読書感想文7-1

2006-11-28 22:11:17 | 
読書感想文第7-1弾です。
今回のメニューは鬼才中島らも氏の『こどもの一生』です。
僕はらも氏が大好きで、氏のエッセイや小説はたくさん読みました。特にエッセイはとっつきやすい文章で、気楽に読めるかついつでも読むのをやめられるという寝る前や仕事の昼休みにはもってこいなんです。ただ、読みながらニタニタと笑ってしまうので、第三者が見ればすごく気持ち悪い人になってしまうので、注意が必要です。らも氏がかつて代表をつとめた劇団リリパットアーミーの芝居も見に行きました。内容はすっかり忘れましたけど。
さて、この小説ですが、ジャンル的にはホラーです。帯には超B級ホラーとデカデカと書いてあります。B級・・・これは期待できる。ジュルジュル。B級大好きなんですよね。でも、ホラー部分は最後の1/5ほどで、それまではのほほんとしたお話です。瀬戸内海のある無人島にあるメンタルクリニック施設。ここでは精神疾患を抱える患者を【退行】させることにより治療を施しています。薬物と幻覚を生む食材で患者を10歳の子どもに退行させます。でもこれがどういう理屈で治療になるかには言及されていません。思うに、再度子どもになってストレスのない環境で自由にのびのびと振舞うことにより実際に抱えているストレスを解消する、ということでしょうか。そんな施設へ5人の患者が運ばれてきます。5人はそれぞれ10歳の子どもになり、遊んで食べて寝てというストレスのない生活を送ります。そのうちの一人(みっちゃん)がたいへんなわがままといじわるをするようになり、その子ども(実際は50歳程度)に報復するため、残りの4人が【山田のおじさん】なる架空の人物を作り上げ、その架空の人物について話して盛り上がることにより疎外感を味わわせようとし、案の定みっちゃんはスネてしまいます。ところが、たまたまみっちゃんが通りがかったコンピュータルームの画面を覗き込むと、そこには他の4人が考えた山田のおじさんに関するデータが表示されていたのです。山田のおじさんのからくりを知ったみっちゃんはそこへいたずらな書き込みをします。ここまでで作品の4/5を費やすんですね。正直、苦痛でしたよ。読めなくはないがたいして面白くもない内容の文章を延々と300ページ以上読破しないといけないですから。さらに、登場人物のキャラクターが限りなく濃いんです。“こんなやつおるかいなー”と何度心で突っ込んだことでしょう。しかもちっともホラーじゃないし。退屈でした。
ところが、嵐の夜、無人島のはずなのに施設の呼鈴が鳴るところから、怒涛の展開になります。なんと呼鈴を押して入ってきたのは山田のおじさんだったのです。子どもたちが架空の人物として創造した山田のおじさんがいきなり現れて、みんなが考えたとおりに振舞います。唖然とする子どもたち。でもみっちゃんは一人ガクガクと震えています。みっちゃんがいたずらで書き込んだのは“山田のおじさんは狂っていて、会う人を全員殺しまくる”という内容でした。
ふー。今回の感想文はあらすじを書きすぎですね。つまらなくなってしまったかも知れません。お許しを。
山田のおじさんは殺しまくります。しかも山田のおじさんは人間ではなく、子どもたちの創造した架空の人物なので不死身です。困ったことですが、最後には簡単に決着がつきます。つまり、山田のおじさんなんていないんだと気づけばいいのです。心の底から山田のおじさんがいないと思えるようになったとき、山田のおじさんは消え去り、最後の決戦の場であった洞窟から出てきた子どもの生き残り2人を、殺されたはずの他の子どもたちや病院スタッフが迎えるところで小説は終わります。
今回の感想文も長くなっているので、続きはまた次回に。
では。