わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

質問 25 二度焼きに付いて。

2016-08-29 14:40:52 | 質問、問い合わせ、相談事
「りぼん」様より、以下の質問をお受けしましたので、私なりの回答を致します。

現在、主に、転写での上絵付けをしております。透明釉の白磁器のすり傷に常に悩まされております。

再焼成で修正できるとのことで、是非、方法をお伺いしたくよろしくお願いいたします。

電気炉の焼成温度(当方の電気炉は1350度まで上がります)、焼成時間

ご多忙のところ、恐縮ですが是非ともご教授ください。よろしくお願いいたします。


 ◎ 明窓窯より。

1) 上絵付け焼成後に付いた、透明釉の「すり傷」は二度焼きでは修正できません。

  透明釉を掛けた作品と、上絵付けの焼成温度が異なりますので、透明釉を再度熔かす温度で焼成

  すると、上絵付けが飛んでしまう(消失する)からです。完全に焼失し表面が綺麗に成れば良い

  のですが、多くの場合、上絵付けの残渣が残り、表面を汚しますので、結果的に効果ありません

2) 上絵付け前の「すり傷」であれば、二度焼きで修正(消す)する事ができます。

  再度、透明釉が熔ける温度で焼成すれば良い訳です。そのまま再焼成するか、大きな傷であれば

  筆や刷毛で傷部分に透明釉を塗ります。

3) 上絵付け前に釉の「すり傷」の有無を確認してから、上絵付けを施す事で失敗を少なくします。

4) 何よりも、すり傷が出来る原因を調べ、取り除く事が先決事項となります。

  磁器を焼く程度であれば、1280~1300℃で焼成していると思われます。(最低でも1250℃

  程度以上は必要です。)この程度の温度で焼成した釉の表面に、陶芸作業中に「すり傷」が出来

  る事は不自然です。転写の際に刃物や固い物は不要ですので、傷付く事はほとんどありません。

 ① 考えられる事は、窯入れ窯出しの際が疑われます。即ち、狭い空間に無理して窯詰めし、

  隣同士の作品で擦れ合い、傷が出来る事が考えられます。又、上扉の電気窯の場合、作品を上部

  に引き抜く様にして取り出しますので、作品の下部が見え難く「ぶつけたり、すり」傷を付ける

  恐れもあります。

 ② 作品の梱包の不十分による傷が付く場合もあります。

  特に上絵付けされた部分は、透明釉部分より強度的に弱いですので、作品一個一個を梱包材で

  包む必要があります。又作品同士が摩り合わない様に、クッション材を間に入れ「ガタツキ」を

  防ぐ事も大切です。

 ③ 釉の表面が軟らかい場合。

  釉はガラス質ですので、十分熔けていれば、ダイヤモンドヤスリ掛をける等特殊な作業をしない

  限り、傷付く事はほとんどありません。カッターナイフや鉄鋼ヤスリでは、ほとんど傷が出来

  ません。但し、焼成温度が所定より低い場合や、特殊な釉の配合で釉の表面が若干弱い(軟ら

  かい)場合には、傷付き易くなるかも知れません。

 ④ すり傷であるかの確認が必要です。質問者は「すり傷」と断定していますが、一度疑って

  下さい。表面の傷は「すり傷」よりも「貫入(にゅう)」や「ひび」「釉溜り」その他の傷の

  方が頻繁に起こり易いです。それ故「すり傷」であるかを再度確認してから対策をとる事を

  お勧めします。

 ◎ 結論。 

多くの場合、「すり傷」は作品の取り扱う際の不手際で発生すると思われますので、作品の

取り扱いを慎重に行う事で、傷の発生を減らして下さい。

以上。 又不明な点がありましたら、再度ご質問下さい。
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