MEDINT(医療通訳研究会)便り

医療通訳の制度化を目指す医療通訳研究会(MEDINT)のコラム
~みんなで 医療通訳者を増やし、守り、育てよう!~

周産期の通訳は特別か

2016-02-04 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
精神や感染症といった公権力にかかる通訳は難しいというお話をしました。

だから一般の医療通訳と少し違う通訳技術や知識を使うということで
「専門科目」として考えるのはどうかなと思っています。

以前、精神科の通訳をされている通訳者の方に
「精神科の通訳は一般診療の通訳とは違います!」と言われ、
診察の後に、通訳者と医師のセッションがあるとか、
通訳の仕方についても苦労の多いことを聞きました。

30日のFacilの尼崎で開催されたシンポジウムで
医療通訳の認証について個人的な意見を話す機会がありました。
そこで、認証には一般のものと中級と上級とかあれば
勉強するモチベーションがあがるという話と共に
一般医療通訳とは少し違うものについては、
認証○○とか認定○○のように看護師みたいに特別なトレーニングをして
プラス特別な診療科については別認証をするといいのではないかという意見を述べました。

実は、前の晩まで
その例題として3つくらいあげてみようと思ったので
これを「精神」「感染症」「緩和ケア」と考えていたのですが
直前になって「緩和ケア」を「助産」に変えました。

案の定、会場からそこを質問されました。
助産を別にしているのは、
私自身、周産期の場面での通訳依頼が一番多いことと
「看護師」と「助産師」の役割が違うこと、
患者との距離感が病気とは少し違うことなどを述べ、
Facilの方からも使う制度の違いなどについて指摘がありました。

しかし、そのあと質問者から
「助産の場面は、日常生活の延長なので、なぜ特別なのかと思いました」といわれ
「あ、それが答えだよ」と思いました。

日常に近ければ近いほど、
医療通訳に文化が介入してきます。
言葉についても、「インフルエンザ」や「MRI」なんかは
知っているか知らないかは別として、
外国人でも自分の国でも基本的には同じものです。

治療の仕方や方針については少し違うかもしれませんが、
日本のインフルエンザだけが特別なわけではなく、
ましてやインフルエンザが国によって違うとは思えません。

ただし、インフルエンザに関する考え方が国によって違うという事例は
「実践医療通訳」の中の小笠原理恵先生の章での指摘があります。
目からうろこですので是非ご一読ください!

つまり、日常に近いほど文化が介入してきます。
ましてや出産は本当に国によって考え方が違います。
母体の保護について、体重制限や食べるものについても違うし、
産み方も違うし、子供の予防接種に関する考え方も違う。
つまり、使う言葉は日常の言葉なので、外来語も入ってきていないし、
その人の育ってきた文化がそのまま反映されます。

先日、ある周産期を扱う病院でスタッフ対象の研修会をしたのですが、
外国人当事者の方が、「出産は半分生きてて、半分死んでいるみたいな状態」と
表現していて、出産は病気ではないけれど
本人にとっては命がけなのだということを再認識しました。

そんなこんなで、子供が生まれる場面というのは
医療通訳の立ち位置が少し違うよなあと感じます。

「看護師」と「助産師」が違うようなものかもしれません。

ということで「周産期」場面は医療通訳者にとっても
特別な通訳であることは間違いありません。

もし、私が通訳場面を選べるのだったら
是非、「周産期」の通訳を選びたいですね。
だって「おめでとう!」と言える医療通訳だから。


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