読書感想文11 ~深追い~

2008-10-11 19:56:06 | 
このカテゴリの記事をアップするのは久しぶり過ぎます。

大好きな作家横山秀夫氏の短編集です。

短編集とはいえ、それぞれがまったく異なる物語ではなく、
ある警察署の様々な担当部署それぞれに属する男達の人生模様を描きます。
交通部門、管理部門、総務部門などなど、
通常の警察小説で光の当てられることのない部署を照射し、
それぞれの遭遇する大きな事件から小さな出来事までを人生模様として描き出す。
横山氏の真骨頂と言える短編集ではないでしょうか。
僕個人的には長編のほうが好きですけど。
これまで、氏の作品は『クライマーズ・ハイ』に始まり、
『第3の時効』『半落ち』『出口のない海』『真相』ナドナド読んできましたが、
今回もかなり楽しませていただきました。

どの作品も短いにもかかわらず、始まってすぐに読み手をひきつける手法はさすがです。
それぞれの短編がそれぞれの専念する職にからめて展開して、
用意されたラストはちょっと悲しかったり、驚いたり、
はかない気持ちにさせるものだったり。
月並みですが珠玉の短編がラインナップされています。

中でも警察事務に従事する方々のちょっとした“事件”。
それは目を引く殺人事件でもなければ、強盗事件でもなく、
我々の日常にも埋もれているかのような“事件”。
そんな事件の数々を、鮮明に描き出してくれます。

あぁ。また横山氏の別の作品を読みたくなりました。
では。