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「ワンライン」

2018-03-04 07:00:00 | 編集手帳

2月23日 編集手帳

 

 映画『男はつらいよ』の寅さんに、
こんなセリフがあったのを思い出す。
「お前と俺とは別の人間なんだぞ。
 早い話が、
 俺がイモを食って、
 お前がぷっと屁をするか?」

まあ、
例えは美しくはないけれど、
寅さんは現実主義者なのだろう。
別々の体に一つの心なんて、
言うはやすし、
行うは難し。
要するに、
きれいごというんじゃないよと言いたいのである。

もし持論を改めるとすれば、
平昌五輪スピードスケート女子団体追い抜きで、
日本チームが見せた絶技だろう。
「おいなんだ、
 パシュートかパラシュートだかしらないけど、
 一心同体じゃないか」

すね者の寅さんが舌を巻く場面を想像してしまった。
決勝戦のスタート直後の映像である。
まだ腕や足がばらばらに見えたオランダから、
日本の3選手にカメラが切り替わった瞬間の驚きを記憶に焼きつけた方は多かろう。
正面からの映像で、
振り上げる手、
左右に交互に開くスケート靴がほぼ重なって見えた。

金に輝くメダルに導いたこの一糸乱れぬ所作は「ワンライン」と呼ぶそうである。
セレモニーでも、
ぴたり呼吸を合わせたかのように笑顔が並んだ。

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