柳蔭書翰

徒然なるままに、音楽関連の話題に拘らず、常ならんこの世の事々書き散らし諸兄のお耳汚しに供したく思います。

解説

2009-04-26 08:11:23 | Weblog
作家の篠田節子が毎日新聞にエッセイ寄せています(4/25)面白いですよ。「男子禁制!!ロッカールーム」というコーナーです。性差は何故あるのかという生物学者の長谷川真理子さんの講演から書き起こしての話、男をしっかりおちょくり叩きながらの文章は軽妙軽快です。長谷川真理子さんという名も私はこういうジャンルの本の翻訳者としてよく知ってますし(ご自分の著書も多くお持ちなのでしょうがこちらは知りません)、竹内久美子さんと並んでこういう性行動を解明していくジャンルの女性学者として出色の人です。生殖行動はひとえに自分の遺伝子を残そうという目的なのだとか、多くの動物でオスの方が見た目が派手なのはそういう意味があるのだとか説明する、あれです。へぇ~と思いますし、話し方が科学の衣を纏いますから信じてしまうのですが、その説を私は人間の目から見て上手く辻褄を合わせただけの後解釈(あとかいしゃく)だ、物語だと常々思っていて「聞いたんかい?!」といつも突っ込み入れてます。若い頃に、人間とは生殖細胞を継代していくための乗り物(vehicle)だという翻訳本を読んで、なんのこっちゃ?と読みづらかったのを思い出しますが、こっち専門の学者の頭、思考回路はこういう風にセットされていて(こういう考え方ができなければこの業界では生きられないのですが)こちらの頭をそう対応させるに時間がかかりました。つまり遺伝子を中心に据える極論なのですが、人間の体は突き詰めていけば最後にはこれだけが残るわけです。肉体は衰え朽ちるばかり、魂も(あるとすれば)どこかへ行きます、目に見えて残るのは先祖代々継がれてきた(とされている)精子卵子の生殖細胞だけだという事実から説明しなおすと言う手順です。身も蓋もない、説です。この二人の女史もこの思考回路でもってバッサリ斬っていかれるのです。確かにこの考え方は面白いんです。特に男のあれこれの行動が滑稽且つ哀れに見えますから。あれだけ威張ってるのはこうこうこういう理由だとか解説されるとこそばゆいことです。そう、この説は動物の営みはメスが中心で(子を産むのはメスですから)、オスは周りで何とか自分に有利に持っていこうとあくせくしているというのが基本図です。私は男が女に勝るなんてこれっぽっちも考えていませんが、長く男尊女卑であった世界の歴史は厳たる事実、それは社会を形成維持していくためにより重要な性は間違いなく女、メスであることを人や動物は本能として知っていて、その言葉は時代時代によって違っていたのでしょうが女を社会維持に専業させようとする意思の発露としての行動であったのではないですか。その手立てとして男が威張って腕力で持って女を抑えつけてきた。このエッセイにはアシカのハーレムのことが書いてあります。あの環境をどう説明するかには異論もあるでしょうが(私は眉唾と思ってます)、あの種はああやって保持されてきたのです、これは確かなこと。なればヒト種はどうか。昨今の少子化は必ず原因があるのでしょう。そこを考える、生々しいきっかけになれば十分に意味のあることと思うのですが、この説はもともと肉体的にも精神的にも劣っているオス達をより萎えさせる(そこまで言う?)結果になるんじゃないかと、それでなくても草食系かテカテカの下ネタ絶倫オヤジしかいなくなってるオス世界を縮ませるんじゃないか、それはつまりメスたちの選択肢を潰していくんじゃないかと思うのです。男はバカよねぇ。そう、その通り、それでいいんですが、どうかそこで止めておいてください。どうかよろしくお願いしますと、そう思うこと、頻りです。
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