発信力の重要性

2021-01-16 11:43:20 | リーダー
昨年8月に自由民主党の総裁に選出され、日本国の内閣総理大臣となった菅首相。
当たり前のことだが、私は菅首相にお会いしたこともなければ、人となりを知ってるわけでもない。
ただ、実務に長けており、調整能力が高く、政治家としての偏差値が高い方だとイメージしている。
何の七光りもなく、横浜市議から首相に上り詰めた方なので、誰も勝てないような高い能力を持ってらっしゃると簡単に推測はできる

しかしながら、就任以降、支持率は下落の一途をたどっている。
特に年末年始の新型コロナ感染症の感染爆発への対応に批判が集中し、遂には『支持しない』が『支持する』を上回ってしまった。

個人的な感想として、首相には発信力が絶対的に不足していると感じる。
国民へのメッセージにしても、記者会見にしても、すべて事務方の原稿を読むだけ。
質疑応答は無難な言葉を事務的に並べるだけ。
官房長官の時代はそのような対応が必要だったのかも知れないが、総理はそれでは務まらない。
明確にメッセージを発信し、国民を引っ張ることのできる発信力が必要だ。
特に、国民にとって利益にならない決定をする際には、なぜそのような決定が必要になったかについて、感情を(表面的だけでも)露にして自分の言葉で理解を求めることが必要だと思うが、首相はそういうことが最も苦手なのだろうと感じる。

発信力の重要性は何も国に限った話ではない。
どんな小さな組織でも同じことが言える。
組織のリーダーが組織の構成員(時に部下)に対して話しかけるとき、特に構成員の反発が予想される事柄を伝えるとき、手元のメモを見ずに感情を出して、その事柄がどうしても必要であることを理解してもらうように話さなければならない。
私はたいてい、以下の手順で話をする。

協調→現実→方針→依頼

協調:まずは話しかける相手方の目線で、相手方が置かれている状況を理解していることを知ってもらう。そしてその状況が簡単な状況でないことも理解していることを伝える。こうすることにより相手方は私が何も知らずに好き勝手なことを言っているのではないのだなと認識でき、話を聞く状態になれる。
現実:話しかける相手方の主観とは異なる主観での見方を話す。第三者がどう感じるか、上司や部下はどう感じているか、できるだけ客観的な意見を相手方の尊厳に配慮しつつ話す。『・・・・・という見方もある』という言い回しは有効。また、世間の意見や世の中の流れについても、必要に応じて触れておく。
方針:リーダー(組織)の方針を伝える。最も大切なところである。ここはできるだけシンプルにわかりやすい言葉で誤解のないようにすることを心がける。
依頼:相手方の特徴やストロングポイントを指摘しつつ、相手方の理解と協力がどうしても必要だということを理解してもらうよう努力する。この際、過去の相手方とのエピソードやそれに対して自分が感じたことなどを付け加えつつ、感情で“頼む!”とまっすぐに伝える。ここはまさに感情を出して語りかけることが必要になる。

人間は感情の生き物だ。
いくら“あの人には感情がない”と言われている人でも、褒められれば嬉しいし、けなされれば感情はマイナス方向へ動く。
リーダーが、心を伴う言葉で相手方の心を揺さぶることができれば、組織のメンバーはたいがいのことを受け入れて、力にすることができる。
もちらん、そのためには平常時からリーダーがやるべきことをやっていなければならない。
都合のいいときにだけ上手にメッセージを発信する偽善者という烙印を押されないように。

リーダーは発信力を持っていなくちゃならないということを、菅首相を見ていて改めて強く感じた。
何のためにメッセージを発信するのか、それは相手を動かすもしくは動かさないようにするためだ。
つまりこちらの頼みを受け入れてくれる状態にすること。
そのためには、相手を動かせるだけの発信力、会話力が必要だ。

首相に足りないものがどの程度あるのかわからないが、これが最も大きな足りないものだと断言はできる。