MEDINT(医療通訳研究会)便り

医療通訳の制度化を目指す医療通訳研究会(MEDINT)のコラム
~みんなで 医療通訳者を増やし、守り、育てよう!~

素人の見立て

2004-05-09 11:50:57 | 通訳者のつぶやき
外国人「腸にポリープができているんだけど、大丈夫かなあ。」
通訳「腸のポリープなんて一つや二つ皆持っているよ。ポリープは良性だから大丈夫。」
 
この会話どう思いますか?
あなたは、こうした会話をしたことはありませんか?井戸端会議で。友人との会話の中で。親の愚痴を聞きながら。聞きかじりの知識でアドバイスしたことはないですか?
 
外国人「このお医者さんは、どうも頼りないように思うんだけど、あなたどう思う?」
通訳「う~ん。若いし、経験も少なそうだね。絶対大きな病院の方がいいよ。」
 
この外国人は、なんとなく医師に不信感・違和感を感じています。でもそれは文化の違いで、自分だけが感じる違和感で、日本ではあたりまえのことかもしれないとも思います。だから、日本を良く知る人(通訳)の意見を求めてきています。この通訳は率直に感想を述べて転院を進めています。正しいか正しくないかの議論は別にして、この会話もどこかで聞いたことがありそうですね。
 
 そう。これらの会話は私たちの生活の中でごく一般的に交わされている会話です。
でも、医療通訳は、こうした日常私たちが安易に友人と話すような会話を、みだりに患者さんとしてはいけないと私は思います。それは、通訳のアドバイスが、外国人患者にとってとても大きな影響をもたらすからです。
 私たちも病院選びや病状について、様々なチャンネルを使って情報収集します。友人知人の口コミや本や雑誌、インターネットのHPなど本気になれば、私たちの周りにはたくさんの情報があふれています。その中から取捨選択して、自分の判断をしていくわけですが、外国人患者さんの場合、言葉の問題も含めて判断材料となる情報がとても少ない場合が多いのです。ですから、自分より日本社会に精通していると思われる信頼できる医療通訳の意見を重視しがちになります。
 医療通訳者は、このことを強く自覚しておかなければならないと思います。軽く、素人判断でアドバイスをすることで、診察の邪魔をしてしまったり、手遅れになってしまったり、病院の転院を繰り返すというようなことが起きてしまう事だってあります。
 私たち医療通訳者は医療従事者でもなく、家族でもない。医療に関しては素人であり、判断すべき立場にはないことを肝に銘じておかなければ、軽はずみな言葉を発してしまいます。情報提供は大切なことです。しかし、それはあくまでも本人の判断のための材料であって、断定的な言い方~素人の見立て~は慎むべきだといえるでしょう。
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