鈴木氏は、組織や団体に属さず無所属を通し、発表の場は個展のみに限定し、実力で陶芸界で
活躍し、更に見る人の度肝を抜く作品も発表しています。
② 鈴木氏の陶芸
) もう一つの大きな作陶として、大壷作りがあります。
b) 2m級の大壷の制作への挑戦。
鈴木氏が挑戦する大壷は、形や装飾は1.4m級の大壷と同じにするそうです。
但し、1.4級が同じ粘土を使用したのに対し、今回は各パーツ毎に種類を変えるそうです。
イ) 高さ2mの作品にする為には、乾燥や焼成で土が収縮しますので、生の状態で、
2.3~2.4mにする必要があります。
ロ) 1.4m級と違い、作り方も替える必要がある様です。
前回は土の紐を積み上げる方法を取りましたが、今回は土の量も多く、重量も飛躍的に
増える為に、発砲スチロールの型で作るとの事です。
その詳細は不明ですが、以下のようにするのではないかと、想像されます。
○ 発砲スチロールで壷の型(内型)を作る。
・ 発砲スチロールの塊を所定の高さまで積み上げます。(専用の接着剤が有ります)
・ 電熱線を利用したスチロールカッター(色々な種類が市販されています)や、刃物の
カッター(専用のカッター有)で、削り出し型を作ります。尚、電熱式カッターは、熱で
スチロールを溶かしながら切断しますので切断面も綺麗です。
・ 型の高さは生の作品の高さにしますが、径は壷の肉厚分だけ細くします。
・ 型を分割する為に、切断箇所に印を付け、同時に番号を付けます。
電熱式カッターで「バラバラ」に切離します。
分割した型には、コーティングで強度を補強すると共に、離型剤を塗り土離れを良く
します。
・ 厚みのあるタタラを作り、型に被せ合わせて切り取ります。
・ タタラの上に必要な装飾を施します。このパーツにも番号を振っておきます。
○ 土の種類が異なれば、縮み率も異なりますので、型通りに作っても繋ぎ合わせる時に
会わなかったり、隙間が発生する事も起こります。
又、自然乾燥でも土は、スチロールの上を滑りながら縮みます。この際割れが発生
し易いですので何らかの対策が必要です。
○ 「バラバラ」の状態で素焼きし、文様や色付けした後施釉し、本焼します。
○ 焼き上がったパーツは、金継(呼継)ぎの方法で、接着し組み立てます。
・ 種類の異なる土で焼成すると、合わせ目に隙間や出っ張りが生じます。
少々の出っ張りは、「ダイヤモンドやすり」で削り調整し、大きな隙間はクサビの様に
別の陶片を差し込むそうです。
ハ) 最大の問題は、作った作品を何処に置くかと言う事らしいです。
組み立てた場所から移動させる事が困難になるからです。
③ 鈴木氏の作品。
) 酒器:
「弥七田徳利」: 高 18、径15 cm。 「黄瀬戸徳利」:高 12.8、径 7.7 cm.。
「染付片口酒器」: 高 10.8、径13 cm。「志野ぐい呑」: 高 5.4、径6.2 cm
「弥七田ぐい吞」: 高 5.4、 径 7 cm。 「瀬戸黒ぐい吞」: 高 6.4、径6.4 cm。
注: 弥七田織部とは、江戸時代に牟田洞、窯下、中窯(岐阜県可児市久々利大萓) の
近くの窯で焼成された、鉄絵や緑釉で描かれた繊細な文様 の焼き物で、現在の
織部焼のずっと以前に焼かれていました。
) 懐石料理用食器 :
「織部割山椒」(五客): 高 10.2、径10 cm。「黒志野片口鉢」: 高 11.3、径34.2 cm。
「五色飯碗」: 高 5.5、径11 cm。 「志野茶碗」: 高 9.3、径12.5 cm。
「絵織部馬の目皿」: 高 4.5、径 30.2cm。
) 茶道具類 : 「ロス織部水指」、「呼継茶碗」、「黄瀬戸茶入」、「織部香合」、「織部蓋置」
「志野茶碗」、「織部花入」などの作品があります。
) 予想外の作品
「弥七田大壷」 : 高 130、 径 130、奥行 130 cm。
「絵織部椅子」 : 高 47、 幅 21、 奥行 18.5 cm。
「鳴海織部珈琲碗」 : 高 17.2、径14 cm。 3本脚が異常に長い器です。
「ハワイ織部珈琲碗」 : 高 12.8、径13 cm。 脚元が異常にくびれています。
・ その他 30段も積み上げた織部の重筥(はこ)、 一人では持ち上がらない焼締や織部の
土瓶など、常識外の形をしている作品を多く作っています。
次回(岡部嶺男氏)に続きます。