わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

現代陶芸131(酒井田柿右衛門1)

2012-06-04 21:51:37 | 現代陶芸と工芸家達

明治に入り、苦境に落ちっていた柿右衛門窯を、父十二代柿右衛門を盛り立てながら、江戸時代後期に

絶えていた、「濁手(にごして)」の技法を復興させ人で、伝統的な柿右衛門様式の中に、写生から得た

新しい図案を創造し、昭和の柿右衛門様式とも呼ばれる技法を開発して、「柿右衛門中興の祖」とも

言われているのが、十三代柿右衛門です。

又、1971年には、国の重要無形文化財として総合指定されています。

1) 十三代酒井田 柿右衛門(さかいだ かきえもん)本名は渋雄: 1906年(明治39)~1982年(昭和57)

  ① 経歴

   ) 佐賀県西松浦郡曲川村(現、有田町)で、十二代柿右衛門の長男として生まれます。

     1924年 佐賀県立有田工業学校、製陶科を専攻し卒業します。

      同校では、彫刻、轆轤、釉薬や窯焚きの実習を受けています。

     1953年 初代柿右衛門300年祭を記念して、十二代と伴に濁手素地の復興を果たします。

     1955年 濁手による、「柿右衛門」の製陶技術が、無形文化財に指定されます。

      (当主は十二代柿右衛門)

     同年 第二回日本伝統工芸展に「色絵八角大鉢」を出品し、日本工芸大賞を受け、

      第四回同展で、「色絵草花文蓋物」が文化財保護委員会長賞を受賞します。

      これらの作品は、第十二代の名前で出品しますが、実際は、十二、十三代との合作とみなされて

      いる様です。

    1963年 十二代が他界し、十三代柿右衛門を襲名します。

    1964年 日本工芸会正会員になります。

     同年、大阪の大丸で「十三代柿右衛門襲名展」を開催します。

    1966年 佐賀県の重要無形文化財に指定されます。

    1969年 「濁手瓢形壺」一対を、宮内庁新宮殿御用品として、献納します。

     翌年「濁手菊鳥文壺」が外務省のお買い上げと成ります。

    1971年 柿右衛門製陶技術保存会を結成し、会長になります。

     同年濁手の技法が国の重要無形文化財に統合指定されます。

     又、人間国宝展、日本陶芸展、海外展など内外の陶芸展に出品しています。

     更に、「濁手露草文鉢」など三点が宮内庁お買い上げとなり、「濁手花鳥文陶額」が外務省

     お買い上げと成ります。

    1972年 外務省主催の「現代色絵陶磁展」がヨーロッパ5ヶ国で開催されます。

    1973年 重要無形文化財国家指定記念柿右衛門・今右衛門展を開催します。

    1974年 迎賓館展示品として「濁手梅花文壺」を納入します。

    1975年 東京日本橋三越で、十三代柿右衛門展を開催します。これ以降、東京、佐賀、北九州市、

     大阪高島屋、名古屋松坂屋、福岡岩田屋、盛岡川徳など各地で、個展を開催しています。

  ② 柿右衛門様式

   ) 代々の酒井田柿右衛門が確立した肥前磁器の一様式で、余白を生かした絵画的な構図と、

     乳白色の胎土(濁手=にごして)に、赤絵を中心に、藍、緑、黄、紫を用いて、上絵付けを施した

     作品の様式です。

   ) 十三代柿右衛門は、従来の様式に加え金彩を取り入れています。

      又、伝統的な構図や器形の他に、自ら写生した野草や花、果実類を好んで取り上げ、昭和の

      柿右衛門様式を確立しました。

  ③ 濁手の再現: 濁手とは佐賀地方では「米のとぎ汁」を「にごし」と呼ぶそうで、これに似た色の為

     この名前が付いたといわれています。

   ) 美しい赤絵を表現するには、濁手と呼ばれる乳白色の磁土が必要不可欠です。

     しかしこの技法(土の調合)は、5~6代柿右衛門の頃絶えてしまいます。

     この再現を目指して1959~1960年頃から研究を始めます。

   ) 家伝来の「土合帳(つちあわせちょう)」を頼りに、思考錯誤を繰り返します。

      その結果再現に成功します。即ち三種の土(石)を粉砕し、水簸(すいひ)し調合します。

      それは泉山(いずみやま)の土を基本にし、白味を出す為の白川谷(しらかわたに)土三割、

      耐火度のある岩谷川内(いわやごうち)を一割ほど入れ、釉を薄く掛け焼成すると温か味のある

      磁肌になります。その結果は1953年の柿右衛門300年祭の記念展覧会で初公開されます。

 ④ 十三代柿右衛門の陶芸

以下次回に続きます。    

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