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エイズ予防のための注射針交換にアメリカ政府が反対している。(「人権監視団」のリポートによる)

2005年03月11日 | 国際政治
「人権監視団」(Human Rights Watch)のホームページによる。
 アメリカ政府は、エイズの拡大を予防するための注射針交換を国連が支持しているのをやめるように圧力を加えている。
 エイズ拡大を防ごうとしている民間団体は、来週、ウイーンで開かれる国際的な政策集会で国連が断固たる態度を取るように要求している。
 「注射針交換について国連を黙らせることは、致命的な政策である」と「人権監視団」のエイズプログラム担当者のジョナサン・コーエンは言っている。国連の麻薬犯罪委員会の代表団に宛てた書簡において、彼は国連にアメリカ合衆国の圧力に屈しないように要求した。「アメリカは、うまくいくことが保証されているエイズ予防戦略を励ますべきであって、攻撃するべきではない。」
 アメリカは、注射針交換のために連邦政府の基金を使用することを禁じている世界で唯一の国であり、最近、国連に対してこのエイズ予防戦略の推進をやめるように圧力を加えている。米国国務省の次官との会合の後で、国連の麻薬犯罪局局長は、被害を少なくするために、麻薬使用者の健康を守るための針交換や他の処置を示唆する電子記録や印刷物をもっと注意深く調べることを約束した。麻薬犯罪局(UNODC)の年長のスタッフは、「被害減少や注射針交換についての言及は、UNODCの記録、公刊物、言明においては避けられるようにすべきだ」と言いう趣旨のe-mailを局員に送った。
 「麻薬犯罪局」は、目下、エイズに対する国連プログラムの中で議長を務めており、アメリカ政府が麻薬犯罪局に圧力を加えていることは明らかである。
 「この世界中で最も流行している伝染病は、麻薬注射によって広まっており、殺菌された針による注射こそエイズを押さえ込む最も重要でもっとも有効であることが証明された戦略である」と「開かれた社会研究所」のカシア・マリノウスカ=センプルッフは言っている。「アメリカ政府が最も良く研究され、最も効果的なエイズ予防の一つについて国連に沈黙を守れと強制しようとしているのは、不届き千万である。」
 麻薬注射の回し打ちが、中国、イラン、アフガニスタン、ネパール、バルト海沿岸諸国、中央アジア諸国、南アジア、南米におけるエイズの大部分の原因である。北アメリカよりも多いエイズ患者がいるロシアでは、伝染の80%は、麻薬使用の際の注射によるとされている。
 注射針の交換は、アメリカにおける指導的な科学者や公衆衛生関係者や医療機関やアメリカ医学会やアメリカ公衆衛生学会や国立科学アカデミーによって、エイズ予防の効果的手段であると認められている。世界保健機構(WHO)も針交換を推奨した。注射針交換の反対しているのは、うまくいくかどうか疑わしい性的禁欲のために性的に明白なエイズ予防キャンペーンに反対してい議会の保守派の議員である。
「性交であれ麻薬であれ、アメリカは、エイズに見舞われている国々に禁欲計画を輸出しようとしているのだ」とカナダのエイズ法的ネットワークの代表ジョーン・セートは言っている。「多くの政府が、この脅迫に抵抗しなければ、何百万人もの人たちがツケを払うことになる。」
訳者の感想:アメリカの保守派のピューリタン的道徳主義がこの事件の背景になっている。保守派のボールトンを国連大使に出したアメリカは、国連の正しい政策さえ止めさせる可能性が大きいと思う。日本政府はこの場合、国連の政策を支持するべきだと思うのだが、アメリカべったりの日本政府は国連の議場でそう主張するだろうか。
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