MEDINT(医療通訳研究会)便り+

医療通訳だけでなく、広く在住外国人のコミュニケーション支援について考えていきます。

違う場所からみえてくるもの

2011-05-02 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
医療通訳者は診察室では異質な存在です。

患者ではありません。
もちろん、医師でもないし看護師でもない。
家族や友人でもありません。
通訳をしているけれど、診察や治療にはタッチしていません。
だから、いろんなものが見えてきます。

たとえば医師と患者が話しているとき、
両方の顔が見えます。

患者がとても心配している様子とか。
医師が時間がなくて焦っている様子とか。
歓迎してもらっているなという感じとか。

10年以上前、通訳として患者につきそっていた頃、
医師は私の敵でした。
外国人だからといってちゃんと診察しないんじゃないかとか、
診療拒否されるんじゃないかとか、
外国人だからなめられたらいけないとか、
日本人と同じ適正料金なのかどうかとか。

だから医師にも胡散臭い通訳とか、
素人が勝手なことを言って・・・と思われていたと思います。
今思えば・・・お恥ずかしい。

でもMEDINTで医療通訳の活動をするようになって、
医師や看護師の人たちの
なんとかちゃんと診察したいけど、
言葉が通じないとか文化が違うことの苦悩を聞くことができて、
病院側だって困っているんだということを知りました。

そして、外国人医療は
医療者も患者も医療通訳者もなんとか患者を治療したいという思いは
同じ同士なのだということに気づきました。
どこにも患者の敵なんていないんだと。

それから勉強をしたり、医療者の皆さんの意見を聞きながら、
医療通訳者として
どうやったらうまく医療現場と患者のコミュニケーションを調整できるかを考えています。

最近は調整することばかり考えてしまい、
患者の主張と一緒に怒ることを忘れがちだと患者から怒られます。
怒ることはエネルギーがいる。
私は人生の難しいことは全部避けて結構適当に生きてきた人間ですが、
医療通訳の活動はどうしても逃げることはできないと感じています。

当事者ではなく、でも外国人医療の一当事者である医療通訳者。
難しい立場ですが、
ここから外国人医療の現場を見つめていきたいと思います。
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