わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

焼き物の着物(色彩)27 奈良三彩と緑釉 2

2014-03-06 20:36:34 | 陶磁器と色彩

我が国で最初に登場する、意識して色を付けてた焼き物が奈良三彩です。この事は無彩色の焼き物

しか無かった我が国では、革命的で画期的な事柄です。

3) 奈良三彩と緑釉の技法。

 ① 素地は唐三彩や渤海三彩と違い、小砂を含むザックリした土で、一見蛙目(がいろめ)風の

    土です。土は、大阪府の北東部、生駒山系の北端の肩野(交野、かたの)付近から採取した

    ものと思われます。酸化焼成で卵殻色に、還元焼成で灰白色に成ります。

    尚、「造仏所作物帳」に交野から土を運んだ記載があります。

 ② 轆轤水挽き技法による成形です。

    前々回、須恵器の終焉に関連し、木製の挽き物が登場した事を述べましたが、挽き物とは、

    材料の木材を人力で高速で回転し、鉄製のカンナで形作る方法です。即ち高速で回転させる

    丈夫な軸受けが出来ていた事になります。更に滑らかに回転させる為の、動物の脂(あぶら)

    が使われていたと思われます。同様に焼き物の制作にも、高速で回転する轆轤が存在し、

    遠心力を利用する、現代と同じ轆轤作業が行われる様に成ります。

  ) 轆轤の回転方向は右(時計回り)回転です。器面調整も右回りです。

  ) 轆轤は手回しで行っています。

    我が国では古代、中世を通じて手回し轆轤が使用され、近世に成ってから、朝鮮から蹴り

    轆轤の技法が伝わり、主に九州及び日本海沿岸で使われる様に成ります。

    尚、蹴轆轤(けろくろ)は左回転(反時計回転)が一般的です。

  ) 作行は薄造りで、極めて丁寧に作られています。習熟した職人による作品と思われます。

    轆轤目もほとんど無く、仕上げには布を使っていた様で布目の跡があります。

 ③ 釉に付いて。釉の技法も唐三彩と伴に、中国から伝わった物と思われます。

   釉は低火度の鉛釉(なまりゆ)で、800~850℃程度で焼成された物です。

   尚、鉛釉の溶融温度は約750℃と言われ、温度が高い程、鮮明で綺麗に発色します。

   現在、鉛を使った釉は有毒な為、一部楽焼の場合を除き、禁止されています。

   奈良三彩の釉に付いては研究が進み、以下の様にして作られたと言われています。

  ) 基礎釉の製作。

    a) 黒鉛(金属鉛)を加熱融解し、酸化させて酸化鉛(鉛丹、えんたん)を作ります。

       塩は鉛を磨り潰し細かい粉状にするのに添加します。又、猪の脂は鉛の酸化を促進する

       添加物として使用されていました。

    b) 酸化鉛に20~30%の珪石(白石)を加えて、珪酸鉛を作り、基礎釉にします。

       珪酸鉛は現在の鉛ガラスに近い組成と成ります。 この基礎釉は透明です。

   ) 色釉を作る。

     a) 奈良三彩の白は、素地の白さを利用した物と、白化粧土を施した物があります。

        いずれも、透明釉を塗る事によって、白く発色させます。

        又、基礎釉に珪石(SiO2成分)を加えていくと、機械的強度が増し、光沢のある乳白色

        の釉になります。これを白釉として使う場合もあります。

     b) 緑釉は上記基礎釉に、緑青(酸化銅)を加えます。

     c) 黄色、褐色釉は、鉄分を含む赤土を加えます。

     d) 緑釉では、奈良時代の物は、濃緑色ですが、平安時代には、淡緑色に変化して行きます

       これは、奈良時代には酸化銅の含有量が多く、酸化鉛が少ない為です。

       平安時代に成ると、逆に酸化銅が減り、酸化鉛の含有量が増えた結果である事が、化学

       分析の結果判明します。

    ) 施釉方法。

以下次回に続きます。

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