、プラトンの弟子であったアリストテレスという哲学者が現れますが、このアリストテレスの「詩学」第二部を巡って起きる、不可思議な連続殺人事件を、ショーン・コネリー扮するフランチェスコ会修道士のウイリアムが解決する、というお話です。
最初に映画を観たときは、ヨハネ黙示録をヒントにした残酷な殺され方なんかからも強烈な印象を受け、じっくりと考えたりする余裕がなかったけれど、本を読むと大切な本筋が見えてきたりして、面白かったです。
この中世の修道院という閉鎖的な世界に、ウィリアム修道士が使う眼鏡が、科学の再びの夜明けという仄かな明かりを差し込んでいるかのようです。新しい風が吹いてきたように。
実際、このウィリアムは、近代科学の先駆者とも謂われるロジャー・ベーコンを模しているようです。
さて、そんなウィリアムは、危険な目に遭いながらも、最後には弟子のアドソと共に事件を解決します。
なぜ次々と修道僧が殺されたのか・・それはアリストテレスの「詩学」第二部を読もうとしたからです。
そこには何が書かれていたのか?
この辺りが、ものすごーく面白かったです!
ズバリ、真髄をついていて、うわぁ、巧みに書かれた小説だなあ、と、しきりに感心しました。
上下あって長い小説ですが、興味がある方はどうぞ。お勧めです。