MEDINT(医療通訳研究会)便り

医療通訳の制度化を目指す医療通訳研究会(MEDINT)のコラム
~みんなで 医療通訳者を増やし、守り、育てよう!~

説得

2006-12-06 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
ある病院から「言葉のできない外国人がいるんですが、通訳をお願いできますか」と依頼されました。通常の診察は、日本語と英語で可能なのだけれど、どうしても通じないところがあって母語で通訳をして欲しいとの要望です。なんとなく不思議な感じがしたのですが、通訳をはじめてみると、違和感は的中しました。
異なる言語を母語とする恋人同士によくあるのですが、恋がうまくいっているときは、母語が違っても意思疎通が驚くほどできているのに、恋がギクシャクするようになると急に話が通じなくなる。それをお互いの言葉のせいにして、通訳を入れれば話が通じるようになると勘違いしてしまうケースです。
案の定、病院は患者に転院を促し、本人はそれに同意しないというケースでした。お互いに相手の言い分は充分理解できています。ですので、これは言語の問題ではなく、お互いの主張の問題です。こういうとき、通訳は本当に困ります。お互いが通訳を使えば、自分の主張が通る、解決すると強く信じているからです。しかし、通訳者は調停委員でも仲介者でもありません。通訳をしても話が最初からかみ合っていないので、お互いが強い主張を繰り返すのをただ訳すだけで、最後にはどちらも自分の意見が通らないので、下手な通訳のせいだと思い込んでしまう始末です。
医療者側にユーザートレーニングが必要だという理由のひとつに、これが言語の問題で通訳をいれれば意思疎通ができる問題なのか、それともその人の考え方や文化の問題なのかをしっかり見極めて通訳を使うべきかどうかを判断してほしいというのがあります。
日本における通訳資源は未だ多くありません。医療者側もできるだけ通訳なしでの意思疎通の努力をしていただいて、本当に必要なところでトレーニングされた医療通訳者を使ってもらうというのが理想なのです。そのために医療者側のユーザートレーニングは医療通訳においては欠かせないことなのです。

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