フルータリアン継承委員会

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近代食は先住民族の歯を破壊してきた――虫歯の真の原因とは?

2020-09-17 | 20 世紀に学ぶ
前回の記事では 1930 年代に実施された猫の実験を取り上げましたが、今回は、同時期の 1930 年代に実施された、先住民族の歯の調査について振り返ります。
調査を行ったウェストン・プライス博士の専門は歯学であり、世界中の 14 種族の食事内容と歯の健康状態が調査されることになりました。
この調査が興味深いのは、同じ先住民族でも、伝統的な食事を守っている地域もあれば、近代食の流入が進んでいる地域もあるという点です。
ちょうど時代的にも、近代食が世界中に広がり始めた時期であり、近代食が先住民族の歯にどのような影響を与えるかをみる上でも絶好のタイミングだったと言えます。

調査の結果と考察は、
『食生活と身体の退化―先住民の伝統食と近代食その身体への驚くべき影響』(ウェストン・A. プライス (著), 片山 恒夫 (翻訳), 出版社:恒志会)
というタイトルで書籍化され、現在では栄養学の古典的名著と呼ばれています。
歯科医療の NPO 団体「恒志会」のホームページから購入することができます。

21 世紀に生きる私たちは、先住民族の虫歯のない歯、きれいな歯並び、力強い顎と骨格を直接見ることはもうできないでしょう。
食のグローバル化が徹底的に進み、外部から食品を輸入せずに独自の食生活を守り続けている先住民族は消えてしまったからです。
そういう意味でも、本著は人類が引き継いでいくべき遺産となるでしょう。
500 ページを超える大著ですが、調査結果を簡単にまとめてみたいと思います。

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■ スイスのレッチェンタール

周囲が急峻な山岳地帯に囲まれているため、外部の世界との交流がなかった地域。

食事内容:主食のライ麦、酪農製品、週に一度の肉類、ジャガイモなど。夏には野菜も食べる。

この地域の子供たちの歯を調べたところ、歯 100 本あたり 2, 3 本しか虫歯がなかった。
しかし、ここから少しだけ離れた地域 (ここでもライ麦と酪農製品を常食) で、近代的な食品を取り入れている集団では、歯 100 本あたり、20.2 本の虫歯が見つかった。
ここでいう近代的な食品とは、精白されたパン、多量の砂糖、缶詰製品のこと。
最近埋葬された人の歯だけが、腐食して穴だらけだっり、失われていたりした。

■ ゲール族(外ヘブリディーズ諸島)

食事内容:魚類、カラス麦に大麦を少し混ぜたものをペーストにした食物、少量の野菜

成長期にある子供の歯は、ほぼ完璧といってよく、虫歯にかかったことのある歯の割合は、100 本中 1.3 本。
しかし、近代化している地域では、子供たちの虫歯の割合は、100 本中 32.4 本だった。
近代化した地域では、精白された小麦粉、缶詰の野菜、砂糖、ジャム、マーマレードなどの近代食品が出回っていた。

■ エスキモー(アラスカ地方)

食事内容:鮭、鮭の卵、アザラシの油、貯蔵された海藻・緑草・果実

クスクオキム川流域に住むいろいろな集団を調べた結果、原地の食物だけを食べていた 72 人では、2138 本の歯のうち、わずか 2 本、つまり 0.09%しか虫歯がなかった。
しかし、同地域で近代食を取り入れている 81 人では、2254 本の歯のうち、394 本、つまり 13%が虫歯にかかっていた。この数字は、原地食だけの場合に比べると、144 倍に相当。
他のさまざまな地域でも同じ傾向が見られた。
また、缶詰などの近代食を採用した世代では、顔かたちや歯列弓が著しく変形している者が多い。鼻孔が小さくて、口でしか呼吸できない者もいる。
近代文明と接触するようになってから、アラスカに住むエスキモーの人口は急激に減少した。

■ 北米インディアン

食事内容:鹿の肉、鮮魚や干物、魚の卵、少量の野菜など。

87 人の歯、合計 2464 本を調べたが、虫歯にかかったことのある歯は 1 本もなく、腐蝕した形跡のある歯が 4 本見つかっただけで、数字に直すとたった 0.16%であった。
しかし、白人の食物の接点であるテレグラフ・クリークでは、虫歯の割合は 25.5%にも達し、川を下ってアラスカの最前線の町にやってくると、虫歯は 40%にまで増加した。
虫歯の増加とともに結核になる者も増え、虫歯と結核には確かな相関関係が見られた。結核で死ぬ者が多く、インディアンの死亡率に多大な影響を与えている。
近代食を常食するようになったインディアンでは、子供の代になって顔や歯列弓の形に著しい変化が見られた。

■ ポリネシア人(ハワイ諸島、サモア諸島など)

食事内容:各種貝類を含む海産物、タロいもなど。

最も孤立した地域に住み、原地食だけで生活している集団では、虫歯の罹患率は 0.6%だったが、
精白小麦、砂糖、缶詰などの輸入食品を摂取している集団では、33.4%になった。

■ メラネシア人(ニューカレドニア、フィジー諸島)

原地の食物だけで生活している人々では、虫歯の罹患率は 0.14%だったが、輸入食品を利用している集団では 26%だった。
その土地で取れる食物の摂取が大幅に減り、逆に、精白小麦粉・砂糖・甘味料添加食品・缶詰・精白米などが増えると虫歯の罹患率が一気に上昇する。
近代食を取り入れた親から生まれた世代では、顔の形や歯列弓の形に著しい変化が見られた。
自殺の唯一の理由が、「虫歯による耐えがたい痛み」となった。

■ アフリカ諸民族

マサイ族のように、肉やミルクなどの動物性食品を主食とする民族もいれば、キクユ族・キアンブ族のように、サツマイモ・コーン・豆・バナナなどの植物性食品を主食とする民族もいる。
どの民族でも、原地食だけで生活している場合は、虫歯の罹患率が低かった。
しかし、コーヒー農園で働き、精白小麦粉・砂糖・精白米・缶詰などの輸入食品を支給されていた人々は、ひどい虫歯にかかっていた。

■ オーストラリア原住民

政府の与える近代的食品を摂取している原住民ほど虫歯が蔓延している。

■ トレス海峡諸島(オーストラリア北方の島々)

海の幸に恵まれ、タロいも、バナナ、パパイア、プラムなどの植物も豊富に生育している肥沃な島々。
近代食品が流入する以前に生まれた人々には、歯列弓の異常は全く見られなかった。
しかし、政府直営店が設置された島や、輸入食品を利用してきた島に住む人々には、歯列弓の異常が多く見られた。

■ マオリ族(ニュージーランド)

世界の先住民族の中でも、虫歯に対する抵抗力が最も強く、白人文明の影響を受ける前は、虫歯の割合は 1 万本に 1 本という低さだった。
原地の食物を食べなくなり、精白小麦粉、甘味食品、シロップ、缶詰などの近代食を食べ出すと、ひどい虫歯に悩まされるようになった。

■ ペルーの古代文明人

1276 個の頭蓋骨を調査したところ、近代人によく見られる歯並びの悪さは見られなかった。

■ ペルー・インディアン

近代化した集団において、虫歯に対する低い免疫、および歯列弓の変形が見られた。

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・虫歯の原因の本質はどこにあるか?

私たちが虫歯の原因について考えるとき、どのような食べ物が歯に付着して、それがどれだけ滞留し、それがどれだけ虫歯菌の繁殖につながったかという観点で考えることが多いように思います。
フルータリアンは果物を多く食べるので虫歯になると思っている人が少なくないのも、この考え方がベースにあるためでしょう。
しかし、この考え方では先住民族の歯に虫歯がない理由を説明することはできません。
先住民族は、現代人のように頻繁に歯磨きをするわけではないからです。
虫歯だけではなく、歯列弓や顎、顔の骨格の形成にも悪影響が見られたことから、全身の栄養状態が密接に関係していると考えるのが自然です。
近代食は骨の形成に必要なビタミンやミネラルが食品加工過程で著しく損傷しており、それが全身の栄養不足を引き起こしたと、プライス博士は推測しています。  
精白小麦や砂糖などの近代食は、カロリーだけは与えてくれますが、ビタミンやミネラルは十分に与えてくれません。
食べ物を加工することで保存性と流通性が向上しましたが、その代償として、ビタミンやミネラルを犠牲にしたわけです。

プライス博士の食生活調査は、歯の写真も多く掲載されていて、加工食品の恐ろしさを改めて教えてくれるものです。
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