わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

焼き物の着物(色彩)42 中世の信楽焼 1

2014-03-26 22:37:05 | 陶磁器と色彩
信楽焼きや中世の信楽焼きは、近江(おうみ)国甲賀郡信楽郷(現在の滋賀県甲賀郡信楽町の山麓)

一円で制作された焼き物を言います。信楽は位置的にも京都や大津伊賀上野、亀山への道もあり、

湖東地方から、日野、水口を通り奈良へ通じる主要な交通路が存在していました。

時代的には須恵器の衰退する9世紀末から10世紀に掛けてから、鎌倉時代までの空白期間があり、

信楽焼きは鎌倉時代になってから登場したと思われています。

1) 信楽焼きは、備前、丹波焼きと同じ様に、無釉の焼き締め陶器です。

  鎌倉時代から室町時代にかけて焼かれた種壺・雑器をいう。

2)中世の信楽古窯の制作品に付いて。

 ① 使用粘土は一般に蛙目(がいろめ)粘土や木節粘土と呼ばれる、花崗岩が風化分解して出来た

  石英や長石粒を含んだ、耐火度に富んだ土を使っています。現在陶芸材料店で、市販されている

  古信楽と呼ばれる、白い粘土(細目、粗目など)とほぼ同じ粘土です。

 ② 作られた作品は、主に壷、甕、擂鉢の三点セットです。

  ) 壷の器形には、胴長で口頚部が外に開いた形の物と、胴がずんぐり丸い物があります。

    肩の張り具合も時代によって差があります。肩の張りが強い形の物が一番古く、次に

    肩の線が上がり端正な形になります。やがて次第に撫肩に成りながら、肩の線が下がり

    ながら美しい形に成ってゆきます。

  ) 口造りも大きく外に反った形から、口頚部が直立し口縁部が外に反る形となり、室町時代

     末期になると、玉縁状の口造りになります。小壷などには、二重口のものもあります。

  ) 肩に見られる「桧垣文」は信楽焼きの特徴の一つですが、14~15世紀前半の作品に

    集中して付けられている文様で、小壷には必ずと言って良い程付けられています。

  ) 擂鉢は他の中世窯と同様に、平底で口縁の一部を折り曲げて、片口状にした物で、内側には

    卸目(おろしめ)が付けられ、時代が降るに従いその目も細かくなり、その数も増えます。

 ③ 制作方法は、大壷や大甕などでは、粘土紐の巻上げの方式です。

  ) 回転盤の上に作品の底となる円盤状の粘土を作ります。

  ) 粘土紐を巻き上げ、一定の高さまで作ります。紐と紐の繋ぎ目は痕が残らない様に平らに

    伸ばします。一旦乾燥させ更に上に継ぎ足します。

  ) 胴の部分は3~5段位継ぎ足して高さを増します。

  ) 最後に轆轤水挽きで、口頚部を作ります。

  ) 器の表面は箆(へら)削りによって形を整えたり、水で濡らした刷毛で表面を綺麗に

    します。

  ) 「下駄印」と「窯印」、「ユミ痕」に付いて。

   イ)下駄印」は底面に残った「ニ」の凹みで、下駄の歯の様な形からこう呼ばれています。

     これは回転代に付けられた二本(又は一本)の凸状の棒の痕で、粘土が回転台に密着

     させる為の物です。室町後期から桃山時代の作品に多く、信楽独特の物としていましたが

     近年類似の物が、古丹波や古備前焼きなどでも、確認されています。

   ロ)「窯印」が壷の肩には見当たりません。

     一般に他の窯場で見られる、壷の肩に箆などで彫る印などの「窯印」は描かれている

     場合は少なくなっています。

   ハ) 「ユミ痕」とは、成形した作品を回転台から降ろす場合に使う道具です。

     藤蔓(ふじつる)を曲げて底を挟む様に巻きつけ、取り上げますが、その際「ユミ痕」が

     付きます。ほとんどの壷や甕の底にその痕が付いています。

  尚、擂鉢や小壷なども基本的には同じ方法をとります。

 ④ 窯は「双胴式窖窯」と呼ばれる信楽独特の窯が使われています。

以下次回に続きます。

  
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