それが出来れば社長になってる。

「絶対に辞めて欲しくない従業員」が来ないのと白蟻騒動で、農園の作業が大幅に遅れていると妻の機嫌が悪い。しかもその辞めて欲しくない従業員が建設業を再開して夫婦で仕事をしているいるという目撃証言まで入ってきて、妻は激怒。義弟が覚醒剤で逮捕され、警察から４万バーツ（約１０万円）準備しろと言われたそうなので、早くお金を作るために建設業を再開したと思うが、うちの農園の都合はどうなるのだと妻が怒っているのだ。４万バーツを貸してくれとも言わずに、自分で何とかしようと頑張っているのだから、させてやれば良いじゃないかと私は言うのだが、妻は裏切られたような気分になっているのだろう。だから妻は求人活動を始め、家の前へ看板も出すし、来ない従業員が建設作業をしていると噂の集落にまで新しい従業員をリクルートしに行ったのだ。
効果はすぐ出て、先ずは「辞めて欲しくない従業員」から電話が入った。パラヤジープン（日本人の奥さん）が新しい従業員を探しているとニュースが流れたようで、「求人されているそうですけど私は明日から出勤します」と電話が入ったのだ。妻は来たければどうぞと答えたそうだが、約束の翌日にはまた出勤しない。請け負った工事が終らなかったのだと思うが、電話の一本でも入れれば良いのに、何も連絡をしないで休むので、また妻が怒る。
妻と私がそんな話をしていたら、求人の看板を見て希望者が来られた。前職は５０部屋あるリゾート（ラブホテル）の掃除をされていたそうだ。経営者がファラン（白人）に変わって働き難くなったので退職。退職されて１ヶ月、うちの求人看板が出るのを待っていたそうだ。妻が農園を案内して仕事の説明をしながら面接し、話の受け答えもきちんと出来るので仕事をしてもらうと言う。とりあえず試用期間ということで翌日木曜から出勤となった。
木曜の朝に私が犬の散歩をしていたら「辞めて欲しくない従業員」がようやく出勤、そして新人・・と従業員達が出勤してきた。さっきまで怒っていた妻の顔も笑顔に変わった。これで遅れが取り戻せると私も喜んだが、肝心な妻が病院へ連れて行ってくれと言う。どうしたのかと尋ねると胃の具合が悪いので薬が欲しいそうだ。妻はストレスが胃に出るタイプで、この前に直ったばかりなのに、まただ。病院では医師から食べ物が原因か尋ねられたそうで、従業員が自分の都合ばかりで出勤しないのに腹が立って胃がキリキリ痛むと答えたら、他人の都合を考えられないから従業員であって、それができれば社長になってると医師は笑いながら薬を出されたそうだ。確かにそのくらいに思って従業員と付き合わないと、妻の胃の痛みは止まらないだろう。

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