② 柳原 睦夫氏の陶芸
) 数度の渡米によって、アメリカ現代陶芸に触れ刺激を受け、鮮やかな色彩と装飾を取り込み、
官能的なホルムを基に、従来の美意識に反逆した、新しい現代の美意識の確立を目指します。
柳原氏の作品は、師の富本憲吉氏が色絵磁器の分野出確立した、日本の伝統的な
焼き物の美意識である「端正で高雅」とは、対極にあると思われます。
しかし、「富本氏の仕事と深い繋がりが有る」と見なす意見も有ります。
) その意見によると、富本氏の「模様から模様を作らず」の言葉の通り、従来の模様を離れ
金銀彩や鮮明な多色文を使用する事は、富本氏の境地を発展させる事に成るそうです。
又、足利義満の金閣寺(西山文化)や、秀吉の桃山文化、尾形光琳などの元禄文化等に
金銀は、歴史的にも刺激的に使われています。それ故柳原氏が作品に金銀を多用する事は、
必ずしも、伝統文化に反するものではないとの意見です。
) 梨地様金銀彩と光沢のある金銀彩を併用する事で、変化のある文様を作り出します。
金や銀で光沢を押さえた梨地を作るには、以下の方法をとります。
本焼きした作品に、金液などで上絵付けを施し、800℃程度の温度で焼成します。
この段階では、光沢のある金銀彩と成ります。これを特殊の方法(瑪瑙や細かい砂)で磨く
(表面を荒らす)と、光が乱反射して梨地面が現れます。
更に金液などを塗り再度焼成し、磨きを繰り返す事とにより深みのある、梨地面となります。
作品としては、「金銀彩彩文花瓶」(高 46 X 径32cm)(1983年)、
「金銀彩彩文花瓶」(高 34.5 X 径26.5cm)(1984年)などです。
器形は凸形で、下部は丸味と厚みのある円形又は方形で、その上に円筒状の物又は、
上部縁がえぐられた円筒形に成っています。
その表面に、波紋の様な線状文が不定形に描かれている作品です。
) 紺釉金銀彩: 彼の使用する釉は、主に灰釉の透明釉ですが、紺釉は彼の唯一の色釉です。
作品の内側に使う事が多いのですが、作品の装飾模様(水玉)と組み合わせてたり、金銀彩と
併用して使われています。作品として、「紺釉金銀彩花瓶」(高 55 X 径 31cm)(1971年)、
「紺釉金銀彩花籠」(高 31.2 X 径 22.3cm)(1971年)等があります。
尚、水玉文は、版画的手法(ペーパー、レジスト)を駆使し、大小様々な水玉文様を描き
出しています。
) 彩色文:色化粧掛けにより、紅、黄、青等に着色し灰釉を掛け、電気窯で酸化焼成しています。
化粧掛けは、刷毛による平塗りの他、エアブラシを使いグラデーションを付ける場合もあります。
作品として、「紅彩陶作品83/9」(高 67 X 径 40cm)、「黄彩陶作品83/3」(高 50 X 径 39)
(1983年)などです。器形は「こけし」を大きくした様な作品です。
) その他の作品
「黄オリベ・直立後屈瓶/黄オリベ・斜行後」(66.0×44.5×21.5、75.0×31.3×19.0)
(2点組)(1995) 国立国際美術館。
「破顔笑口壺」(高65.5 X 横34.5 X 奥行 36.5)国立近代美術館。(1990)
「黒オリベベロット瓶」(高 44 X 横 44 X 奥行 41)東京国立近代美術館(1997)
など、多くの作品が東京、京都近代美術館、国立国際美術館などに、買い上げ
展示されています。
以下次回に続きます。