フルータリアンの備忘録

フルータリアンとは、果物を主食にしているベジタリアンのことです。人間は果食動物? 果食動物で死ぬ?

アメリカでフルータリアンが増えた理由――80/10/10 ダイエットについて

2020-12-19 | フルータリアンのメモ
アメリカではここ 10 年でフルータリアンが増加したと言われています。
その原因の一つとして、ダグラス・グラハム博士によって提唱された「80/10/10 ダイエット」の影響が考えられます。

グラハム博士自身がフルータリアンの実践者であり、トライアスロンのアスリートでもあります。
日本では、ヴィーガンやローフードなどの食生活を実際に実践しながら健康情報を発信している医者やアスリートが極めて少ないため、
グラハム博士のような存在はうらやましくもあります。

「80/10/10 ダイエット」が多くの人にとって説得力をもつ点は、
"自然界における人間の立ち位置"をしっかり見直した上で栄養学の議論を進めようとするところです。

■ 自然界における人間の立ち位置とは?

◇ 以下の特徴を比較しただけでも、ヒトは肉食動物と生理的に異なる動物であることがわかります。

・歩き方:肉食動物は四足歩行であるが、ヒトは二足歩行。
・舌:肉食動物の舌はザラザラしているが、それ以外の動物は舌が滑らかである。
・爪:ヒトは鋭い爪を持っていないため、動物の皮や肉を引き裂くことが極めて難しい。
・向かい合わせにできる親指:ヒトの親指は向かい合わせにできるため、果物をつかんで収集する上で都合が良い。
・出産:ヒトは通常、一回の出産に一人の子を設けるが、肉食動物は複数の子を設ける。
・腸の長さ:ヒトの腸は、胴体の約 12 倍の長さである。これに対して、肉食動物の腸は、胴体の 3 倍程度の長さしかない。体内で肉が腐敗・分解するのを避けるため、肉食動物の腸は短い。
・乳腺:ヒトは胸部に一対の乳首を持つが、肉食動物は腹部に複数の乳首を持つ。
・睡眠:ヒトは一日の約 3 分の 1 を睡眠に当てるが、肉食動物は 18~20 時間、場合によってはそれ以上休息する。
・発汗:ヒトは全身の毛穴から汗をかくが、肉食動物は舌から汗をかく。
・視覚:ヒトはすべての波長域の色を認識できるため、熟した果物を識別することができる。肉食動物は一般的にフルカラーで見ることができない。
・水の飲み方:水を飲むとき、ヒトは唇で水を吸い上げるのに対して、肉食動物は外側に突き出た舌で水をなめる。   
・ビタミン C:ヒトはビタミン C を食べ物から摂取しなくてはならないが、肉食動物はビタミン C を自分自身で合成することができる。
・顎の動き:肉食動物の顎は、ヒトの顎とは違って、横方向に動かすことが出来ない。   
・歯:肉食動物の臼歯は尖っていて鋭い。ヒトの臼歯は平らで、食べ物をすりつぶすのに便利。ヒトの犬歯は、肉食動物の牙とは全く異なる。
・脂質に対する耐性:ヒトは、少量の脂肪しか処理することができないが、肉食動物は高脂肪食で生きていくことができる。
・唾液・尿の pH 値:ヒトを含む植物食の動物の唾液・尿は、ほとんどの場合アルカリ性に維持されるが、肉食動物の唾液・尿は酸性である。
・食事の pH 値:肉食動物の食事は酸性食品である。酸性食品はヒトにとっては危険である。ヒトにとって望ましいのはアルカリ性食品である。
・胃酸:肉食動物の胃酸は、ヒトの胃酸と比較した場合、少なくとも 10 倍以上強力である。場合によっては、100 倍、1000 倍以上強力な胃酸を持つものもいる。
・尿酸:肉食動物は食べた肉の尿酸を代謝するためウリカーゼという酵素を分泌する。ヒトはこの酵素を分泌しないため、アルカリ性のミネラル (主にカルシウム) によって尿酸を中和しなくてはならない。
・消化酵素:ヒトの消化酵素は、果物の消化に向いている。唾液のプチアリンという酵素により、果物の消化が始まる。肉食動物はプチアリンを分泌せず、消化酵素の構成がヒトとは異なる。
・糖分の代謝:果物のグルコースとフルクトースは、ヒトの膵臓に負担をかけない。肉食動物は糖分をうまく処理することができない。

◇ 草食動物でもない

ヒトは、草食動物とは違って、セルラーゼなどの植物分解酵素を分泌しない。
特に、筋の固い野菜は不溶性繊維が多いため、消化することが難しい。
ヒトは、野菜を食事に含めることはできるが、それを主食にして十分にエネルギーを満たすことは難しい。

◇ 穀食動物でもない

ヒトは穀物を生で食べることが出来ない。穀物を加熱したとしても、その複合炭水化物を消化するためには多大なエネルギーを要する。
自然界の多くの鳥類は穀物を生で食べることができる。
穀物食の鳥類は、素嚢(そのう)と呼ばれる小さな袋が喉にあり、そこで穀物を発芽させてから体内に取り込む。
ヒトの穀物食の歴史は、ごく最近の 10000 年でしかない。

◇ 芋類・豆類もヒトの食性に適さない

豚などの土を掘る動物は、突き出た鼻を持っている。
ヒトは、道具がなければ土を掘るのが苦手である。
そもそも土を掘りたいという動機を持たない。
ヒトは、土で汚れた食べ物を嫌うが、豚は、土で覆われていても気にしない。

鳥類や豚を除けば、豆類を進んで食べようとする動物は少ない。
ほとんどの哺乳類にとって、生長した豆類は消化に悪く、有毒である。
穀物・芋類・豆類を消化するためには、大量のアミラーゼ酵素が必要であるが、ヒトはプチアリンという酵素を唾液に少量しか分泌しない。
この少量の酵素は、熟していない果物の炭水化物を分解する分には適している。
また膵臓から分泌されるアミラーゼも量が限られている。

◇ 雑食動物でもない

現在のヒトを見る限り、まるで雑食動物であるかのように振る舞っているが、料理用コンロ、各種料理器具、調理・保存技術、スパイス・調味料の助けがなければ、雑食を続けることは難しい。
道具も火も使えない自然状態に近づくほど、ヒトは雑食の傾向を無くし、果物に頼らざるをえなくなる。

◇ ヒトは果食動物である

自然状態では、ヒトは果食動物である。
チンパンジーやオランウータンをはじめとする果食動物の主な食べ物は、果物と柔らかい葉っぱである。
果物が熟したとき、その炭水化物は単糖 (グルコース、フルクトース) に転換される。
ヒトはこの単糖を、さらなる消化をせずにそのまま利用することができる。
また、生の熟した果物は、ヒトの視覚・嗅覚・味覚を魅了する。

■ 「80/10/10」をどう解釈すべきか

グラハム博士が提唱するダイエットはフルータリアンですが、フルーツ 100%というわけではなく、
フルーツを主食にして、それに柔らかい葉っぱとナッツ類を加えたものです。
その上で、総摂取カロリーの 80%を炭水化物、10%をタンパク質、10%を脂質から摂取するようにします。
例えば、一日に 2000 キロカロリーを摂取する場合、炭水化物から 1600 キロカロリー (80%)、タンパク質から 200 キロカロリー (10%)、脂質から 200 キロカロリー (10%) の割合で食事が構成されるようにします。
つまり「80/10/10」は、総摂取カロリーにおける炭水化物・タンパク質・脂質のそれぞれの割合を示しています。

生理的にヒトと最も近い動物であるチンパンジー・ボノボ・オランウータンの場合は「88/7/5」という割合で、
「80/10/10」にかなり近くなっています。
また、20 世紀に世界三大長寿地域とされたアブハジア (ロシア)・ビルカバンバ (エクアドル)・フンザ (パキスタン) の人々も「80/10/10」に近い割合で栄養を摂取していました。
ジョン・ロビンス著『100 歳まで元気に生きる!』 (訳者:高橋 則明、出版社:アスペクト) では、以下のデータが示されています (74~75ページ)。

(植物性食品の割合が圧倒的に高いこと、加工食品が極めて少ないこと、肥満が存在しないことなど他に注目すべき点も多い。)

典型的な食事をしているアメリカ人の場合、「42/16/42」という割合で、
かなり脂質の割合が高くなっています (ベジタリアンやヴィーガンの場合もこの割合に近いことが多い)。
グラハム博士は、たとえ植物性の油であっても、脂質の摂りすぎは健康を害すると警告しています。
インドは菜食主義者が多いにもかかわらず、肥満・糖尿病・心臓病になる人が多いです。
それは、カレーをはじめとする様々な料理に植物油を使いすぎてしまうからです。
インド料理の油っこさに驚いた経験はないでしょうか?

では、フルータリアンの食生活を実践しながら「80/10/10」の割合に近づけるにはどうすればよいでしょうか?
カロリー計算などの細かい数値管理は必要ありません (数値管理を伴うダイエットは、長続きせず失敗する可能性が高い)。
「80/10/10」のコツをわかりやすく一言で言うと、「脂肪を摂りすぎないように注意する」ということです。

アメリカでローフードを実践している人たちの中には、意外と太っていたり体調を崩していたりする人もいて、
「ローファッティ」などとも呼ばれているようです。
そのような人たちの食事の特徴は、ナッツを多用したスイーツ類、アボカド、サラダのドレッシングなどから大量の脂質を摂取していることです。
脂質の摂取量を減らすことで健康を取り戻した事例が多く報告されています。

私は、ナッツ類を食べないフルータリアンなのですが、その理由は「アボカドが好きすぎてそこから十分に脂質を摂取しているから」です。
アボカドであれば、一日一個で十分です (というわけで「アボカド一日一個健康法」にも興味を持っています)。
自分なりのやり方で、脂質の摂取量をコントロールする意識を持ちたいと思っています。

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