変化を愉しむ

　羊毛フェルトを始めて、かれこれ８年くらいになります。子供の頃から絵を描いたり工作をしたりするのは息をするのと同じくらい自然なことで、これまでずっと続けてきたことですが、ひとつの分野にこれほどのめりこんだのは初めてです。
　以前、雑誌の取材で羊毛フェルトの魅力は？と聞かれ、うまく答えられずに困ったことがあります。自分自身、何故ここまでのめりこんでいるのか、自分の言葉でうまく説明ができなかったのですが、最近になって何となくわかってきた気がします。それは、恐らくフワフワだった羊毛が目の前で凝縮して違った質感へと変化を遂げることの面白さではないかと思います。つまり、空に浮かぶ雲が雪のカタマリになるような変化を味わえるということです。そして、ニードルフェルトの場合は、自分がつつくという行為によって、意のままに形を変化させることができるということ。きっと、その変化の過程を心が愉しんでいるのではないかと思うようになりました。縫製や織物などは形状や組み合わせの変化ですが、羊毛フェルトは陶芸のように質そのものが変化することが心を惹きつけるのだと思います。
　７年前から市民農園を借りて野菜を育てていますが、それも変化だと思います。一つの小さなタネが芽を出し、葉や茎を出すといった変化をして結実する課程を感じることが、やはりやめられない愉しみになるのだと思います。野菜ではどうしても時間のかかる変化ですが、きっと羊毛フェルトの場合は石けん水や針といった容易な手段によって割と短時間に変化を味わえるという点で、ついつい没頭してしまうのかも知れないですね。




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