岸岳は帆柱窯産と伝わる斑唐津茶碗です。
本事例で特筆すべきなのは総釉であるということです。
さらにくわえて造形が極めて丹念であるということ。
茶碗の形を表する言葉に「碗相」というのがありますが、
まさしく碗相に優れた茶碗であるといったところでしょう。
高台内は饅頭のように盛り上がり施釉されてはおりますが、
ザクリとした胎土であることがわかります。
岸岳の斑唐津、皿屋、帆柱のものは土見せのものがほとんどで
このような総釉のものはまさしく眼の鱗が落ちるようなものであります。
(岸岳でありませんが大葉山窯の斑茶碗には総釉のもがあります)
岸岳のものは伝世品が少なく窯跡発掘のものが大多数で、
500年ほどの土中による経年劣化は釉面に必ずあるものです。
陶片を数多く見てきた方にはお分かりとは思いますが、
エビデンスとして高台脇の釉の腐食(釉腐れ)部分の拡大画像を
添付いたします。