Kencraft GP-830の修理メンテナンスの依頼がありました。
Kencraft GP-830は1972年に発売されたプリアンプのキットモデルで価格は24,800円でした。他にはパワーアンプキット GM-820 34,800円と4chデコーダーアンプキット GF-802 24,800円があり通産省認定のグッドデザイン商品となっています。
当時のカタログ
前面は比較的きれいです。
裏面は錆によるものか白くなっていますので後で目立たないように磨いておきます。
ヒューズ(1A)は切れていませんでした
カバーを取ったところ。中々良い構造をしています。電源回路や切り替えスイッチ部分は高級プリアンプのようにちゃんとシールドがされています。内部のはんだ付けも私より上手です。
フロントパネルを取ったところ。
切り替えスイッチはスプラインが切ってあるのにこのつまみはねじ止めになっています。つまみを変えてあると思いきや純正のようです。
基盤は各部に分かれていてコネクタに差し込む方式になっています。
電源回路は変更してあるようで三端子レギュレーターLM317Tを使用してあります。このレギュレーターの放熱器とコンデンサーのバンドの金具が近くてショートしそうだったので取り付け位置をずらしました。出力電圧37Vですが正規の電圧なのかな?
このアンプは全て日立の2SC1345を使用しています。このトランジスタは日立のエピタキシャル・プレーナートランジスタでLTP法で作られた低雑音トランジスタでCobも小さく当時のアンプのほとんどに使われていた有名なトランジスタで今はありません。
トランジスタの足がみんな真っ黒ですが全てチェックすると特性がみんな揃っていてどうやら使用頻度は少なかったようなので汚れを取って使用します。(今販売している2SC1345は中身が全然違うようで使用するには注意が必要な気がします。)
切り替えスイッチは真っ黒でしたので清掃し、接点グリースを塗布しておきます。
こちらのスイッチも分解しましたが汚れていなかったのでそのまま使用します。
スライドボリュームは分解清掃します。
綿棒でこすると真っ黒です。きれいに清掃して接点復活液を塗布しておきます。
音量ボリュームは分解すると内部のプラスチックの一部が欠けていたので上下を反転して使用します。どうやらボリュームを一番絞ったときに力がかかるのでそれで壊れたのかもしれません。
基盤修理完了(一部オーディオ用使用)
ハンダの補正と接点の清掃
交換部品
組付け このアンプはプリアンプですがシールド線を使用していません。キット製品としてトラブルを防ぐためでしょうか?
AUX 100Hz
AUX 10KHz
PHONO 1KHz
完成 残留雑音 L,R=0.1mV 周波数特性 12-50KHz -1db
試聴中 2SC1345のカチッとした音質です。ボリュームは少し「ガリ」があります。この時代のアンプは感度が高くプリアンプの出力が大きくなりがちなのでメインアンプのボリュームで少し絞って使用するとプリアンプの雑音が目立ちません。